O-157集団感染、21年前の”大惨事”を覚えていますか?

感染原因と感染ルートの徹底究明を急げ

埼玉県熊谷市でO-157集団食中毒が発生

今週月曜日(8月21日)埼玉県は、熊谷市において腸管出血性大腸菌(O-157)による集団感染が発生したことを発表しました。

今回の食中毒は、今月7~8日にかけて市内のスーパーマーケット内に入る惣菜店で加工販売されたポテトサラダを購入し、持ち帰って食べた人のうち4歳から60歳までの8人が下痢や腹痛、血便などの症状を訴え、このうち6人の便からO-157が検出されたというものです。

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当初、5歳の女の子が一時意識不明の重体に陥るなどしたようですが、その後意識は回復したと報道されています。その女の子を含め、食中毒に遭われた方々の早期回復を祈るばかりですが、今回の集団食中毒は、熊谷市のスーパーだけではなく、その後他の店舗でも感染者が出ています。どうやら、被害が日に日に広まりつつあるようで、これからも注意が必要でしょう。

O-157は潜伏期間が長いため、原因究明が難しくなる

O-157による食中毒は、単なる食当たりとは次元が異なる深刻な事態です。後述するように、多くの死亡例も確認されています。そして、一番厄介なのは、O-157は潜伏期間が長いため(概ね4~8日と見られます)、その感染源(具体的な食材など)を特定し難いことです。

今回の熊谷市の食中毒でも、現時点で疑いが濃厚なポテトサラダを食べたとされる日から、埼玉県が発表するまで約2週間を費やしました。これは、O-157感染の典型的な症状が発するまで、約1週間の潜伏期間があったためと推測されます。

1996年に大阪・堺市で起きたO-157集団食中毒とは?

今回のO-157による集団食中毒のニュースを聞いて、今から21年前に大阪・堺市で起きた集団食中毒を思い出した人も少なくなかったのではないでしょうか。

それまで一般的にはあまり知られていなかったO-157が、一躍認知されることになった重大“事件”と言っていいでしょう。なお、1990年にも埼玉県浦和市(現在のさいたま市)にある幼稚園で死者2人を出すO-157集団食中毒が起きています。

感染者約9,500人、死者3人、さらに19年後に後遺症で死亡者も

その堺市の集団食中毒は、学校給食で起きました。給食を食べた市内47校の児童と教職員の7,966人が感染した上、その家族など1,557人が2次感染となりました。そして、不幸にも、当時7~12歳の小学生女児3人が死亡しています。

さらに、その食中毒から19年後の2015年10月には、当時(1996年)小学校1年生で感染した女性が後遺症(腎血管性高血圧を原因とした脳出血)で亡くなりました。過去、国内で起きた集団食中毒の中でも、その被害規模などから特筆すべき事例の1つと言えます。

今も究明されていない感染原因

この堺市の集団食中毒で忘れてはいけないことが1つあります。それは、いまだにというか、結局というか、問題となったO-157の感染原因が特定されていないことです。これは、前述したように潜伏期間が長かったため、直接的な原因となった食材が判明できなかったことが最大の理由です。

また、当時は“O-157って何それ?”という認識不足などから、保健所などの対応も現在ほど十分でなかったことも一因と考えられます。具体的には、給食サンプルを3日分しか残さなかったため、肝心の日のサンプルは廃棄されていたのです。

結局は“無実”だったカイワレ大根

しかし、当時は約9,500人もの大量集団感染だったため、何か“犯人”を挙げなければ済まされないほど世間の関心が高まった結果、あくまでも“可能性が極めて高い”という前提で厚生省(現在の厚生労働省)がカイワレ大根の犯人濃厚説を公にしました。

そして、それがマスコミ報道で一気に広がり、日本全国のスーパーからカイワレ大根が姿を消し、カイワレ大根業者が甚大な損害を被りました。この“カイワレ大根パニック”を覚えている方もいるでしょう。

なお、その後の裁判(最高裁)では、厚生省が根拠のない誤った発表をしたという業者の主張がほぼ認められ、国に損害賠償支払いが命じられました。事実上、カイワレ大根は無実でしたが、真犯人は分からずじまいで今日に至っています。もはや、今から原因を究明するのは不可能と言えましょう。

今回の食中毒も原因究明が難しそうだ

なお、追記的になりますが、冒頭で記したポテトサラダの製造工場に立ち入り検査に入った保健所は23日、当該工場ではO-157が検出されなかったと発表しました。この発表は、消費者の不安がなくなるどころか、ますます高まっていることを意味します。国(厚労省)は一刻も早く、今回の感染原因や感染ルートを徹底追及すべきでしょう。

1つ気になることがあります。堺市で起きた悲惨なO-157集団食中毒が起きたのは7月ですが、実はその年の5月から岡山県などで既にO-157の集団食中毒が起きていました。しかし、原因特定ができないまま、その2カ月後に堺市の”大惨事”が起きています。実際には、それらに関連性があったかどうか今となっては検証することは不可能ですが、何らかの前兆だった可能性は残ります。

日頃から予防すれば心配することはないが…

今回の熊谷市で発生したO-157集団食中毒がこれ以上広がらないことを願うばかりですが、私たちも日頃から予防することが必要です。O-157は非常に恐ろしい感染菌ですが、75℃以上で1分以上の加熱により殺菌できるなど、感染予防は可能です。

詳しくは、厚生労働省のウェブサイトをご参照願います。

LIMO編集部

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LIMO編集部は、国内外大手証券会社で証券アナリストや運用会社のファンドマネージャーとして長年の調査や運用経験を持つメンバーを中心に構成されています。金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデア、ビジネスパーソンの役に立つ情報ををわかりやすくお届けします。