老後の生活を豊かにするためには貯蓄が必要です。

とはいえ、貯蓄がどれくらいあれば安心して暮らすことができるのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回は70歳代の貯蓄の平均と年金事情を紹介し、必要な老後資金について考えてみます。

年金で生活ができるのか、検証していきましょう。

【注目記事】70歳代「ひとり世帯」貯蓄と月の生活費はいくら?厚生年金・国民年金の受給額も確認

1. 70歳代の平均貯蓄額はいくら?

厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、70歳代の平均貯蓄額は1233万5000円、それに対し負債の金額は107万5000円となっています。

30歳代、40歳代は住宅ローンなどで借入金額が超過しているのに対し、50歳代以降は貯蓄額が超過しているのです。

【世帯主の年齢(10歳階級)別に見た1世帯当たり平均貯蓄額―平均借入金額】

出所:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」

 

2. 年金だけで生活できる?

貯蓄や勤労等による収入がない場合、基本的に公的年金だけで生活することになりますが、年金だけで老後の支出を賄うことはできるのでしょうか。

ここでは年金と支出の額について解説します。

2.1 夫婦の場合

夫婦の場合、年金も2人分ですが、支出も2人分になります。

家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)によると、年金を中心とする高齢夫婦の平均収入は月額約23万6000円です。

それに対し支出額は月額約25万5000円と収入額を約1万9000円上回っており、仮に平均的な収支の場合、貯蓄を取り崩して生活をしていることがわかります。

出所:総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」

2.2 単身世帯の場合

単身世帯の場合では、毎月の収入が約13万5000円なのに対し、支出額は約14万4000円。

平均的な収支の場合、約9000円不足しているため、貯蓄を取り崩しながら生活している人が多いことがわかります。

出所:総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」

 

3. 老後の出費はいくらになるか

続いて、老後の出費にはどのようなものがあるのか見ていきます。

実際の支出は家族の人数や居住地等によって大きく異なるため、個々にシミュレーションすることが大切です。

ここでは特に忘れてはいけない出費について、具体的に確認しておきましょう。

3.1 有料老人ホームへの入居

有料老人ホームは、高級な施設であれば数千万円の入居費用がかかるとされています。

比較的安いタイプもありますが、入居待ちの方も多く、なかなか入居できないという方も。

どのような施設に入居するかにもよりますが、有料老人ホームへの入居を検討している場合は、意識して貯蓄しておく必要があるでしょう。

3.2 介護費用

介護費用も老後の負担として大きい項目のひとつです。

2021年度の生命保険に関する全国実態調査によると、介護費用は在宅の場合で月額平均4万8000円、施設の場合で月額平均12万2000円となっており、決して安い金額ではありません。

長期間介護が必要になった場合、貯金を大きく取り崩さないと生活できない可能性があります。

介護が必要な状態にいつなるかはわかりませんので、安心して老後を過ごすためには蓄えが必要です。

3.3 医療費

高齢になると医療にかかる機会が増えるため、医療費も若い時に比べると増える傾向にあります。

前述の総務省の家計調査年報によると、高齢単身世帯の消費支出の6.4%は、医療費となっています。

高額な治療が必要な場合がありますので、貯金を残しておくか、民間の医療保険などで備える必要があります。

4. 老後に向けたおすすめの貯蓄方法

老後資金を考えたとき、効率よく貯蓄するためにはどのような方法があるのでしょうか。

具体的な方法を紹介します。

4.1 家計簿をつけて出費を見直す

収入を増やすことも重要ですが、難しい場合は出費を見直すことが先決でしょう。

収入を増やすのは時間がかかりますが、出費を減らすことはすぐに取り掛かることが可能です。

不要なサブスクやスマホ代などの固定費を削ることができれば、長期的な目線で節約することができます。

4.2 自動的に貯まる仕組みをつくる

老後資金を貯めるためには、長期間かけて少しずつお金を貯めていく必要があります。

毎月余ったお金を貯めるようにしても、つい使ってしまうことがありますので、給与天引きや自動引き落としでお金が貯まるようにしておくとよいでしょう。

また、給料が入る生活口座とは別口座で保管することで、ついつい使いすぎてしまうことを避けることができるでしょう。

5. 老後に向けてできることはある

老後の収支を考えるときは、収入と支出のバランスから赤字分を算出します。

今回は平均額をご紹介しましたが、平均値は一部の大きな値に引っ張られる傾向にあるため、すべての人にはあてはまりません。

あくまでも、老後資金の考え方の一環として、参考にしてみてください。

ご紹介した貯蓄方法以外にも、iDeCoや個人年金保険などの金融商品を利用する方法もあります。

自分に合う方法について、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

太田 彩子