4月も多くのモノの値段が上がりました。

一部の大手の企業では、給与が上がっているところもあります。

物価には追いついていませんが、年金支給額も4月分(6月支給分)から上がります。

一方で、中小の企業や個人事業主までは、なかなか収入が増えないのが現状です。

全体として上がらないと世の中は回りませんし、逆に廃業を決断される方が出てくると、また悪い方向になってしまいます。

全体として良い方向になって欲しいですね。

物価高でモノの値段が上がっていますが、それに備えるための老後の準備も必要です。

今の生活も大変ですが、やはり将来の不安もあるので、今後の準備をしないといけません。

この記事では、「ひとりの老後」をテーマに厚生年金や生活費を考察していきます。

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1. 単身世帯の2022年の平均的な収入と支出

2023年2月に発表された総務省の「家計調査家計収支編(2022年10~12月)1世帯当たり1ヶ月間の収入と支出」(単身世帯)より、年金を受給している無職世帯での収支を見ていきます。

単身世帯なので、実際には様々な状況の方がいらっしゃるでしょう。

ずっと単身であった方、ご家族が亡くなったり、別居し単身になった方などさまざまですが、数字は平均的なものであり、ヒントや参考になる部分もあるかと思います。

出所:総務省「家計調査 家計収支編第1表(2022年10~12月)」をもとに筆者作成

平均的な公的年金の収入は、厚生年金や基礎年金を含めての金額です(詳細は記載されていませんが、ご家族が亡くなっている方の遺族年金の場合もあります)。

実収入と公的年金給付の差があるのは、他の収入がある場合や預貯金の取り崩しなどが考えられます。

今回のテーマで考えると、公的年金14万1820円と実支出16万1831円で、実質2万11円のマイナス。

平均では月額2万円ほど取り崩しをしていると考えると良いのではないでしょうか。

ただし、持家か賃貸かによっても支出は大きく違いますし、持ち家であったとしても住宅ローンがある場合で変わります。

2. 2023年度の年金はプラス改定

2023年(令和5年度)度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例

出所:日本年金機構や厚生労働省のリリースをもとに筆者作成

2023年度の年金は、上記のとおりプラス改定になる見込みです。

※厚生年金の金額については、平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

ただし、金額を見る限りでは決して多いとは言えません。

今回はひとり世帯として考えますので、厚生年金の22万4482円から1人分の老齢基礎年金額を引いたものとして、15万8232円。

夫婦世帯で考えると加給年金も含まれるので、ひとり世帯の年金収入は月額14〜15万円と考えて良いでしょう。

3. 老後の対策

すでに老後を迎えている方が対策をするのは難しいのですが、対策ができる方は働く方法が一番効果があります。

その上で、支出を減らすことも重要ですが、物価が上がる中では支出を減らすこと自体が難しいと考えられます。

預貯金などの資産をたくさん持っていれば、運用する方法で資金をなるべく長続きさせるのも一つでしょう。

ただし資産が少ない場合は、無理な運用を避けたほうがいいですね。

ここでは、現役世代の方が準備できる対策をまとめてみましょう。

3.1 働くことで収入を増やす

現役世代でまだまだ働くことができる方は、収入を増やすのが1番の老後対策です。

社会保険(厚生年金)に加入していれば、収入を増やしながら、同時に年金を増やすことが出来ます。

社会保険(厚生年金)に加入していない場合でも、預貯金やこの後に解説するiDeCoやNISAを使って、長期的に運用することで、将来の資金を増やせるかもしれません。

3.2 無理のない程度に支出を減らす

支出を減らすことで、余裕資金を老後のために準備することができます。

ただし、過度に支出を減らすとストレスにもなるので、固定費を削減したり、使わない契約をやめるだけでも効果はあると思います。

3.3 運用(1)年金をもらうまでに10年以上運用期間があるなら「iDeCo」

iDeCoは以前に比べて、多くの方が利用できるようになりました。

iDeCoの良いところは積立をしながら、同時に節税をすることができる点です。

長期・分散・積立を利用しながら運用することができ、さらに所得税や住民税を節税することができるため、メリットは大きいと思われます。

一般的には、60歳または65歳までは引き出すことができないため、運用がしやすくなっています。

引き出しができないのはデメリットのように聞こえますが、保険のように途中解約すると損が出るからと解約しないように、iDeCoも引き出しができないため、効率よく運用ができると考えた方が良いでしょう。

その上、iDeCoの運用は自分で変更できるため、大きく利益が出ている時に引き出しをしなくても、iDeCoの中で運用方法を変えることが出来ます。

ただし、そもそも所得税や住民税が課税されていない場合は、iDeCoを利用するよりも次のNISAを利用した方が良いでしょう。

3.4 運用(2)NISA(一般NISA・つみたてNISA)

運用するという点では、NISAもiDeCoに近いものがあります。

しかし、iDeCoの持っている所得控除がないため、所得税や住民税を減らすことはできません。

運用した結果、利益が出た場合や分配金が発生した場合に税金がかからないというメリットがあります。

NISAは途中引き出しができるため、他の老後以外の用途に使わないよう気をつける必要があるでしょう。

また、NISAは2024年から制度が変わります。

利用限度額の枠が拡がったり、運用できる期間が無期限となったりします。

3.5 運用(3)個人年金保険

海外の金利上昇や為替の影響もあり、外貨建ての個人年金もまた見直しされました。

中途解約や為替により、必ずしも儲かるわけではないのですが、長期で外貨で運用するという面ではメリットもあるかと思います。

4. 老後に向けて収支を把握

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老後の年金を受給するまでに時間のある方は、いろいろな対策をすることが出来ます。

どのくらい公的年金がもらえるのかわからないと言われる方も多いのですが、50歳代の方は、ねんきん定期便に「現在の収入が60歳まで続いた場合」の年金額が記載されています。

それとともに、どのくらいの支出があるかもご自分で確認しましょう。

ご自分の支出がどのくらいかわからないという方も多いのですが、現在の資産(貯蓄)・収入・支出がわかると将来の計画も立てやすくなります。

参考資料

香月 和政