日本の温水洗浄便座の世帯普及率は80%超

夏休みなどの海外旅行から日本に戻り、久しぶりに温水洗浄便座を使ったときに、ほっとしたという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

正確なデータはないものの、温水洗浄便座の海外での普及率は先進国でも1ケタ台にすぎないとされ、海外旅行へ行く日本人にとっては、依然として出会うことが少ない非常にレアなものとなっています。

一方、内閣府消費動向調査によると、2016年の日本での温水洗浄便座の一般世帯での普及率は81.2%に上ります。また、100世帯当たりの保有数量は115.3台に達しているなど、もはや限られた人のための贅沢品ではありません。

では、日本でこれだけ普及しながら、なぜ、海外ではそうではないのでしょうか。その疑問を解くために、まずは、「ウォシュレット」のTOTO(5332)と、「シャワートイレ」のLIXILグループ(5938)の2018年3月期第1四半期(4-6月期)決算を振り返りながら、温水洗浄便座市場の直近の動きを探ってみたいと思います。

TOTOは海外のウォシュレットが好調

TOTOの第1四半期の実績は、売上高が前年同期比+2%増、営業利益は同▲6%減と増収減益に留まりましたが、海外住設事業に限れば、売上高は同+6%増、営業利益は同+11%増と増収増益を確保しています。

ちなみに、海外住設事業は全社売上高の約23%を占め、地域別では海外の約半分を占める中国が前年同期比+11%増と特に好調です。

なお、ウォシュレットの販売台数は、中国が同+15%増、アジア・オセアニアが同+37%増、米州が+8%増と好調でした。欧州については、伸び率は言及されていませんでしたが、「高級ホテルを中心にネオレスト等の採用は順調」というコメントがありました。

注:ネオレスト(NEOREST)は、TOTO が世界中で販売する「ウォシュレット一体形便器」の最高級ブランドです。

LIXILグループの水回り製品は全地域で増収に

LIXILの第1四半期実績は、売上収益が対前年同期比+1%増、営業利益が同+28%増と増収増益を確保しています。

その主因は、シャワートイレなどが含まれる水回り製品事業セグメント(LWT)の堅調さです。LWTの売上高は、国内が同+6%増、海外が同+3%増(現地通貨ベースでは+5%増)となり、事業利益は国内が+20億円増、海外が横ばいと、特に国内がCM効果などの寄与により好調でした。

なお、今回の決算ではシャワートイレの海外での動向については多くは言及されていませんでした。しかし、LWTは全地域で増収を確保していたため、買収したアメリカンスタンダードやグローエとのシナジー効果により、前年度に続き今年度も好調が続いていると推察することができます。

今後の注目点

このように、足元の決算を見ると、トイレ大手は2社ともに海外で健闘していることが伺えます。

ちなみに、これまで海外で温水洗浄便座の普及が進まなかった要因としては以下の4点がしばしば指摘されています。

  • 水質の違いによる問題(欧州などでは、石灰分を含んだ硬水を使用するため、石灰分が内部で凝固しポンプなどが故障しやすい)
  • 電源確保の問題(トイレの場所にコンセントがない)
  • 治安の問題(比較的高価な製品であるため持ち去られやすい)
  • 認知度を高めるためのプロモーション不足

今後は、このなかで、特に4番目のプロモーション不足の問題をいかに克服していくかが気になるところです。

中国や東南アジアでの好調は、日本に旅行して温水洗浄便座の素晴らしさに魅了された人たちが増えていることも一因と考えられますが、この流れを世界全体に広げていくことが、今後の海外戦略の成否のカギを握るのではないでしょうか。

国内市場もまだまだ高付加価値化による深耕の余地が残っている可能性はありますが、中長期的には人口減や住宅着工の減少により縮小は避けられないでしょう。

そのため、海外事業の重要性は一段と高まっていくと考えられます。今後も、トイレ各社の海外展開の取り組みには大いに注目していきたいと思います。

LIMO編集部