2023年3月20日に発表された、株式会社さくらさくプラス2023年7月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社さくらさくプラス 代表取締役社長 西尾義隆 氏
2023年7月期 上期のトピックス
西尾義隆氏(以下、西尾):みなさま、こんにちは。さくらさくプラス代表の西尾でございます。本日は2023年7月期第2四半期の決算について、資料をもとにご案内させていただきます。
まずは、上期のトピックスをご紹介します。1つ目は、保育の研修企画・実施やコンサルティングを行う、株式会社保育のデザイン研究所の完全子会社化についてです。同社の全株式の取得を、取締役会にて決議しました。後ほど詳しくご説明しますが、4月に実行する予定で進めています。
2つ目は株主還元についてです。2023年7月期は、年間配当金を1株あたり12円に増配する予定です。
3つ目は、子育て支援カフェ「みらいのテーブル 門前仲町」のオープンについてです。昨年の12月に、我々の保育所と人気ベーカリーのコラボカフェとして1号店を開設しました。こちらも後ほど詳しくご説明します。
4つ目は、今進めている子育て支援住宅についてです。西麻布プロジェクトにおいて「東京都子育て支援住宅認定制度」を取得しています。
以上が、上期の大きなトピックスとなります。
2023年7月期第2四半期決算概要
2023年7月期第2四半期の決算概要です。
売上高は65.7億円で、運営施設数は74施設から86施設へ増加しているところが大きなポイントです。コロナ禍により出産が少なかったことに加え、「預け控え」が発生し、入園児数が一時的に減少しました。その結果、増収への寄与が見込んでいた水準に届かず、17.5パーセントの増収にとどまりました。しかしながら、足元では園児数は回復傾向にあります。
営業利益は2,100万円でした。売上が当初見込んでいた水準に満たなかったことに加え、運営施設数の増加に伴って予定どおりの増員を行い人件費が増加したこと、さらに物価高騰による諸経費の増加等により、減益となっています。
経常利益は6,100万円となっています。施設開設に伴う補助金収入を1.8億円計上したものの、営業利益の減少に加え、開設準備費用として7,000万円を計上した結果、減益につながっています。また、第1四半期に経営統合に係る調査費用として約5,000万円を計上したことなども、減益に影響しています。
2023年7月期第2四半期貸借対照表
B/Sについてご説明します。
資産の部では、主に運営施設数の増加に伴う補助金などに係る未収入金が約4億円増加しました。また、子育て支援住宅の開発に向けた販売用不動産の取得により約3億円増加した一方、建物及び土地の取得のために現金及び預金は減少しています。その結果、資産合計は前期末比で約12.8億円の増加となりました。
負債の部では、主に保育所開設準備費及び子育て支援住宅開発のための資金調達に伴い、負債が約12.9億円増加しています。
剰余金の配当(期末配当)について
先ほどトピックスの中で少しご案内したところを、あらためてご説明します。当社グループでは、昨年より剰余金の配当を開始しました。中長期的には配当性向20パーセントを目指していくことを考えています。
昨年は当初の予想よりも減益となったものの、株主のみなさまへの還元を安定的に行っていきたいと考え、1株あたり10円の配当を実施しました。本執行年度においては、前期の10円から、今期は12円へ増配を予定しています。利益の増加に伴い、配当性向を維持しながら、しっかりとした配当を今後も行っていきたいと考えています。
事業の内容-当社業績の季節変動要因について
2023年7月期について、残りの半年の業績予想をご説明します。
当社グループの売上と利益の過去の推移を見ていくと、季節性が大きく影響していることがわかります。保育所の新規開設は4月のため、第1四半期から第3四半期は開設準備費等が先行します。
一方で、第3四半期には施設開設に係る多額の補助金収入が計上される傾向があります。また、園児数が4月に増えるため、第3四半期および第4四半期の売上と利益が変動します。スライド下側のグラフでは、そのような傾向を過去のデータをもとに示しています。
2023年7月期業績予想
業績予想です。2023年7月期は10月に1施設を開設しており、4月に開設する2つの施設についても開園準備は順調に進み、いつでも開園できる状態になっています。運営施設数が増加していく一方で、一部の施設で低年齢児の一時的な入所率の減少があったものの、充足率は98.1パーセントまで回復しています。
園児数は当初の想定どおり増加する予定で、売上高は前期比14.2パーセントの増収、営業利益も増益を見込んでおり、当初の予定より変更はありません。
子育て支援政策
成長戦略について、少し整理しながらお話ししていきたいと思います。
まずは、年明けから大きな話題となり、岸田政権の中でさまざまな議論が行われている、子育て支援政策についてです。少子化の事実にどのように対応していくかが、世間の注目の的になっていると我々も見ています。
特に、児童手当などの経済支援の拡大、子育てサービスの充実、働き方改革の推進といった部分が「異次元の少子化対策」という言葉とともに出てきました。それらに加え、以前から話題になっていた「こども家庭庁」が、2023年4月1日に新設されます。
「少子社会に対してどのように向き合っていくのか、どのような対策を行っていくのか」などのさまざまな議論が行われていますが、国も本格的に子育て支援に向けて動き始めたという印象を持っています。そして、我々もそのようなところにしっかりとアンテナを張りながら、事業を進めていきたいと考えています。
政府の少子化対策と当社との親和性
先ほどのご説明と一部重複しますが、少子化対策と当社との親和性についてお話しします。
日本の2022年の出生率は前年比5.1パーセント減で、80万人割れとなっています。一方で、政府においては少子化対策の予算等の議論が進められており、2023年6月には骨太方針が出てくるということも言われています。我々は少子化対策が本格的に議論され、対応が進められていくことが、今後のステージになるのではないかと考えています。
先ほど「こども家庭庁」の創設についてもお話ししましたが、女性の就労支援として、社会保険や所得税などの規制をいかに変えていくかが議論の的になっています。それらへの対応が、おそらく政治の中で進んでいくため、我々としても事業により力を入れていくステージになると考えています。
スライドの右側には、グループの事業活動をまとめています。当社グループは子ども・子育て支援事業を中核に発展させていこうと考えている会社です。現在中心としている認可保育所の事業を基盤に、さまざまなかたちで子育てのサポートを行える会社であり続けたいと考えています。
目指すビジョン
スライドには、我々が目指すビジョンを記載しています。当社が得意としている東京都での認可保育所の運営を中心に、子ども・子育て支援の拡大を一層図っていきたいと考えています。そして、この取り組みこそが、社会や国の求めているものになっていくのではないかと考えているところです。
長期ビジョンイメージ
長期ビジョンのイメージをスライドの図に示しています。当社グループでは創業以来、保育所を開設してきましたが、現在は一定の需要が満たされたステージにいるのではないかと思っています。
今後は、東京都の認可保育所という安定基盤をより強化していくとともに、それに付随するさまざまな子ども・子育て支援事業の拡張を図っていきたいと考えています。
当社グループが得意とするさくらさくパワーズでの不動産の企画・開発や、図の右上に記載の「新サービス領域」である食育や保育所向けの研修などを軸に、事業を拡張していきたいと考えています。
保育所周辺事業とのシナジー
スライドは、我々の保育所周辺事業の展開を図表でまとめたものです。当社グループの運営施設数は現時点で86施設あり、この春に2園増加して88施設となる予定です。なお、1月末時点での利用者数は4,526名です。こちらを中心として、スライドの下側に記載しているさまざまなサービスの拡張を図っていきます。
1つ目は、食育サービスです。先ほど「カフェをオープンした」とお話ししましたが、今後も食育サービスの分野を拡張していきたいと考えています。
2つ目は、システムやアプリケーションの開発・運営です。子育てに関する精度の高い情報を提案するサービスを提供するため、みらいパレットという会社でアプリの開発を進めています。
3つ目は、スライド下部中央に「NEW」と記載していますが、4月に株式会社保育のデザイン研究所の連結子会社化を予定しています。これにより、保育研修サービスの分野も広げていきたいと考えています。
4つ目は、先ほどご説明した子育て支援住宅です。不動産を最大限に活用しながら、子育ての支援に取り組んでいきます。
5つ目は、進学塾の運営です。現在大きな話題となっている中学進学について、保育所を卒園した方々に向けたサービスの提供を拡張していきたいと考えています。
保育所周辺事業の拡張へ注力し、収益の多角化を実現
当社グループのビジネスモデルをスライドに記載しています。
今までの中核は、一番上のさくらさくみらいでした。保育サービスですので、行政を通じて補助金をいただいています。こちらは、先ほどご説明した国の施策とともに少子化対策の中核となる部分のため、今後さらに幅が広がっていくと考えています。当社グループではこちらに付随するかたちで、さまざまな事業への多角化を進めています。
特に、スライドに「New」と記載している、保育のデザイン研究所という研修会社の株式取得によって、顧客層の幅が一気に広がると思っています。スライドに記載のとおり、保育士や幼稚園教諭、保育所や幼稚園など、事業体そのものや各行政に対して研修サービスを発信できると考えています。
子育て支援新サービスの取り組み
保育のデザイン研究所の取得に至った理由を、スライドにまとめました。こちらの会社は以前から保育運営法人や自治体に研修を提供しており、我々もお世話になり保育の質向上に努めてきました。
300講座以上のオンライン研修をサブスクで提供していることに加え、年間200本以上の集合研修やライブ研修の開催実績があり、リアルとWebのハイブリッドで研修を行っている会社です。各著名人や著名大学の先生、専門家にお願いして、よいコンテンツを提供しているところが特徴です。
昨今、静岡県で虐待していた保育士が逮捕された報道などもあり、保育の質が注目を浴びています。当社グループは保育の量にもこだわってきましたが、もちろん質も常に見据えて事業を作ってきました。
このような流れは、日本全国に必要なことだと考えており、保育に携わるすべての人々がレベルアップ、バージョンアップできるように、我々のサービスを提供していきたいと考えています。そのためにこの会社の取得に至ったと、ご理解いただければと考えています。
子育て支援新サービスの取り組み
スライド右側に記載の「子育て支援住宅の開発」は、子育て支援サービスの大きな取り組みの1つです。こちらは東京都子育て支援住宅制度に認定された住宅の開発で、建物の作りや設備などのハード面にいろいろな特徴があります。
子育て支援への取り組み案に記載しているような当社グループが持つ子育てのノウハウを活かしたソフト面のサービス提供により、入居者が安心して子育てできる環境を整えたいとの考えから、この事業に取り組んでいます。西麻布をはじめ、台東区浅草でもすでに開発用地を取得して設計を進めている状況です。
【参照】不動産の「情報力」「企画力」「開発力」 を活かした子育て支援住宅の開発
子育て支援住宅の開発は、当社グループの強みである保育所開発を含めた保育運営のノウハウを融合することにより、本当の意味で子育て支援ができる住宅になるという考えのもと、進めています。
子育て支援新サービスの取り組み
子育て支援新サービスの取り組みのうち、食育の分野についてご説明します。昨年末に「みらいのテーブル 門前仲町」をオープンしました。子どもたちと保護者が安心して利用できる「親子で楽しめるベーカリーカフェ」となっており、子どもの「行きたい」や大人の「行きたい」をコンセプトにしています。
今後はスライドに記載のとおり、乳幼児の栄養と満足を叶える安全安心なパンの開発に取り組みながら、eコマースを通じたパンの全国販売や、保護者の支援を発展させたいと考えています。
店舗で出している保育所の管理栄養士が開発したパンや、レシピの公開を通じて、子どもたちに安全なパンを提供していきます。また、低糖質パンやアレルギーに対応したグルテンフリーのパンなどを開発し、メニューの幅を広げたいと考えています。
子育て支援新サービスの取り組み
子育て支援サービスの取り組みとして、システムやアプリケーションの開発・運営を行っているみらいパレットをご紹介します。まずは写真の販売からスタートしており、当社グループの保育所をご利用者のみなさまに非常に多くの写真をご購入いただいています。
保育所を起点としたコミュニティアプリの開発や、子どもの個性に合わせた子育て知的アセットの提供、子育てのノウハウを共有し子どもたちも保護者も笑顔で過ごせるサービスの提供などをテーマに、自社で運営を進めています。
子育て支援新サービスの取り組み
現在、中学受験が非常に加熱しており、特に都市部・首都圏においては受験者数が膨大で、2022年度は過去最多とも言われています。そのような中学受験へのニーズに応じて、VAMOSにて進学塾の運営をしています。
進学塾利用者の低年齢化が非常に進んでおり、小学校1年生や2年生時から、すでに中学受験の準備を始めています。保育所の卒園児を持つ、進学を希望するご家庭に対して、このあたりをカバーしていきたいと考えています。
お子さまに寄り添う指導や質の高い講義が、VAMOSの特徴です。今、学童保育も問題になっていますが、保育所を利用する共働きのご家庭に対して、進学塾の分野でも手厚いサービスを提供していきたいと考えているところです。教育の分野でブリッジとなるようなプログラム等を開発し、さらに進学塾の発展につなげたいと考えています。
【参照】当社の安全への取り組み
当社の安全への取り組みをご紹介します。今、保育士の虐待などが話題になっており、報道を目にする機会も多いと思います。当社グループでは、従前より保育士の質向上にしっかりと取り組んでいます。
保育士免許には更新にあたるものがなく、一度免許を取得すると、アップデートや学び直しの機会が非常に少ない業界です。当社グループとしては、保育のデザイン研究所のコンテンツをはじめとして、質の高い保育を世の中に広げ、伝えることでこれらに対応したいと思っています。
また、スライドに記載のとおり「子ども虐待のない社会実現」についても、責任ある取り組みをしたいと考えています。オレンジリボン憲章の精神に則り、オレンジリボン運動にも参加し、この問題に徹底的に向き合っていきます。
子育て支援新サービスの取り組み
子育て支援サービスの取り組みのうち、保育業界のコンテンツと質の向上に関わる新たな取り組みについてスライドにまとめました。子どもの数は減っていますが、園の利用者がなくなるわけではありませんので、選ばれる園づくりにしっかりと取り組んでいます。
先ほどお話しした質の向上を軸に、独自の新たな乳幼児教育プログラム「CLiP」を展開したり、アカデミックなところでは東京大学の大学院と実践研究を行ったりしています。このような質へのこだわりは、今後も継続していきます。
2023年7月期 第2四半期における東京都内保育所と東京・認可比率
当社グループの特徴で中心となるのが、東京都内の保育所の運営です。スライドは東京都の認可保育所の所在をプロットしたもので、認可保育所の比率が非常に高いことがわかります。
先ほどからご説明しているとおり、徹底的なドミナント戦略に伴い、保育所の運営だけでなく付随する業務の運営をしやすくするため、拠点である東京都の認可比率をさらに高めているところです。一方で、全国へ広げていける研修事業などは、拡張を図っていきたいと考えています。
売上・売上原価の構成と開所から収益最大化までのイメージ
保育所の売上構成についてです。新規開所からおおむね5年で満所になるように事業を進めています。先行投資にはなりますが、しっかりと事業を組み立てて収益の上昇につなげるビジネスモデルとなっています。
2023年7月期 開設年度状況
スライドのグラフは、当社保育所の開設年度状況です。薄ピンク色の部分が開所5年目以降を示しています。2023年7月期では88あるうちの42施設が開所から4年未満であり、我々としてはこの点においても伸びしろがあると捉えています。
中期経営計画について
中期経営計画にて定めた数値を表にしました。現在は、計画を立てた段階よりもさらに拡張させて事業を展開しています。先ほどご説明したM&Aと同様に、この中期経営計画は事業の多角化という点において今後も見直せると考えていますが、現時点ではスライドで示したような計画となっています。
我々は保育所を中心に事業展開していましたが、新規開設をどんどん増やすフェーズはある程度終えたと考えています。今後は中核である保育所事業の基盤を強化をするとともに、新しく子育て支援となる事業領域を拡大して、より成長を続けていきたいと考えています。以上が、我々の現状や計画についてのご案内となります。ありがとうございました。
質疑応答:園児数の推移について
司会者:「出産数減少や預け控えにより園児数が当初の想定を下回ったものの、足元の充足率は98パーセントまできているとのお話でしたが、月次でどのような推移をたどっているか教えていただけますか?」というご質問です。
西尾:今日は詳細な資料をお持ちしていませんが、保育所の事業年度の開始が4月ですので、8月から9月頃までは低い状態が続きます。それ以降は毎月園児数が増えている状況で、現在もそのような伸び率になっているとご理解いただければと思います。
質疑応答:補助金について
司会者:「食材や電気代等のさまざまな運営コストが上昇しているということですが、その分を考慮した補助金の増加などはあるのでしょうか?」というご質問です。
西尾:昨年度のロシアによるウクライナ侵攻の開始以来、コストが増加し続けてきました。行政もこちらの訴えを理解していて、コストの増加に対応する補助が新たに出てきています。順次取り入れていけるかたちになってきていますので、対応については今後も続いていくであろうと考えています。
質疑応答:下期の営業利益について
司会者:「通期予想について下期で3億円弱の営業利益が出ると予想していますが、前年比よりだいぶ多いように思います。どのようなものを見込んでいるのでしょうか?」というご質問です。
西尾:当社グループは第3四半期、第4四半期に事業利益が集中します。3月、4月に役所で事業年度の精算を行うことにより加算されるケースが非常に多くなっているため、そちらの収益を見込んでいます。
また今日は詳しくお話しませんでしたが、不動産部門の収益を上げる計画もあり、その部分が営業利益に加算されると考えています。
質疑応答:営業外利益の減少要因について
司会者:「今期は下期に出る営業外の利益が少ない予定ですが、開園が少ないことによる補助金の減少が影響しているのでしょうか?」というご質問です。
西尾:開園数が増えれば開園の補助金は増えますが、開園の絶対数が少なくなっていることもあり、営業外収益が減っています。しかし、事業の本丸である営業利益をしっかりと出して事業を構築することが正しい姿だと思っていますので、今後はそちらに移行していきます。
質疑応答:開発した不動産について
司会者:「開発した不動産を販売しないで、そのまま管理およびサービス提供し賃料収入を増やす計画はありますか?」というご質問です。
西尾:当社グループとしては、開発してお譲りすることを基本的な考え方としています。今後のステージによっては長期保有物件の検討もしていく可能性はありますが、西麻布および浅草においては売却用の不動産と考えています。
質疑応答:保育所での虐待事件の影響について
司会者:「保育所での虐待事件が発生していますが、貴社の業況にはどのようなかたちで影響が出ていますか?」というご質問です。
西尾:当社グループでは、従前より虐待が起きない仕組み作りを進めてきました。大きな取り組みの1つとして、どこの会社よりも多く職員の研修を実施しています。また、今回のような事件は外部の目が入らない環境で起きていると考えています。そのため我々は、例えば保育室の室内に防犯カメラを設けるなど、抑止する仕組みを作っていきました。
教育研修をしっかりと行いながら、ハードの部分でもカバーし、第三者の目がしっかりと入って抑止が利く仕組み作りもあわせて行っています。虐待に対してだけではなく教育研修などについても、第三者の目に強くこだわりを持ってこれまでも運営してきましたので、今後もしっかりと続けていきたいと思っています。
質疑応答:異次元の子育て支援発言について
司会者:「年初から首相や都知事による『異次元の子育て支援』発言がありますが、具体的に反映される兆しはありますか?」というご質問です。
西尾:今議論されているものが最終的にどのようなかたちになっていくかはわかりませんが、当社が所属している保育団体に対しても多くのヒアリングが来ており、こちらの要望をお伝えする機会が非常に増えています。
さまざまな取り組みが行われると思いますが、国のためにもと考えると、子どもをより産みやすく育てやすい社会環境の実現が必要不可欠になってくると思っています。
当社だけではなく、この事業をドメスティックで行っている会社においては、一定の人の安定も必要不可欠になると思いますので、この施策は必ず何らかのかたちで継続実行されていくだろうと考えています。
質疑応答:新規事業について
司会者:「新規事業はいずれも御社の保育所展開にも活用でき、同時に外販売上も増やしていける事業と見受けられます。これを意識して、このような市場を新たなターゲットとしているのでしょうか?」というご質問です。
西尾:重複しますが、子ども・子育て支援事業が当社グループの強みだと考えています。0歳からお預かりしたご家庭に対して、どこまで継続的に事業展開および拡張していけるかが我々の大きなテーマです。東京都の認可保育所は事業の中核として屋台骨になっていますが、そこから広げられるものがたくさんあると考えています。
私たちの強みである不動産の企画開発を展開する事業は、先ほどからご説明している「保育所周辺ビジネス」というかたちで、認可保育所よりもさらに効率的に保育事業者向けへのサービス展開を図っていけると考えています。今後もこの事業の拡張性を図っていきます。
より長期間のご利用者に対してのサービス展開として、進学塾の運営も行います。子ども・子育て支援事業という名目で事業を発展していますので、より子どもを産みやすく育てやすい社会環境を実現することが、当社グループの大きな理念であり目指すべき方向であると考えています。
質疑応答:株主還元について
司会者:「増配するとのことですが、株主還元に関しての御社の考え方を教えてください」というご質問です。
西尾:子ども・子育て支援にはいろいろなかたちがあると思いますが、当社は株式を上場している会社ですので、みなさまから応援いただいた部分をしっかりと還元していくことを基本スタイルとしています。投資という目線で子ども・子育て支援に参画いただき、我々がみなさまからの投資を最大活用し、還元していくということが当社の考え方です。
当然、事業拡張における資金も必要になりますが、投資していただいたみなさまに対しては今後も配当をしっかりと続けて、増やしていきたいと考えているところです。
質疑応答:コロナ禍を経た戦略について
司会者:「コロナ禍を経て、他の民間保育所会社と御社との考え方で戦略は変わってきているのでしょうか?」というご質問です。
西尾:保育業界にもいくつか保育所のタイプがあり、我々は認可保育所を中心に事業展開してきました。企業主導型や小規模認可保育所など違うタイプの保育所もありますが、このような形態では集客にかなり苦戦しているとよく聞きます。
認可保育所の強みをより発揮して質と内容を向上し、クオリティを担保することでご利用者の方に満足していただき、需要の安定を図っていきたいと考えています。また、事業を多角化し、より拡張していくことが当社の方針だと捉えていただければと思います。
質疑応答:買収後のシナジーについて
司会者:「新規事業の買収や子会社化を進めていますが、買収後のシナジーについてどれくらい期待してよいでしょうか?」というご質問です。
西尾:事業によって収益や利益の構造が少し異なっていると考えています。保育所事業に関しては安定的な基盤での事業の拡張、不動産事業に関しては利益率がより高くなる手法、研修および食育事業に関してはより広域な戦略というかたちで、さまざまな会社が異なる収益構造で事業を組み立てています。
事業のポートフォリオを分散していきながらそれぞれの事業の特徴を捉えて、相互にシナジーを図っていきたいと考えています。今後の領域の拡張については、中期経営計画などでより詳しく取りまとめていきたいと思っていますが、非常に大きな効果が得られるのではないかと考えています。