4. 政府への要求「自分ごとではない」場合は慎重に

介護従事者の給料が上がって介護従事者不足が解消すれは、自分自身が老後に「介護難民」となる可能性が減りますね。

よって、介護保険料の引き上げを覚悟しても介護士の給料を引き上げるように政府に要求する人は多いでしょう。

しかし「自分ごとでない場合」にはどうでしょう。

たとえば、希少難病患者が少しだけ長生きできるが、非常に高価な特効薬が開発されたとします。「保険適用してあげよう。健康保険料が上がっても喜んで払うから」と言う人は多いでしょうか。

農家を保護するために農産物の輸入を制限することがあります。「農産物の輸入を自由化すると農家がかわいそうだから、我々は安い外国産の農産物を買えなくても高い国産で我慢する」と考えている人は多いのでしょうか。

数人の高齢者だけが暮らす山奥の寒村や離島を維持するために膨大な税金等々が使われているとして、都会の住民は「彼等が可哀想だから、電気もガスも水道もきちんと供給してやれ。そのために必要なら電気代やガス代や水道代が値上がりしても喜んで払うから」と言うでしょうか。

「かわいそうだから、政府に何とかして欲しい」と言いたくなるケースは数多くあります。ただしその主張には必ず「費用は喜んで負担するから」と付け加えるべきなのです。その覚悟がないならば、政府への要求は慎重に行なうべきでしょう。

農産物の場合は食料安全保障等々の問題がありますし、寒村の場合には高齢者が住む場所を選ぶ自由、健康で文化的な生活をする権利、等を尊重しなければなりませんから、簡単な問題ではないでしょうが、納税者等々に負担がかかる話ですから、国民的な議論が必要だろうと思います。