相場の世界では、「夏が暑く、冬が寒いと景気が良くなる」と言われます。
そうした格言のように、猛暑や大雪になると、ダイキン工業や三菱電機などのエアコンメーカー、またヤマダ電機やケーズデンキといった家電量販店が忙しくなるというのはおなじみの光景です。
そうした中、年を経るごとに猛暑の勢いは増し、また2022年から23年にかけての冬も日本海側は特に大雪で、エアコンメーカーや小売店の生産・販売の態勢を年々強化しているのは皆さんもお感じになるのではないでしょうか。
世界で健闘する日本のエアコンメーカー
国内で好調な家庭用エアコンですが、実は海外でも日本メーカーが好調で、とりわけ最近は北米市場での存在感が急速に高まりつつあることをご存じでしょうか。
やや古くなりますが、2017年5月末にダイキン工業が米国テキサス州で新工場の開所式を行い、米国で積極的に投資を行う考えを表明しています。
また、2017年7月25日に2018年3月期第1四半期決算を発表した富士通ゼネラル(6755)も、北米のエアコン販売は好天に恵まれたことなどにより増収を確保したとコメントしています。
家電製品というと、日本メーカーは韓国や中国のメーカーに席巻されてしまったイメージが強いですが、実は健闘しているのです。
その最大の要因は、高い省エネ性能を持つ、日本メーカーが得意なダクトレス方式のエアコンが世界で認められてきたことにあります。
米国でも普及が期待されているダクトレス方式とは?
では、このダクトレス方式のエアコンとはどのようなものか、簡単に解説したいと思います。
ダクトレスとは、文字通り“ダクトがない”エアコンということであり、ダクト方式とは対照的な方式です。
そのダクトとは、空気を送る管のことですが、米国ではこれまで一か所で暖かい空気や冷たい空気を作り、その空気を建物の屋根裏などに張り巡らされたダクトを通して各部屋の冷暖房を行う方式が主流となっていました。
一方、日本で主流のダクトレス方式では、皆さんご承知のように、部屋ごとに室外機と室内機が1台ずつセットで取り付けられます。
どちらが省エネ性能に優れるかというと、これは明らかに日本で主流のダクトレス方式です。それは、人がいる部屋だけの空調が可能であることや、部屋ごとに細かな温度調整ができるためです。
最近日本のエアコンメーカーが米国市場で存在感を高めているのは、米国における省エネ意識の高まりでダクトレスが評価されてきたためです。
もちろん、北米ではこれまで住宅を建てる時にダクトも一緒に作り、エアコンを住宅設備の一部として販売することが一般的であったため、ダクトタイプの需要がなくなるとは考えられません。
とはいえ、すでに欧州ではダクトレス方式が家庭用エアコンの主流となっていることを考えると、米国についても今後の展開には大いに期待が持てるのではないかと思われます。
今後の注目点
日本のエアコンは、ダクトレス方式であることによる高い省エネ性能だけではなく、カビ菌やニオイの原因菌の分解・除去やPM2.5・花粉などの除去を行うフィルター機能、人のいる場所だけを的確に感知し温度調節を行うセンサー機能、フィルターについたゴミを自動的に除去するお掃除機能など、様々な優れた機能を持っています。
今後は、こうした特色を国や地域の特性に合わせて海外でも訴求できるのか、また、エアコンは家具でもあるためデザイン面でも現地のニーズに合った製品を開発できるのか注視したいと思います。
いずれにせよ、家庭用エアコンは日本の家電メーカーが現時点で国際競争力を持つ数少ないプロダクトであるため、今後もその動向には大いに注目していきたいと思います。
LIMO編集部