LINE株、出直りか!?
LINE(3938)の株が出直る兆しを見せています。
同社は2017年7月26日に2017年12月期上半期の決算を発表しました。株価は翌日の終値が3,985円と、前日終値比+4%上昇しています。
決算内容は一見して好調です。第2四半期累計(1-6月期)の売上収益は対前年同期比+17%増の787億円、営業利益は同+39%増の186億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同+301%の103億円となりました。
好調の要因は広告サービスです。その売上は対前年同期比+39%増、対前四半期比+6%増と急速に伸びています。なかでもパフォーマンス型広告が非常に高い伸びを示しています。
しかし、この利益の高い成長には一時的要因が効いています。カメラ事業の譲渡益を104億円計上しているからです。このような一時収益を除くと4-6月期の営業利益は42億円となり、1-3月期の40億円に対して微増、2016年4-6月期の38億円に対しても約+11%増にとどまります。
売上収益が伸びているものの、経費の増加も大きく利益の伸びは決して十分とは言えません。さらに日本、台湾、タイ、インドネシアの月間アクティブユーザー数(MAU)が初めて対前四半期比で減少するなど、気になるデータも開示されています。
このように、決算の財務内容自体はそれほど強気になる材料はなかったと思われます。
また、決算説明資料では、7月に先行予約が行われた同社のスマートスピーカー「WAVE」に関しても説明がありました。しかし、特段新しい情報が出てきているわけではありません。株価出直りのきっかけとは考えにくいのではないでしょうか。
気になるのは「LINEデリマ」のサービス開始
今回の決算で一番の注目は、「LINEデリマ」のサービスインだと思われます。
このサービスは、2017年7月26日にスタートしたLINEアプリ上で注文するデリバリーサービスで、ピザ、すし、カレー、中華、弁当、お酒など、さまざまなジャンルの全国14,000に及ぶ店舗のメニューを検索し注文ができます。
全国チェーンの飲食店も数多く参加しており、LINEポイントを貯めたり使ったりすることが可能です(ポイント利用の可否は店舗ごとに異なる)。「出前館」を運営する夢の街創造委員会(2484)との業務連携で同事業が展開されていきます。
これまではチラシと電話、あるいはPCで出前の検索をした方も多いと思います。これが、LINEアプリから簡単便利に注文できることになれば利便性はぐっと高まりそうです。
収益インパクトはどうか?
収益的にはどうでしょうか。同事業のLINEに及ぼす収益インパクトについては言及がありませんのでなかなか明示は難しいのですが、既に顕在化している出前市場のうち、このプラットフォームが一定のシェアを取ることは十分期待できそうです。
一方、自分でお弁当を買いに行くことをやめてLINEデリマに移行するかなど、出前市場の規模がどこまで拡大できるかについてはもう少し様子を見なければ判断ができないとも言えるでしょう。
しかし、この種のスマホ出前サービス市場は中国などでは既に普及しています。筆者も2016年末に中国の現地インタビューをしましたが、忙しい人ほど徹底的に出前サービスを利用していました。
価格とデリバリーまでの時間など、サービスの質に問題がなければ、出前市場の拡大について強気な見方が増えても不思議ではありません。
LINEデリマの破壊力
さて、将来を考えていくうえでの注目ポイントは次の3つです。
第1は取扱商品の拡大です。LINEの発表によれば今後「生鮮食品や日用雑貨、医薬品など、様々なカテゴリーの商品を注文・デリバリーできるようなサービスの提供を企図」しているとあります。都市部を中心に需要が期待できるでしょう。
第2はデリバリー網の構築です。LINEデリマでは、注文先(飲食店)が配送人員を抱えていない場合に備えて「シェアリングデリバリー」網も構築するとあります。
たとえば、夢の街創造委員会の宅配ポータルサイト「出前館」で吉野家に牛丼を注文すると、近隣の新聞販売店ASAが連携して消費者に牛丼を届けるサービスを展開し始めています。
このようなデリバリーシェアリング網をいち早く構築できれば、第1のポイントで触れた取扱商品の拡大が行いやすくなります。
第3はLINE Payの普及です。LINEを通じた物販が普及するほど決済におけるLINE Payも普及していきます(これは既に中国で実現しています)。よって、LINEが本格的に決済と金融事業の足掛かりを得ることにつながると思われます。
以上、3つほど楽しみな展開について触れてみました。一朝一夕に成果が出るとは思えませんが、株式市場にとっては中長期的に注目すべき展開です。
アマゾン、楽天、ヤフー、あるいはネットスーパー、コンビニなどを巻き込んだ大きなうねりになりそうですので、いよいよ目が離せなくなってきました。
椎名 則夫