人の心理をつかむ意味で、広告・宣伝は詐欺と紙一重!?
モノが売れない時代と言われて、長い年月が過ぎています。打開のためのヒントを求め、マーケティング関係の講演・セミナーをめぐっていると、さまざまな講演・セミナーで共通するポイントは次の2点になるように思われます。
- 消費の実権を握っているのは、女性
- 男性は機能性に目を向けるが、女性はイメージ重視
いいモノさえ作っていれば売れた時代は、すでに終わり。消費の実権を握る女性たちは、モノを買っているのではなく、夢や憧れを買うのだと言うセミナーは数多くあります。
これからは、どうやってモノを売るかの時代です。そのためには、女性たちの心理をいかにつかみ、そこに照準を合わせた広告・宣伝をするかが大切になります。
大手広告代理店出身の講師の一言が、シンボリックです。
「心理をつかむという意味では、宣伝や広告は詐欺と紙一重のところがあります」
問題は、いいモノとサービスがありながら売れないこと
言うまでもなく、詐欺は犯罪です。いいモノも、消費者の期待に応えるサービスも持ち合わせないなかで、売るのです。逆に言えば、その分、消費者の心理をつかむテクニックは磨かれているということでもあります。
我々が抱えている問題は、いいモノもいいサービスもありながら、売れないことです。消費者の心理をつかむテクニックの部分に限り、詐欺師からヒントを得るのも一考の余地ありと言えなくはありません。
とはいえ詐欺師に出会うことは、非常に困難です。そんななか、ネットで詐欺罪で前科2犯という人物を見つけました。ネットですから、あくまでも自称です。本当に詐欺師か、また前科2犯かどうかも定かではありません。しかし、とりあえず”サギ師”です。
嫁たちの心をつかんだセリフは、「お姑さんが喜ぶ」
この人物は、正確には”元サギ師”です。子供が成長していく姿に接し、一念発起して詐欺からは足を洗ったとのことです。
再就職先は、飛び込みセールスマン。羽根布団や毛皮、アクセサリーを売り歩くのだそうです。いずれも女性向け、しかも高額商品です。売りにくい商品を売りまくり、セールストップの成績になったことがあると自慢しています。もちろん、自称ですが……。
セールスは、女性が集まりそうな場所をめがけて行います。弁舌さわやかにジョークをまじえ、女性たちの警戒心を取り除くことからスタートです。警戒心を取り除く話術は、詐欺師時代に培ったもののようです。
羽毛布団を売っていたときのことです。集まった女性たちの大半は、若い主婦。いつもながらの手順で女性たちの警戒心を取り除いたあと、商品の機能性に移ります。
水鳥の羽毛100%。あったかくて、軽い。お定まりのセールストークを行いますが、なかなか売れませんでした。なにせ高額です、そう簡単には財布のヒモを緩めるはずはありません。
一向に買う気配を見せない女性たちに、半ば投げやりな気持ちで発したセリフでした。
「お姑さんに買ってやったら、喜ぶよ」
その瞬間、女性たちの表情が一変するのを感じたそうです。
心に響く部分をくみ取り、心理掌握の参考にする
姑へのプレゼントを提案して売るようになってから、羽毛布団のセールスは順調に成績を伸ばしていったようです。
犬猿の仲で有名な、嫁と姑。嫁たちの本心は姑に好かれたがっている。ならば、その逆もあるはず。毛皮や宝石を売るときには、姑に向けてセールスをしたそうです。
高齢者の集まる医療施設に出向き、嫁の悪口で盛り上がっている姑たちのなかに飛び込みます。定番のセールストークをしたあと、一言付け加えます。
「嫁さんに買ってやったら、喜ぶよ」
羽毛布団や毛皮を買った後、嫁と姑の仲がよくなったかどうかはわかりません。しかし、犬猿の仲の嫁から、姑から、プレゼントされて嬉しかったであろうことは想像に難くありません。
人には表面に表れにくい心理もあります。こうした心理をつかみとる方法は、既成の評論家、専門家がすでにアイデアを出しつくしているでしょう。それでも売れないなら、誰も振り向かなかったところに視点を向けてみる手もありではないでしょうか。
ネットも、必ずしも高い信用を得ているメディアではありません。信じ込んでしまうのは危険ですが、なにかのヒントを得ることはできます。
”元サギ師”の話が全部ウソであったとしても、心に響く部分だけをくみ取っていけば、消費者心理に照準を合わせる参考にはなるように思います。
間宮 書子