金利が上がると日銀が債務超過に陥るリスクがありますが、そうなっても特に問題ないので、心配は無用です(経済評論家 塚崎公義)。

国債の価格下落で日銀が債務超過に?

昨年末に長期金利が上昇しましたし、今後もインフレによって長期金利が上昇していく可能性は否定できません。そうなると、日銀が保有する国債の価格が下落し、日銀が債務超過に陥るのではないか、と心配している人は少なくないでしょう。

日銀は決算に際して長期国債を時価ではなく取得価額で評価するようです。よって、今期末の決算で日銀が債務超過に陥ることはないと考えられます。

とはいえ、「日銀は、保有国債を時価評価したら債務超過になるはずだ」と人々が思うようになるだけで、日銀に対する信頼が揺らぐと心配している人も多いようです。

ちなみに、長期金利の決まり方、長期金利が上がると債券価格が下がる理由、などについては、初心者向けの解説を後述します。経済初心者の方は先に後半をお読みいただければと思います。

国債を満期まで持てば「問題ない」と言えるのか

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bee32/istockphoto.com

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日銀は、保有国債を途中で売却する予定はなく、満期まで持ち続ける予定のようです。そうであれば、満期に額面で償還されるでしょうから、今の時価が低くても気にする必要はないようにも思えます。

しかし、それは今後の短期金利がゼロのまま推移する場合に限られます。国債が償還される前に短期金利が上昇すると、面倒なことが起きるのです。

仮にインフレによって日銀が金融政策を変更し、銀行間貸借の金利を1%に引き上げたとしましょう。

他行から借りている銀行は、金利を払うよりは日銀の準備預金を引き出すことを選ぶでしょうし、それ以外の銀行も準備預金を引き出して他行に貸すことを考えるでしょう。

銀行の引き出し要請に対して日銀が紙幣を印刷して応じると、世の中に大量の紙幣が出回ってインフレを招く恐れがあります。しかし、国債を売って準備預金の引き出しに応じようとすると国債価格が暴落しかねません。

そこで日銀は、準備預金に1%の金利を付利する必要が出るわけです。そうなると銀行は準備預金の引き出しを思いとどまるでしょうが、今度は日銀の決算が赤字になります。

資産である長期国債は金利がゼロなのに、負債である準備預金には金利を支払うわけですから。

今持っている国債が満期になるまで短期金利がゼロのままであることを祈るしかありませんが、今後も日銀が金利ゼロの長期国債を買い続けるとするならばどうでしょう。

永遠に短期金利がゼロという事は考えにくいですから、日銀が将来的に債務超過に陥る可能性は決して低くないと考えられます。

本当に債務超過になれば、政府が埋める

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gary yim/shutterstock.com

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しかし、日銀が債務超過になったからと言って、直ちに問題が生じるわけではありません。銀行が慌てずに準備預金を預けたままにしていれば、何も起きないのです。

なかには焦って引き出す銀行もあるでしょうが、あまり賢い行動とは言えませんね。結果として手にするのが日本銀行券ですから(笑)。

一般企業が債務超過になれば、借金が返せずに倒産する可能性が高いです。しかし、日銀は借金である準備預金を返すために紙幣を印刷することができますから、一般企業の債務超過とは意味が違うのです。

もちろん、懸念はあります。多くの銀行が一斉に引き出す可能性も考えられますし、投資家が動揺して株を売ったり円資産をドル資産に転換したりすれば、混乱が生じかねません。

しかし、それを防ぐのは簡単だと言えるでしょう。政府が日銀の増資を引き受ければ良いからです。日銀が10兆円の債務超過に陥ったとすれば、政府が10兆円の国債を発行して資金を調達し、それで日銀の増資を引き受ければ良いわけです。

日銀は債務超過が消えて健全な状態に戻ります。政府の借金は1000兆円から1010兆円に増えますが、誤差の範囲ですから誰も気にしないでしょう。

円が暴落する可能性がないとは思いません。しかしそれは日銀が債務超過になった場合ではなく、人々が日本政府の借金の巨額さを気にし始め、日本政府が破産する可能性を懸念し始めたときでしょう。

筆者は、それでも何とかなるような気がしていますが、その話は別の機会に。

【初心者向け解説・その1】長期金利は「短期金利の予想」で決まる

10年間の貸借を固定金利で行なう場合を例にします。

貸し手は「1年の貸出を10回繰り返すのと、どちらが得だろう」と考え、一方借り手は「1年の借入を10回繰り返すのと、どちらが得だろう」と考えるはずです。

どちらも今後10年間の1年定期の金利を予想し、その平均と長期金利を比べますね。そして、長期金利の方が高ければ借り手は10回の繰り返しを選び、長期金利の方が低ければ貸し手は10回の繰り返しを選ぶでしょう。したがって、長期の貸借が成立するのは、平均が長期金利と等しいときなのです。

このように、長期金利は予想短期金利の平均と等しくなる、というのが基本なのですが、実際には長期金利の方が少しだけ高くなります。

それは、貸し手が長期貸出を選んだ場合、途中で「次は貸さない」という選択肢を放棄せざるを得ないので、その分だけ金利が高くないと、短期の繰り返しを選んでしまうからです。

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A_stockphoto/istockphoto.com

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【初心者向け解説・その2】長期金利が上がると、債券価格は下がる

昨日の長期金利が1%、今日の長期金利が2%だとします。

昨日発行された額面100円の国債を10年持っていると、金利が10円と満期償還金100円の合計110円が受け取れます。今日発行された国債なら120円です。

昨日発行された国債を持っている人が、資金が必要となって国債を売ろうとしても、誰も買ってくれません。

そこで、90円で売り出すことにしたところ、買い手が見つかりました。90円で買って110円受け取れれば20円の得だから、今日発行の国債を買うのと同じことだ、というわけですね。

つまり、長期金利が上がると昨日発行された国債が嫌われるので値段が下がるのです。反対に、長期金利が下がると昨日発行された国債が宝物として高く買われることになるわけですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

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塚崎 公義