大企業の不祥事が続く

大企業の不祥事が続いています。

ここ数年では、不正会計の東芝(6502)や富士フイルムホールディングス(4901)、エアバッグの不具合から経営破綻に至ったタカタ(7312)、燃費表記偽装の三菱自動車(7211)、過労死問題の電通(4324)、マンション傾き問題の三井不動産(8801)や旭化成(3407)などが記憶に新しいところです。

細かな事案を含めれば、これら以外にも多くの問題が発生しています。会社トップによる「謝罪会見」は一種、見慣れた光景になっているのではないでしょうか。

こうした問題が起きた時の世間の反応は、「まさか、あの名門が? 信じられない」というものと、「やっぱり、あの会社なら」と大きく2つに分かれます。

最近では名門企業と言われていた企業の不祥事が多発しているためか、「まさか」という反応はどちらかというと少なくなっているかもしれません。それだけ、世間全体の大企業を見る目が厳しくなっている印象があります。

こうした反応があることは非常に残念ではあるものの、リスク管理の観点からはむしろ歓迎すべき現象ではないでしょうか。世間からこのように見られていることが意識されれば、むしろコンプライアンスやガバナンスを強化する機運が高まると期待されるためです。

なぜ、不祥事はなくならないのか

では、なぜこのように不祥事は頻発してしまうのでしょうか。

その答えの一つは、最近出版された『企業不祥事はなぜ起きるのか』(中公新書、稲葉陽二著)にありました。本書によると、不祥事が多発する背景には「トップの暴走とそれを止められない社内風土」の影響があることのことで、その理由が豊富なデータをもとに解説されています。

日本特有の企業風土に問題があるという見方は、これまで日本企業に勤めた経験をお持ちの方であれば、誰もが大なり小なり共感できるのではないでしょうか。

とはいえ、企業風土を変えていくことは容易ではありません。企業風土というのは、明文化はされてはいないものの、長い時間をかけて醸成されてきたものだからです。また、企業風土は堅固なチームワークという形で企業の強みとなることもあり、悪い面ばかりではないため一概に否定もできません。

ちなみに、日本の会社は、ゲマインシャフト型(共同体組織≒村社会)であると言われ、西欧社会のゲゼルシャフト型(機能体組織≒ビジネスライクな社会)とは対極的な特色を持っているとされています。どちらにも長所短所があり、日本の会社がゲゼルシャフト型に変われば不祥事はなくなる、という単純な話でもありません。

では、不祥事をなくすためには、日本の企業風土のどこを変えていけばよいのでしょうか。その答えは容易には見つかりませんが、経営トップは、ゲマインシャフト型の組織であっても「モノが言いやすい風通しのよい組織」を作ることに努めるべきではないでしょうか。

そのためには、トップ自らが「それぞれの個人の違いを認める」寛容さを持つことが大切だと思います。

自分を見つめ直し、寛容さを取り戻すには?

では、株主から常に利益を伸ばすことを求められている経営トップが、そうしたプレッシャーのなかで寛容な考えを持ち、部下に過度なプレッシャーを与えないためには何をすればよいでしょうか。

まず考えられることは、「エグゼクティブコーチング」の専門家を雇うことです。そうした専門家と守秘義務を結び、悩みや課題をさらけ出し、自分がどのように見られているのか、自分の行動に間違いはないかを定期的に客観的に評価してもらうことで、自分が「裸の王様」になっていないかをチェックするのです。

あるいは、四国へ「お遍路」に行くことも一案です。お遍路は、四国の徳島県、高知県、愛媛県、香川県に点在する八十八カ所の弘法大師(空海)ゆかりの寺院を巡礼することですが、おすすめは、1,200㎞の道をすべて徒歩で巡る「歩きお遍路」です。

全てを回ると40日強は必要となりますので、何回かに分けても構いません。いずれにせよ、実際に約1200年前に空海が歩いた道を自分の足で歩くことで、冷静に自分を見つめる機会を得られるのです。

歩くだけでも3日もすると足の裏は豆だらけとなります。苦痛も伴いますが、山の中や海沿いを歩き続けると「弘法大師様と二人で巡礼している」という不思議な感覚によって心が洗われます。

お遍路には、祖先の供養、自身や家族のための健康祈願、自分探しなど様々な目的を持って、若者から定年退職者まで様々な人が訪れています。そうした普段、会社で接する人とは異なる人たちと話をしたり、「お接待」と呼ばれる地元の方と交流し感謝することも、寛容な考えを持つことに役立つのではないでしょうか。

不祥事問題で心身ともに疲弊している経営トップから日々の仕事のプレッシャーや会社の人間関係に悩む社員まで、自分を見つめ直したい方は、ぜひ一度、試してみることをおすすめしたいと思います。きっと正しい解決策が見出されると思います。

和泉 美治