任天堂(7974)の株価が好調です。2017年3月に発売された新しい家庭用据置型テレビゲーム機「Nintendo Switch」も下馬評を覆し、大人気です。

6月22日には任天堂から「『Nintendo Switch本体』品薄のお詫びとお知らせ」がリリースされています。その中で、発売当初より国内市場全体で品薄状態が続いていることのお詫びと、子供たちの夏休みに入る7月、8月には「Nintendo Switch スプラトゥーン2セット」の継続出荷も含め、出荷量を増やしていくとしています。

今回は、なぜ株式市場での任天堂の評価が一変したのか、また今後は同社についてどんなポイントが注目されていくのかについて見ていきたいと思います。

Nintendo Switchの発売された2017年3月期が業績の底か?

任天堂がNintendo Switchの発売を開始した2017年3月期の売上高は4,890億円(対前年度比▲3%減)、営業利益は294億円(同▲11%減)と、元気がなさそうに見えます。

ただ、Nintendo Switchの販売が通年で貢献する2018年3月期は売上高が7,500億円(同+53%増)、営業利益が650億円(同+121%増)と同社は予想しています。

任天堂側の予想の内訳を見ると、ニンテンドー3DSのハードの販売台数を2018年3月期は600万台(同▲17%減)である一方で、Nintendo Switchのハードの販売台数は同1,000万台(同3.6倍)と急増が予想されています。

また、Nintendo Switchでは、ソフトの販売本数が2018年3月期は3,500万本との予想が示されており、収益性の高い自社ソフト(通称ファーストパーティー)の比率が高まれば利益への貢献も期待できます。

Nintendo Switchの販売動向次第という前提はありますが、任天堂は業績の底打ちを予測し、Switchの人気ぶりから業績回復の実現可能性が高まっている状況にあると言えるでしょう。

任天堂の株価の歴史とは

任天堂への株式市場における期待値の高さはどこから来るのでしょうか。それは任天堂の株価のボラティリティにあります。

任天堂の場合、ゲーム機(ハード)が普及し、それにともなってソフトの販売数量が増加することで利益が拡大し、同時に株価が大きく上昇することがあります。

過去を振り返ると、ニンテンドーDSやWiiの販売が好調だった2007年には株価が7万円を超えることもありました。投資家の中には、任天堂が新しいゲーム機を販売し売れ行きが好調であれば、過去のような利益水準を再び期待できるのではないかという思惑もあるでしょうし、同時に株価も上昇するという目論見もあるのではないでしょうか。

ちなみに、6月30日の終値は37,680円です。

10年前と今は何が違うのか

先ほど、2007年には業績が好調で株価が7万円を超えていたと指摘しましたが、10年前と今は何が違うのでしょうか。

一言でいうと、2007年にはスマートフォンが今ほど普及していませんでした。アップルのiPhoneが登場したのが2007年で、iPhone 3Gが販売されたのが2008年です。

つまり、任天堂からしてみれば非常に良好な業績を実現した時期と今では経営環境は全く異なるのです。実際、任天堂もここまでスマートフォンなどで展開されるゲームアプリとユーザーの時間の取り合いをしてきたということも否定できません。

とはいえ、任天堂も最近はスマートフォン向けのアプリにこれまで以上に積極的になってきています。たとえば、2016年7月の「Pokémon GO(ポケモンGO)」の世界での爆発的な普及は記憶に新しいところです。

ポケモンGOは任天堂の持分法適用関連会社である株式会社ポケモンが運営を行っています。したがって、任天堂が直接運営しているビジネスとは言い切れませんが、ポケモンGOは収益に大きく貢献しています。

2017年3月期の営業利益が294億円であったことは先にも触れたとおりですが、株式会社ポケモンの収益を一部含む持分法による投資利益は203億円にも及びます。営業利益に近い金額を、持分法による投資利益として稼いでいることになるわけです。

任天堂の今後は盤石なのか

では、Nintendo Switchの販売好調が伝えられる任天堂の将来は盤石なのでしょうか。