2022年11月11日に発表された、株式会社ツナググループ・ホールディングス2022年9月期通期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ツナググループ・ホールディングス 代表取締役社長 米田光宏 氏
マーケットリバー株式会社 司会進行 市川祐子 氏
2022年9月期決算説明会
市川祐子氏(以下、市川):みなさま、こんにちは。マーケットリバー株式会社の市川祐子と申します。ツナググループ・ホールディングスの決算説明会を動画で行うということで、私が司会進行を務めます。 本日は会社概要、決算ハイライト、2022年9月期の通期業績、来期の業績予想について、米田社長にお話しいただきます。よろしくお願いいたします。
米田光宏氏(以下、米田):代表取締役の米田です。よろしくお願いいたします。
会社およびサービスの概要| 会社概要
市川:まず、会社概要です。ツナググループ・ホールディングスは2007年に設立した会社で、所在地は東京です。
会社およびサービスの概要| 経営メンバー
市川:経営メンバーについてです。創業の経緯や設立の思いについて、ご説明をお願いします。
米田:私はもともとリクルートという会社に在籍していました。今もそうですが、リクルートグループは求人広告、採用業界のトップカンパニーです。しかし、そのトップカンパニーであっても、現在はなかなか人を集めることができない人手不足の時代です。
私が開業した2007年は有効求人倍率は1倍を超えるくらいでしたが、職種別では飲食店のホールスタッフは3.3倍から4倍くらいの倍率でした。つまり、1人の店長が飲食店のホールスタッフを採用するのには4倍の労力が必要になります。
そのような状況では、さまざまな求人の組み合わせが必要です。例えば、郊外のランチだけのお店であれば、主婦の方など昼だけ働きたい方に働いてもらうのが一番です。それならば、地元の折り込みチラシで採用できることもあります。
市川:大手企業の商品でカバーすることが難しいケースもあるのですね。
米田:大変な人手不足の状況では、そのような求人の組み合わせが必要なこともあります。
また、単純に雇用するだけではなく、繁忙期だけであれば、派遣スタッフにお願いすることもあります。つまり、採用だけでなくすべての手法をうまく組み合わせることが必要で、結果としてそれが採用成功につながります。プロダクトを販売するのではなく、クライアント側に立って最適な採用ポートフォリオの提案へのニーズが今後高まっていくと考え、当社を設立しました。
市川:お客さまの立場に立って採用のポートフォリオを構築することを考えて、「自分の会社を作るしかない」と思い至ったということですね。
米田:そのとおりです。A社という会社に在籍していると、B社の商品を取り扱うことはできません。例えば、人材の定着を支援するサービスがあるとします。そのサービスと人が必要になると広告を出す、といった求人広告のビジネスは両立しません。人材が定着すれば広告は出さないためです。
市川:求人広告を出すのは採用の時だけですから、矛盾が生じてしまいます。そこで「本当にお客さまのためなのか」と考えるわけですね。
米田:とはいえ、1つの企業に勤めるということは、いかなる場面でも自社の商品を提供するということですし、他社商品を案内することは利益相反になります。そこで、独立というかたちをとって、世の中すべての採用手法を組み合わせるポジションを獲得することにしました。それが起業した背景です。
市川:世の中やお客さまのためにと考えた結果、起業されたということですね。
会社およびサービスの概要| 企業理念・経営理念
市川:起業の経緯がどのように企業理念につながったのかをお聞きします。「つなぐ、つなげる、つながる。」という企業理念と、経営理念である「採用市場のインフラになる」について、詳しくお聞かせください。
米田:企業理念の「つなぐ、つなげる、つながる。」についてご説明します。実は、我々には競合が存在しません。世の中のあらゆる手法を組み合わせてお客さまに提供するサービスだからです。競合があれば、その競合商品をその組み合わせの中に入れられなくなってしまいます。
我々はいわゆる黒子として、あるお客さまとあるサービスとをつなぎ、サービスとサービスをつなげることによって、採用というつながりを実現する。それが我々の理念につながっています。競合ではなく「共働」です。
あるクライアントの採用を成功させるために、世の中すべてのサービスをつなげ、採用成功を実現します。これが我々の理念である「つなぐ、つなげる、つながる。」という言葉に集約されています。
現在、我々が支援している中では、人の採用ではなく配膳ロボットをご紹介することもあります。
市川:人の採用にとどまらないということですね。お客さまの最適解は人ではなくロボットでもかまわない、ということも含め提案されているのですね。
米田:そのとおりです。「人を採用しないほうがよいのではないでしょうか?」ということも1つの提案です。
市川:それは本当にありがたいですね。
米田:創業以来、我々は日本国内で、チェーン店舗を展開する多くの大手企業と取引しています。従業員数約500名以上の企業で330社ほどです。また、リテールと呼ばれる個人経営のみなさまを合わせると、2万社ほどと取引しています。そのように幅広くお付き合いできているのは、ポジションが評価されているためだと思います。
市川:そのような意味で「採用市場のインフラになる」「低生産性を解決する」「採用・雇用成功を実現」し、さまざまなリソースの問題を解決することが、御社が目指すところなのですね。
米田:そのとおりです。顧客企業の方々についても、時代によって求めるものが違います。
市川:ロボットの紹介などはまさにそうですね。
米田:さらに、市場の変化や働く方の就業観の変化もあります。1つの会社で定年まで勤める方だけでなく、さまざまな働き方があります。個人事業主として働く方や、副業・兼業する方も多くいます。そのような変化にしっかりと対応することが、なくてはならない存在に近づく一歩だと考えています。
会社およびサービスの概要| 社会課題解決への対策方向性
市川:社会課題について、もう少し深堀りしていきます。スライドは、ツナググループ・ホールディングスが以前から開示している社会課題についての資料です。日本では2030年に644万人の人手不足が予想されていますが、ここにはいろいろな解決策があります。
例えば、スポットワーカーや副業の増加、外国人の採用などです。このような対策について、御社が特に着目していることや、課題として取り組んでいることなどをお話しいただけますか?
米田:現在、日本の大きな社会課題として顕在化しているのが人口減少による人手不足です。スライドに示しているとおり、2030年には644万人の人手不足になります。これは人口ピラミッド的にも明らかです。
我々はこの課題に対して、しっかりと向き合っていきたいと考えています。その対策の1つが、「対策1」で示している働く場所や回数を増やすことです。特にこの対策のために、我々はサービスを提供していきたいと考えています。
市川:労働力人口の減少は、日本の一番の問題だと思います。働く場所や回数を増やす、ということは、例えば先ほどのお話のように主婦が隙間時間に働くことや、あるいは昼と夕方に別の場所で働く、といったことですか?
米田:そのとおりです。私が社会人になった1993年は、アルバイトの月間平均労働時間は100時間くらいでした。それが最近の調査では72時間くらいになっています。
実は2002年以降、平均賃金はずっと上がっており、最近も最低賃金は約30円上がりました。それに比べて、非正規雇用者の年収は上がっていないという社会問題があります。
これは矛盾していますが、その原因は働き控えが多くなっているからです。例えば、構造上、103万円や106万円といわれる年収の壁があります。具体的には、扶養控除や家族手当、社会保険加入ラインの関係で、どうしても働き控えの状況が生まれるのです。
市川:年末の大変忙しい時期に、働く時間がある人に働いてもらえない、ということですね。
米田:こちらも最近の調査ですが、いわゆる追加労働希望者の方々はおよそ200万人いるようです。この200万人という数字は、644万人の人手不足を解消できる有効な解決策だと思います。働く回数を増やすことができれば、200万人の方が労働市場に出てきてくれます。
さらに、非正規雇用といわれるアルバイトやパートの方が、1993年あたりの時期と同じように100時間働いてくれれば、労働力不足という課題は解消されるのです。そのためには細切れ(短時間)の求人情報がたくさん必要です。
正社員であれば年に1回の入社や契約更新などが必要なだけですが、アルバイトやパートの場合は日々仕事を繰り返す中で労務問題が発生します。
市川:管理する側も大変ですね。それに日替わりで仕事があるとすると、働く側も自分の労働状況を管理するのが難しいですね。
米田:そこで我々は、スポットワークビジネスとして、現在さまざまなサービスを展開しています。そのサービスを強化することによって働く場所や回数を増やします。それが働く方の年収を増やし、追加労働希望者を減らすことになります。雇用者にとっては忙しい時だけ人をきちんと確保できます。その結果、生産性が上がるのです。
市川:生産性の上昇についても日本の課題ですね。先ほど女性の雇用について少しお話がありましたが、これからはシニア世代が非常に注目されると思います。現在、団塊の世代が70歳くらいとなり、その下の世代もまだまだ元気です。
働くシニアを増やすべき、と言われていますが、意外と適した仕事がないといったことも聞きます。そこについても、御社の取り組みが効果的なのではと思います。
米田:まず大前提として、1960年生まれの方のおよそ160万人が、3年後の2025年には定年を迎えます。現在働いている1960年生まれの方が約80万人いる中で、その方たちは正規雇用からパート・アルバイトとして働き始めるわけです。
今までホワイトカラーで働いてきた方に対し、職種のマッチングにはいくつかの壁があります。しかし、人手不足という状況ですので、仕事内容を分けて募集するなどします。
例えば、「コンビニスタッフ」という言い方は日本だけで、こちらは職種名ではありません。レジスタッフもいれば、清掃スタッフ、棚出しのスタッフもいます。それを、マルチに行うことに長けているのが「コンビニスタッフ」で、その名称で求人募集をしても、職種のマッチングがなかなか難しくなります。
市川:おっしゃるとおり、「コンビニスタッフ」の業務は幅広く、見ていて難易度が高いと思います。
米田:これから先、定年を迎えたシニアの方が働く状況が増えてくることを考えると、例えば、サービス業に従事する方においては「コンビニスタッフ」などと一括りにするのではなく、接客が得意な方はレジスタッフ、人前に立たない作業で自分の時間をお金に変えたい方は、棚卸しスタッフとすると効率的です。
そのように分けることが、社会参画のハードルを下げていく対策にもなります。我々はそれを、働く女性、シニアを増やす1つのコンサルティング・ソリューションと考え、提案しようと思います。
市川:今まで働くことに何かしらの壁があった、女性やシニア層の方々を支援する役割を担うということですね。また、正規雇用で働く人たちが非正規雇用に移行するという、大きく流れが変わるタイミングが2025年に来ると理解しました。
会社およびサービスの概要 | 市場規模
市川:市場の大きさを見ていきます。現在、人材業界の市場規模は10兆円。御社はその外側に新たな認識市場があると考えていて、そちらが6兆円、合わせて16兆円ということです。この部分について教えてください。
米田:人材業界のマーケットは、おそらく投資家のみなさまもしっかりと分析されていると思います。これから「スポットワーク」というかたちで働く回転数を上げ、短期・単発で働かれる方はどんどん増えていきます。この方々は給与は日払いであることを前提条件としています。明日1日だけ働いて、給料が1か月後だと、どこで働いたのかがわかりません。また、入金を確認することも難しいです。
市川:それは困ります。社会保険などの保険関係も絡んできますよね。
米田:そのとおりです。週20時間以上働いた時に社会保険のことも考える必要が出てきますが、最初は何時間まで働くかわかりません。
そのような状況も含め、我々はスポットワーカーにまつわる給与、労務、その他関連サービスをしっかりと認識し、マーケットとして捉えています。言い換えると、サービスとして展開しなければならない新たな取り組みの対象だと考えています。
市川:給与・労務サービスは、グロース市場の企業でも非常に注目されているところです。HRTechも最近伸びていますが、隙間時間で働く人たちを支える社会保険や労務サービスはまだないのではと思います。今のお話を聞いて、確かにニーズがあると思いました。
SIも5兆円とありますが、こちらはどのような意味ですか?
米田:法律や労務管理ツールなどさまざまなものを含め、社会の仕組み自体が、1日8時間、週5日働く正規雇用に対応しています。では、そのような非正規雇用の方々が世の中に出てきた時に、雇用者が何をしなければならないかというと、まず仕組みそのものを変えていかなければなりません。
仕組みそのものを変えていく時には、DX、テクノロジーを活用します。例えば、正社員だけならば年1回の年末調整、月1回の給与支払いだったのが、非正規雇用では月30回の給与支払いになるとして、労務と経理の人員を30倍に増やすのかという話になりますが、土台無理な話です。
ここで、DXが必要になってきます。我々が、パートナー企業が持つそのようなサービスをお客さまに販売したり、オンボーディングのためにお客さまの基幹システムと、それらのサービスをつなぎこむための開発を行ったりします。そのようなことも、マーケットの1つになっていくと考えています。
市川:まさに「ツナグ」ですね。大きいマーケットになりそうですし、まだ誰も着手していないことですよね。
米田:想定していないと思います。今後、HRTech企業が出てくる中で、このマーケットで新たなサービスが次から次へと出てくると思います。我々はそのサービス自体を作るというより、お客さまに合ったサービスを目利きし、それをお客さまとつないでいきます。つないでいくところに、オンボーディングという大きなマーケットがあるということです。
我々はBPOというマーケットにも進出しているため、その中でもしっかりと市場として捉え、成長の1つのツールにしたいと考えています。
市川:全体で16兆円市場ということで、これからどんどん取り組みを進めていくのですね。楽しみです。
会社およびサービスの概要 | 私たちの強み
市川:ツナググループ・ホールディングスの強みは、「独立性と公平性、お客様に最適なサービスを提供できるポジション」です。独立性については先ほど少しお聞きしましたが、優位性のご説明をお願いします。
米田:先ほどお話ししたとおり、ポジショニングとしては「競合」ではなく、「共働」するということです。我々は、あらゆる企業と企業をつなぎ、雇用企業とサービスをつなぎ、人と雇用企業をつなげる役割が独自ポジションだと認識し、そこが1つの優位性だと考えています。
もう1点は、ただコンサルティングするだけではなく、ソリューションを持っているところです。簡単に説明すると、「候補者から応募のメールが来ても、1日以内に返信しないと違うところへ行ってしまいます。きちんと対応しましょう」というのがコンサルティングです。
一方、ソリューションは、我々がお客さまの代わりにメールの受付対応を行い、1日以内に必ず応募者と面接設定までやり取りするものです。したがって、コンサルティングにとどまらず、ソリューションまで提供することが我々の大きな競争力、強みであると考えています。
会社およびサービスの概要 | 取引実績
市川:お客さまとの取引実績です。スライドに記載のとおり、有名な企業ばかりです。セブンイレブン・ジャパンや大創産業、ユニクロなど、多くの店舗を抱えている企業とも取引されており、人材サービス産業もたくさんあるということで、幅の広さに非常に感銘を受けました。
会社およびサービスの概要 | ツナググループの売上推移
市川:スライドに、これまでの売上推移をグラフで示しています。CAGR31パーセントということで、一番大きな成長要因と、コロナ禍の前後でどのように変わったかを教えてください。
米田:一番の背景にあるのは、圧倒的な人口減少です。
市川:やはり、人口減少が変革のドライバーなのですね。
米田:そのとおりです。人手不足の現在、日本の約75パーセントの事業を支えるサービス業の構成人員は、非正規雇用者といわれる現場人材の方で、いわゆるアルバイト、パートの方々です。
その方々の人手不足が、まさに我々の成長の背景にあると考えています。「なんとか人を集めたい」という部分、経営課題として採用課題が掲げられていた15年だったと思います。
市川:経営課題イコール採用課題ですね。
米田:また、新型コロナウイルス感染拡大という外的要因が、国内の採用マーケットにどのような影響をもたらしたかというと、ゲームチェンジと言いますか、ルールチェンジです。例えば新卒採用においては、コロナ禍前は、いわゆるナビ媒体と言われるところに広告を出し、説明会場にたくさんの人を集めることが重要でした。
今はそのようなシーンは少なく、学生に、ダイレクトに「当社の話を聞いてくれませんか?」というサーチの手法になっています。
市川:広告でのアプローチから、ダイレクトアプローチに変わっているのですね。
米田:プロセス自体が大きく変わっているコロナ禍で、そのようなゲームチェンジが行われたと感じます。その中でお客さまの経営課題が、採用課題だったところから、もう1歩進んで生産性改善課題となっています。
経営課題は採用だけではなく、「いかに生産性を改善していくか」というところが、このコロナ禍で目の前に出てきた課題です。「採用」というアクションを通じて、生産性をいかに改善していくかという課題に対するニーズが増えていますし、明らかになってきたと感じています。
市川:コロナ禍の影響が強かった時は外出制限などがあり、むしろ非正規雇用者は減らされる側にありましたが、ここに来て経済が回復し、移動需要が戻ってきています。
そうなると、ただ単にもとに戻るのではなく、生産性を改善しつつ、さまざまな採用手法を駆使して、女性やシニアなどを含めて採用につなげなければなりません。そこに御社がうまくアプローチできたことが、今回の業績の回復につながったということですね。
ハイライト
市川:2022年9月期の通期実績は非常に好調だったということですが、ポイントの解説をお願いします。
米田:2022年9月期は、売上高127億2,100万円、前年同期比プラス15.4パーセントの増収でした。営業利益に関して、2021年9月期はコロナ禍の影響が非常に大きく赤字となり、我々だけではなくお客さまも大変でした。その赤字決算から、今期は前年同期比で3億2,000万円の増益というリバウンドを果たし、新たな市場ニーズへの対応が一部できたと考えています。
市川:営業利益の大幅な回復に加え、EBITDAは約2倍ということで、2022年9月期は非常にすばらしい決算でした。今年度に当たる2023年9月期も、非常によい業績予想ですね。
米田:売上高は147億円、成長率はプラス15.6パーセントと、引き続き2桁成長を目論んでいます。営業利益は、創業来最高益の3億3,000万円という予想を開示しています。
市川:前年同期比で約50パーセント増と、今期も非常に好順な業績を予想されており、まさに採用市場のインフラ企業を目指して努力されています。
2022年9月期 通期業績 | 業績サマリー
市川:2022年9月期の通期業績です。売上高は前年同期比15パーセント増で着地しました。当期純利益が特に大きく、6億円以上改善しました。
2022年9月期 通期業績 | 売上高推移
市川:四半期ごとの売上高の推移です。2021年9月期の第3四半期から、6四半期連続で増収しています。
2022年9月期 通期業績 | 売上高推移
市川:売上高の内訳です。特に「RPO」「DXリクルーティング」「スポットワーク」、この3つが売上高の成長を牽引しました。
米田:コロナ禍の後のマーケットの変革に我々は集中し、また特化していますが、やはりDXが採用業務にもたらす変化は大きく、求められるサービスとして非常に大きく伸長しています。
また、1日8時間働くだけでなく、1時間の職場を3つ掛け持つような「スポットワーク」という新たな働き方があります。働く場所と回数を増やしていく就業感の変化や、新たな雇用の在り方が、「スポットワーク」の成長率につながっていると考えています。
市川:「DXリクルーティング」については、前年の第1四半期に比べると、2倍以上になっており、非常に有望な事業だと感じました。
2022年9月期 通期業績 | 営業利益推移
市川:四半期別の営業利益は、さすがにコロナ禍は厳しかったようですが、現在は7四半期連続の黒字です。
2022年9月期 通期業績 | セグメント別業績
市川:セグメント別の業績です。ヒューマンキャピタル事業は好調なRPO領域、DXリクルーティング領域、セグメントメディア領域の3つが入っていますが、2022年9月期第4四半期においては、売上高が前年比でおよそ27パーセント増となっており、利益も十分に増えています。
一方で、スタッフィング事業の人材派遣・紹介領域、コンビニエンスストア経営領域について、売上はかなり回復しましたが、まだ少し赤字です。どのようなところが課題で赤字になっているのでしょうか?
米田:スタッフィング事業の人材派遣の領域は、2022年2月に新規事業としてスタートしました。人手不足の中で「直接人を派遣してほしい」といったニーズが多い状況で、お客さまのそのような声にお答えすべく、新規事業としてスタッフィング事業をスタートし、今まさに立ち上がっている最中です。投資領域としては赤字になっていますが、当期中には、十分に黒字転換させていきたいと考えています。
市川:先行投資を行っている領域ということですね。
2022年9月期 通期業績 | 貸借対照表
市川:バランスシートです。2022年9月期は、業績が改善したことにより、自己資本比率が前年の18.1パーセントから27.5パーセントに増加しました。これは決算短信に記載の数字で、スライドにはありませんが、かなり財務基盤が安定化しました。
米田:本業の事業で黒字化しているのが一番大きいポイントです。またこのたび、一部の固定資産であった我々のメディアをパートナー企業に売却したことにより、財務体質が改善しました。
市川:事業だけではなく、保有している資産の整理やポートフォリオの改善が行われた結果、このバランスシートの内容になっています。
2023年9月期 業績予想 | 市場環境の変化
市川:2023年9月期の業績予想です。まず、市場環境の変化から教えてください。
米田:思い起こすと、新型コロナウイルス感染症の流行前に新聞紙上で一番扱われていた話題は人手不足についてでした。例えば、コンビニエンスストアでの24時間営業も夜に人手が不足し、回せないのでオーナーが大変だという話題がありました。
あの時の有効求人倍率はおよそ1.63倍でした。その時の飲食業界のスタッフの有効求人倍率は7倍まで上がりました。それがコロナ禍の影響で1.04倍まで一気に落ちました。そして、直近の有効求人倍率は1.34倍です。おそらく来年度中には、この1.63倍に近い数字まで上がると思います。
今後も人手不足は、より顕在化してきます。そこはマクロで見ても、生産年齢人口は減少していき、人手不足感を短期的になくす手立てはないため、我々もお客さまの採用支援を十分に続けていきたいと考えています。
市川:生産年齢人口の推移は、スライド右側のグラフです。どんどん少なくなっていき、超採用難になると予想されていますが、そこに御社の市場があるということですね。
2023年9月期 業績予想 | 通期業績予想
市川:通期の業績予想です。売上高は前年同期比15.6パーセント増で、高い成長を計画しています。一方では、投資を行うということですね。
米田:売上高は引き続き2桁成長を見込んでいます。
今回の営業利益の予想は53.5パーセント増と考えていますが、並行して先々に向けて十分に投資することにより、持続的な成長を実現していきたいと考えています。
市川:投資を行いつつも、売上高以上の利益成長を果たし、かつ長期的な成長を目指した根本的な強みを作る人的投資やシステム投資に注力されるということですね。
2023年9月期 業績予想 | 通期業績予想 (売上高)
市川:通期業績予想、売上高の内訳について教えてください。やはり「RPO」「DXリクルーティング」「スポットワーク」が中心になるようですが、ポイントを教えていただけますか?
米田:「RPO」「DXリクルーティング」「スポットワーク」に関しては、マーケットのメガトレンドに十分にお応えすることをいわゆる業績予想として、反映しています。また、投資事業はこの当期の中で、売上成長を実現したいと考えています。
2023年9月期 業績予想 | 通期業績予想 (費用)
市川:通期業績予想の費用です。私は「投資するにもかかわらず利益率が上がるというのは、どのようなことなのか?」と疑問に思いました。御社ならではの工夫をおうかがいしたいと思います。
米田:我々は上場企業であり、利益率を上げることは、やはり投資いただいている株主のみなさまへのある種の責任でもあると考えています。いったん下降している時期もありましたが、株主のみなさまとのお約束を十分に果たした上で、未来に向けて思い切った投資を行います。
特に今回は、人的資本に思い切った投資をしていきたいと考えています。我々の主軸であるコンサルティングとソリューションを人に対して同時に行います。強力な投資施策に人的投資を加えることにより、持続的な成長を実現していきたいと考えています。
市川:人的資本の中には、人件費、教育費、採用費、委託費などの、人にまつわる費用が入っています。事前に、ツナググループ・ホールディングスのお客さまの声を動画で拝見しましたが、その言葉の中に、御社の社員一人ひとりの名前を挙げているケースがたくさんあり、クライアントの人事部の一員のように働いていることが、御社の強みだと思いました。
まさに、この人的資本への投資が、御社の長期的な成長を支えるものだと思いますし、本当に期待できると感じています。
2023年9月期 業績予想 | ツナググループの売上推移
市川:2023年9月期まで含めた売上高の推移です。コロナ禍の影響は、むしろピンチがチャンスになり、人材市場の拡大と価値観も含めた多様化が追い風になっています。いろいろなポートフォリオは持っていますが、特に需要が高まる領域への選択と集中により、再成長へつなぐということでしょうか?
米田:そのとおりです。
2023年9月期 業績予想 | 株主還元について
市川:最後に、株主還元についておうかがいします。今回、復配されましたが今後の配当の予想とスタンスについて、株主の方々にメッセージをお願いします。
米田:我々が、世の中になくてはならない存在を目指すのであれば、やはり持続的な成長が、前提になってくると考えています。株主のみなさまとも、長期的観点できちんとお付き合いしていきたいと考えているため、配当という、いわゆる株主の方々への施策は、我々にとって非常に優先順位の高いものと考えています。
今回、年間配当金予想を8円としたのもその一環で、きちんと長い目線の中で、ご支援いただく分を配当というかたちでお返ししたいと思っています。
市川:2021年9月期が苦しい状況だったために配当は0円でしたが、2022年9月期で5円に上げ、そして次は8円です。将来への成長を行いつつも、配当は継続、むしろ増やすことで還元していくのですね。
米田:株主のみなさまとは、ともにこの事業の成長を分かち合うことができると考えています。
米田氏からのご挨拶
米田:日本国内の社会課題である人口減少・人手不足に、我々はしっかりと向き合っていきたいと考えています。株主のみなさまにおかれましても、長い目線でのご支援を引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。