2017年6月12日、上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」が出産したという報道が全国を駆け巡りました。実はシンシンは2012年7月にも出産したのですが、その時生まれた赤ちゃんは生後わずか6日でこの世を去ってしまいました。5年ぶりの出産となった今回はシンシンが子育てする様子も見られており、今度こそ無事に育ってほしいと祈るような気持ちでいる方も多いのではないでしょうか。
実は上野だけじゃない?パンダが一番多い動物園は?
現在上野動物園にいるのは、今回生まれた赤ちゃんの両親であるオスの「リーリー」とメスの「シンシン」です。その他、和歌山のアドベンチャーワールドで5頭、神戸の王子動物園で1頭のパンダが飼育されています。
こうして見ると「あれ?パンダってそんなにいたんだ」と思う方がいらっしゃるかもしれません。ちなみにアドベンチャーワールドでは、飼育していたパンダのうち3頭が今月に入って将来の繁殖のために中国へ旅立ったばかりで、ついこの間までは8頭が暮らしていました。また、パンダの赤ちゃんも2014年12月に2頭、2016年9月にも1頭誕生しているのですが、その時の報道は今回の上野のような熱の入り方ではなかったように思います。
日本の中心・東京におけるパンダ誕生のインパクト。波及効果を株式市場も期待?
ジャイアントパンダは日中国交回復を記念して1972年に上野動物園に「カンカン」「ランラン」が来日すると、その愛くるしい姿がたちまち人々の心をつかみ、大ブームを巻き起こしました。連日パンダを一目見ようと多くの来園者がつめかけたことで、上野動物園の年間入園者は700万人を超える年が続いたといいます。
東京動物園協会の資料によるとこの数年の年間来園者数はおおむね300万人~400万人の間で推移しているようですが、今回生まれた赤ちゃんが無事に育ち、一般公開までこぎつければパンダブームが再燃し、来園者増も期待できそうです。
上野動物園への来場者が増えれば当然周辺店舗などへの波及効果が期待できます。近年は訪日観光客も増えているので、相乗効果もありえそうです。こうしたことは株式市場においても期待となって顕著に表れます。もっとも端的な例は上野に旗艦店を構える中華料理の東天紅(8181)とフランス料理の精養軒(9734)の株価でしょう。両社ともに6月12日のパンダ誕生のニュースの後、株価が急伸(9日の終値と12日の高値を比べると東天紅は+38%、精養軒は+11%)。これは、パンダに関するニュースが飛び交うたびに市場で繰り返されてきた動きでもあります。
パンダ来園から6年。苦しい局面を打開する契機となるか
東天紅は1961年、上野の不忍池のほとりに第1号店が開業。地上8階、地下2階、客席数3千席という世界一の規模を誇る“中国料理の殿堂”としてその名を馳せました。現在は全国で約20店舗を運営しているほか、2015年には旗艦店である上野本店を建て替え、婚礼事業にも注力しています。上野本店やオンラインショップではオリジナルボックス入りの「パンダ万頭」や「パンダ月餅」が販売されており、いずれもパンダの赤ちゃん誕生のニュース以来、買い求める人が増えているといいます。
一方の精養軒は上野公園内に旗艦店の「上野精養軒」を構えるほか、上野公園内の美術館などを中心に複数の店舗を展開するフランス料理の老舗です。これまでにもパンダ来園時には特別メニューなどを展開するなど、パンダとともに歩んできた歴史がうかがえます。
振り返ると、両社とも2011年2月のリーリー、シンシン来園直後には東日本大震災が発生して事業に影響を受けており、直近でも東天紅は4期連続の営業赤字、精養軒は5期中4期で営業赤字となるなど、ここしばらくは苦しい展開が続いています。もしかすると今回生まれたパンダの赤ちゃんに寄せる期待は今一番大きいかもしれません。
まとめ:今年から来年にかけての熱いブームに期待したい
母乳を飲んでいる姿が確認されるなど、パンダの赤ちゃんの様子は現状安定しているとされています。2016年9月にアドベンチャーワールドで生まれた赤ちゃんは2017年1月末から一般公開されています。上野動物園の赤ちゃんもこのまま順調に育てば、今後数か月で一般公開されるのではないでしょうか。年末に向けての寒くなる時期と重なりますが、上野では熱いブームが続くことを期待したいところです。
LIMO編集部