日独米の株が揃って上昇した1週間
先週(2017年5月29日-6月2日)の世界の株式市場は、先進国株を中心に幅広い市場で上昇しました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースでTOPIXが+2.7%、独DAXが+1.8%、米S&P500が+1.0%、上海総合が▲0.2%となりました。
最大の注目材料であった5月の米国の雇用統計では雇用増の継続を確認しましたが、その増加ペースおよび賃金上昇率はいまひとつという内容でした。米国では製造業の景況感は良いのですが、新車販売・消費者信頼感など消費関連の指標に悪化兆候が出ていて、4月の個人消費支出コア・デフレータの上昇率も鈍化しました。以上の結果、米国の6月追加利上げはコンセンサスになっていますが、その後の利上げには慎重な見方が市場では強まっています。
これに対する市場の反応は、ドル安、債券高(長期金利低下)、株高となりました。米ドルはメキシコ・ペソなど一部を除き全面安になり、米国の10年、30年国債の利回りはトランプラリーの起点の水準までほぼ戻りました。長期金利の低下はインフレ率が高まらない欧州の独仏にもみられます。
一方、株式市場は日米欧の先進国を中心に上昇しました。企業業績の成長期待と物価上昇圧力の後退による長期金利の低下を好感していると言えます。
先週の株式市場で興味深いのは、必ずしもテクノロジー株主導ではないということです。一見ナスダック総合指数や半導体指数の高い上昇率に目が行きますが、よく見てみるとテスラは上げましたが、アップル、アルファベット、アマゾン、フェイスブックなどの上昇率は突出していません。むしろデュポン、スリーエム、マクドナルド、マイクロソフト、ジョンソン&ジョンソンなどの銘柄が大幅に上げています。また、原油価格の下落でエネルギー株が下げ、市場の価格変動率の低下から金融株が下げており、バイオテクノロジー株に復調の兆しも見えます。こうしてみると、「ポスト・トランプラリー」を模索しはじめた、ともみなせそうです。
アウトルック:世界株が「いいとこどり」を続けられるか、世界景気の足取りの確かさを確認する週に
今週(2017年6月5日-9日)は、世界景気の足取りを確認しながら、「低インフレ下の持続成長シナリオ」による株高の妥当性が試されるでしょう。相変わらず恐怖指数はきわめて低水準で市場はリスクに対して楽観的と言えますので、株高が進むほど成長期待の変化(特に鈍化の場合)に株価がより強く反応すると思われます。
そのため、米国5月製造業新規受注、4月の欧州小売売上高、4月のドイツの製造業新規受注と鉱工業生産などが重要です。もちろんECB理事会も重要ですし、トランプ政権の信任と予算教書の肉付けにも注目です。
なお、先週、5月の中国財新製造業PMIが節目の50を割り込みました。中国の物価指標と貿易収支には十分な注意を払っておきたいと思います。
椎名 則夫