東京都内に自治体のアンテナショップが65店舗も
「東京の銀座・有楽町が激戦区」というと、何を想像するでしょうか。ブランドショップや飲食店もそうですが、実は、全国の自治体のアンテナショップが集積しているのです。
全国の地域活性化活動を支援している一般財団法人地域活性化センターが2017年1月に発表した「平成28年度自治体アンテナショップ実態調査報告」によると、2016年4月1日現在、東京都内に出店している自治体のアンテナショップは65店もあるそうです。
都内のエリア別に見ると、アンテナショップがもっとも集まっているのが銀座・有楽町エリアで、20店のアンテナショップがあります。
たとえば、有楽町駅前の「東京交通会館」はまさにアンテナショップの「聖地」です。富山県、兵庫県、大分県、福岡県、北海道美瑛町、徳島県、香川県、兵庫県豊岡市、滋賀県、札幌市、静岡県、和歌山県、大阪府、秋田県などのアンテナショップがあります。
中でも、北海道のアンテナショップ「北海道どさんこプラザ」は、年間入館者数100万人以上、売上高も10億円以上と、都内のアンテナショップの中では群を抜いています。
銀座・有楽町ではこのほか、銀座1丁目の「銀座わしたショップ」(沖縄県)、数寄屋橋近く東急プラザの向かいの「銀座熊本館」(熊本県)、日比谷シャンテに近い「鹿児島遊楽館」(鹿児島県)などが人気店。
また、山形県、岩手県、福井県、石川県、茨城県、栃木県、広島県、高知県なども銀座・有楽町エリアにアンテナショップを出店しています。
再開発で注目される日本橋エリアへの出店も相次ぐ
銀座・有楽町に続いて、最近アンテナショップの出店が増えているのが、再開発で注目されている日本橋エリアです。富山県、福島県、三重県などが出店しています。近隣の東京・神田などを含めると、このエリアに約10店舗があります。
アンテナショップといえば、人通りの多い繁華街に出店されるのが一般的ですが、意外なところに出店しているケースもあります。2016年1月にオープンした奈良県の新施設「ときのもり」が立地するのは高級住宅地の港区・白金台です。1階がおしゃれなカフェ&ショップ、2階が奈良の食材を生かしたフレンチレストランになっています。
一方、福井県坂井市のアンテナショップは品川区の戸越銀座商店街の中にあります。ただし、同ショップは品川区の連携事業の一環で、2年間の期間限定です。
アンテナショップは採算度外視? 自治体はPR目的と答えるが・・・
自治体のアンテナショップの多くは、商業地の、いわゆる一等地にあります。前述した調査によれば、「北海道どさんこプラザ」のように、年間10億円以上も売り上げる店舗もあれば、年間売上高3,000万円以下という店舗もあるようです。費用対効果はどうなのでしょうか。
地域活性化センターの調査によれば、アンケートに回答した54店舗のうち、ショップの運営を、「民間・NPOなどへ委託している」と答えたのが29店(53.7%)、「第三セクター、財団、JAなどの運営または委託」と答えたのが8店(14.8%)と多くの割合を占めています。
その点では、店舗の運営のうち、人件費については、すべてを税金でまかなっているわけではないでしょうが、店舗の責任者は自治体からの出向者というところが多いようです。
ただし、一般的にはアンテナショップがテナントとして入る建物の賃料は自治体が負担しています。銀座であれば、年間数千万円になることもあります。物販だけなら赤字のショップがほとんどです。
「アンテナショップはもともと物販で黒字にするつもりはない」という声もあるでしょう。アンケートでも、アンテナショップ開設の目的として「特産品のPR」、「自治体のPR」、「特産品の販路拡大」、「観光案内・誘客」などが上位に並んでいます(複数回答)。
ただし、「特産品のPR」、「自治体のPR」といっても、その成果の定義や測定は容易ではありません。また、自治体によっては、移住やふるさと納税、企業誘致などを担当する部署がアンテナショップもやっている場合もあります。
そうなると、さらに費用対効果の判断が難しくなります。中には、ふるさと納税の税収だけで、アンテナショップの赤字分ぐらいは解消できているところもあるかもしれません。
ただし、現状は、近隣の自治体の様子を見ながら「わが県も何かしなくては」というところが多いようにも思います。
下原 一晃