4. 60代の「ほんとうの貯蓄額」って、どのくらい?

貯蓄と負債はセットにして考える必要があります。そこで参考にしたいのが、貯蓄額から負債額を差し引いた「純貯蓄額(=ほんとうの貯蓄額)」です。

4.1 60代・二人以上世帯の「借入額」

同調査で、「借入金がある」と答えた60代・二人以上世帯は全体の31.2%、「借入金がない」と答えた世帯は67.3%、「無回答」が1.5%でした。そして、無回答以外の世帯の「借入金」は、平均額:205万円(中央値:0万円)でした。

4.2 60代・二人以上世帯「ほんとうの貯蓄額」

60代の金融資産額から借入額を差し引いた、「純貯蓄額=ほんとうの貯蓄額」の平均は以下の通りです。

1745万円-205万円=1540万円

60代は、住宅ローンや教育費といったコアな出費がいったん落ち着き、定年退職金が世帯の貯蓄額を引きあげるケースも多い時期です。この世代特有の状況が、60代で純貯蓄額がいっきに増える背景にあると考えてよさそうです。

5. 60代「シニア格差」から考える「老後のお金」

今回は、60代世帯の貯蓄事情をながめてきました。

平均額でみた「純貯蓄額」の1540万円は、いわゆる老後2000万円問題の「あの金額」までにはまだ距離がありますね。

ただし、こちらはあくまでも平均値。一部のお金持ちや、贈与や相続で一時的に資産が増えたケースも含みます。みんながみんな同じ条件でコツコツと貯蓄をしてきた結果ではありません。

とはいえ、さきほど触れた「シニア格差」ともいえる二極化が起こる背景としては、現役時代の若いころからのお金に対する心構えが影響しているのかもしれませんね。

働き盛りの30代・40代のころは、教育費の準備や住宅ローンの返済といった目前の出費が家計を圧迫しがちな時期。老後の自分たちの暮らしまでイメージすることが難しくても不思議ではありません。

とはいえ、育児に仕事に大車輪!といった時期は、あっという間に過ぎていくのです。50代に入り、先輩たちのリタイヤ、親族の老いを身近で見るようになると、自分自身の老後についても考えざるを得なくなります。

家計管理の工夫、そして貯蓄を続ける根気は、生きていくうえの必須スキルといえるでしょう。加えて「お金を増やす視点」もぜひ持っていきたいものです。「預貯金+資産運用」をバランスよく組み合わせて持つことも有効な方法の一つでしょう。

ご参考

総務省の家計調査報告(貯蓄・負債編)の用語の解説によると、貯蓄とは、

ゆうちょ銀行,郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構,銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金,生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式,債券,投資信託,金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価,債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と,社内預金,勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。 なお,貯蓄は世帯全体の貯蓄であり,また,個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含める。

参考資料