世界の金融市場でリスクオンのムードが広がる
2017年4月23日に行われたフランス大統領選の第1回投票は、中道・親EU派のマクロン氏が1位、極右・反EU派のルペン氏が2位となり、両氏は5月7日の決戦投票で争うことになりました。
昨年のイギリスでのEU離脱に関する国民投票やアメリカ大統領選では、事前の世論調査とは異なる結果となり金融市場は大きく混乱しましたが、今回は調査とほぼ同じ結果であったため市場の波乱は起きませんでした。
また、第3位のフィヨン氏が決戦投票でマクロン氏を支持すると表明し、決戦投票では、マクロン氏勝利の可能性が高いとの見方が強まっているようです。
結果的に、極端な政治主張に傾かなかったフランス国民の投票結果により、「EU崩壊」などの政治リスクは大きく後退し、世界の金融市場ではリスクオン(リスク選好)のムードが広がりました。
選挙後、週前半には円安が進み、日経平均も26日の火曜日には節目の1万9,000円台を回復しています。まさに、「ありがとうフランス国民」です。
出所:フランス大統領選挙第1回投票結果、市場に安心感(ピクテ投信投資顧問)
過度な楽観は禁物、EUにはなお火種が残る
とはいえ、これでEU崩壊の危機が完全に遠のいたと考えるのは、なお時期尚早であるという見方もあることには注意が必要です。
というのは、以下の記事で述べられているように、「人の移動を自由にするシェンゲン協定への不満」や「ドイツやEU官僚に支配されていることへの不満」など、簡単には解決できない構造的な問題が残るため、EU域内の国民に蔓延するEUへの不満はすぐには解消できないためです。
5月7日に予定されているフランス大統領選の決選投票で、現在の予想通りにマクロン氏が勝利し大過なく終わったとしても、反EU勢力が拡大する流れはそう簡単に止まらないということは頭の片隅に入れておきたいと思います。
慎重過ぎる会社予想に惑わされないようにしたい
さて、いよいよ日本でも決算シーズンが到来します。そこで気になるのは、会社側が新年度についてどのような見通しを発表するかです。
現状では上述の欧州リスクに加え、中東・北朝鮮を巡る地政学リスク、トランプ政権の政策遂行リスクなど多くの政治関連のリスクが残るため、予想外に慎重な会社予想が発表されることも考えられます。
とはいえ、最近のマクロ指標等から米国景気は依然として好調と見られること、以下の記事にあるように中国景気は少なくとも秋の中国共産党大会までは政府目標を超える成長が続く可能性が高いことなどから、外部要因の不透明さに基づいた過度に慎重な会社予想に振り回されることは、あまり得策とは言えません。
このような時こそ、『森を見て木を見ず、木を見て森を見ず』という有名な投資格言を思い出し、慎重過ぎる会社予想に惑わされずに、相場のトレンドと個別企業の”稼ぐ力”をバランスよく見極めていきたいものです。
出所:堅調な中国景気はいつまで継続するのか? 定性的な視点から(投信1)
LIMO編集部