2022年3月12日にログミーFinance主催で行われた、第33回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第2部・シナネンホールディングス株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:シナネンホールディングス株式会社 取締役 間所健司 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント/ナレーター 飯村美樹 氏

アジェンダ

間所健司氏(以下、間所):本日はご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。シナネンホールディングスの間所でございます。当社の業務内容を詳しくご説明させていただきます。

本日は、5つのアジェンダでご説明します。まず、会社概要です。そして、当社はさまざまな事業を行っていますので、各事業の内容、それから当社の中長期戦略とそのトピックス、最後に今期3月末の予想と配当方針についてご説明します。

会社概要

間所:会社概要です。当社は1927年創業で、今年4月で95年目になります。老舗のエネルギー商社というポジションです。グループ会社は、連結子会社が38社、関連会社が13社になります。

事業内容としては、LPガス・石油・電気などのエネルギーの販売事業を中心として、そのほかに住まいと暮らしのサービスなどの事業で構成される企業グループになっています。

グループ事業の全体像

間所:当社は大きく分けて3つのセグメントで事業を展開しています。1つ目はBtoC事業のエネルギー卸・小売周辺事業です。ミライフ西日本、ミライフ、ミライフ東日本などの企業で構成されており、主にLPガスや都市ガスなど、さまざまな家庭向けの電力やサービスを展開しています。

2つ目はBtoB事業のエネルギーソリューション事業です。シナネン、シナネン石油といったグループで構成されています。石油類の卸売と法人向けの電力が主で、メガソーラーを6基持っている事業です。

3つ目は非エネルギー及び海外事業です。自転車事業においては、シナネンサイクルという会社で、自転車の企画・製造・卸・販売など一気通貫の事業を展開しています。

シナネンエコワークは木質チップのメーカーで、環境・リサイクル事業としてバイオマス燃料を展開しています。

シナネンモビリティPLUSはシェアサイクル事業を行っており、2019年に設立しています。

シナネンゼオミックは、抗菌剤・抗ウイルス剤のメーカーで、素材の科学の会社という位置付けになります。

ミノスはシステム会社になりますが、主にLPガスと電力の管理用システムの販売を行っています。

また、タカラビルメンほか数社で建物維持管理事業を展開しています。こちらはビルメンテナンス事業のイメージが近いかと思います。

2021年3月期連結業績ハイライト

間所:2021年3月期の業績を簡単にご説明します。売上高は2,171億円、前期比8パーセントのマイナスです。営業利益・経常利益は、それぞれ29億円と30億円で、20パーセントから37パーセントのプラスとなっています。ROEは5.5パーセントで、自己資本比率は52パーセントと、堅実な経営基盤を持っています。

スライド右上のセグメントごとの売上構成比をご覧ください。BtoB事業が半分以上を占めていますが、利益面ではBtoC事業とBtoB事業が同じくらいの比率になっています。非エネルギーの構成比は、現在10パーセントほどです。

売上高・営業利益推移

間所:これまでの10年間の業績推移をご覧いただきたいと思います。スライドの赤色の棒グラフは営業利益です。多少のブレはありますが、利益面に関してはほぼ一定で推移しています。基本的には長年安定した経営を続けてきています。

ピンク色の棒グラフは売上高です。大きく変化していますが、売上高は基本的に原油価格やプロパンの価格からかなり影響を受けます。スライドの折れ線グラフはドバイの原油価格ですが、こちらにほぼ比例するかたちで動いていると思っていただければよいかと思います。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):売上高は原油価格による変動があるということですが、御社が取り扱っている石油製品の販売数量は、この10年でどのように変化しているのかを教えてください。

間所:販売数量は、全体としては減っています。扱っている石油は大きく分けてガソリン、灯油、軽油、重油の4種類です。ガソリンについてはみなさまもご存じのとおり、ハイブリッド車やEV車により毎年需要が減少しているため、販売数量は大きく下がっています。また、最近はSDGsやESGによって工業用の重油がガスに替わっているため、こちらも減少傾向が続いています。

軽油と灯油に関しても全体的には減っていますが、軽油はインフラの建設現場の重機を動かすことに使われるため、そちらの販売に注力しています。灯油はホームセンターでの小売の販売に力を入れており、当社の中では軽油と灯油の取扱量は増えています。

LPガスの需要家比率(2020年3月末)

間所:各事業の概要をご説明します。まず、LPガス事業についてです。日本は約5,500万世帯ありますが、そのうちの約40パーセントにあたる約2,200万世帯がLPガスを使用しており、残りの約60パーセントは都市ガスやオール電化となっています。

LPガス事業のバリューチェーン

間所:当社のバリューチェーンです。基本的には卸小売事業ですので、採掘から輸送、精製までは元売で行っており、当社は大きく関わっていません。

元売から仕入・調達し、それを流通させます。当社は直販と特約店というかたちで小売販売店を間に入れているのが特徴です。LPガスはボンベの配送があるため、物流を担い、個人宅あるいは業務用のお客さまに届ける流れになっています。

事業会社・拠点数

間所:BtoC事業のLPガス事業の拠点数です。ミライフ北海道は北海道に6拠点、ミライフ東日本は東北地方を中心に27拠点、ミライフは関東エリアを中心に45拠点、ミライフ西日本は北陸・関西・中部を中心に24拠点あります。また、都市ガス事業者として埼玉県日高市に日高都市ガスという会社を保有しています。

坂本:BtoC事業の営業エリアを全国でカバーするために、ここからどんどん広げていくということでしょうか?

間所:以前は、福岡と愛媛県新居浜に拠点を持っていましたが、飛び地であるということで、いわゆる効率の悪さもありました。基本的には関西以東の中国・四国・九州以外のエリアで今後さらに展開していきたいと考えています。

お客様との接点

間所:先ほどバリューチェーンの中で販売店を経由して物流を行うとご説明しましたが、その中間の販売店で構成される「ミライフ会」を形成しています。

地域の販売店、あるいは賛助会員として1,000社ほどの会員がいます。そこでお客さまとの強力な接点の構築を目指し、販売促進や今後どのようなかたちで事業を拡大していくかなど、さまざまな情報交換を行っています。また、LPガスという危険物を取り扱っているため、保安は極めて重要な業務だと考えており、その点についてもさまざまな情報交換を行っています。

当社の特徴①

間所:LPガス事業の全体になります。直販として当社から直接供給しているお客さまが22万軒、販売店を経由して供給するお客さまが48万軒で、合わせて約70万軒のお客さまに供給しています。LPガスの数量的な取扱高は50万トンで、国内第3位というポジションです。

石油事業のバリューチェーン

間所:石油事業についてご説明します。基本的にはLPガス事業と同様の流れです。採掘から精製までは元売で行い、そこから当社が仕入れ、タンクに保管します。各地域に流通後は、直販や、サービスステーションやガソリンスタンドに販売したり、ホームセンターなどを経由して、最終ユーザーのお客さまに届けるという流れです。

全国に広がる流通拠点網

間所:石油中継基地は、以前は灯油を中心に扱っている「灯油センター」という名称でしたが、最近は軽油にも力を入れており、灯油と軽油を中心に扱う「オイルスクエア」として、全国に85拠点の中継基地を有しています。

当社の特徴②

間所:先ほど灯油に力を入れているとお伝えしましたが、灯油取扱量は150万キロリットルで、国内流通量の10パーセントのシェアを保有しています。軽油にも力を入れており、ビルなどのインフラ工事で使用するさまざまな重機用の軽油販売を強化しています。

ガソリンについては、直営店のガソリンスタンドを17ヶ所、その他の系列として88ヶ所を有しています。重油は、工業系・工場向けのボイラーなどの重油、あるいは船舶用のC重油と言われるものの販売を国内外で展開しています。

電力事業のバリューチェーン

間所:電力事業です。送配電に関しては扱っていませんが、一部発電と、小売電気事業者として小売の部分を展開しています。その中で、太陽光発電にも進出している状況です。

当社の特徴③

間所:当社の電力事業の特徴です。家庭向け電力は約4万5,000軒のお客さまにご利用いただいており、また、法人向け電力に関しては1,100軒ほど展開しています。その中でも特徴的なプランの1つとして、環境配慮型電力プランがあります。CO2を排出しないカーボンニュートラルを実現する電気を展開しており、これにはサンリオのキャラクターを活用して情報発信しています。

再生可能エネルギー

間所:発電についてです。太陽光発電に関してはメガソーラーを6基所有しており、発電量は30メガワット、つまり約1万世帯利用分を発電しています。また、太陽光パネルは、メンテナンスを実施しないと発電量が落ちるため、国内初の太陽光メンテナンスの専門会社をいち早く発足させています。

マイクロ風車発電は2020年3月に参入しており、足元では実証実験を進めています。また、韓国の大型陸上風力発電は2020年5月に参画しており、現在開発許可申請中です。

坂本:国内の太陽光発電について、現状はメガソーラー6基をお持ちとのことですが、メンテナンスの専門会社も持っているため、今後は数を増やすとなれば海外においてもチャンスがあると思います。このあたりを教えてください。

間所:まず国内に関しては、FITが始まって10年ほど経っています。セカンダリーの流通もかなり増えている中で、当社としては収益性において投資効率がよい案件については、今後も太陽光発電におけるメガソーラーを増やしていきたいと考えています。

海外に関しては日本のFITのような制度がないと、長期的な展開はなかなか難しいところがありますが、韓国やインドネシア、マレーシアといった東南アジアにおいてはまだ展開の余地があるため、さまざまな案件の中で探索しています。

自転車事業

間所:自転車事業です。自転車事業はシナネンサイクルという会社が展開しています。まずは商品企画において新しい自転車を開発しており、直近では「marie claire」というブランドの自転車を出しています。

基本的には海外、特に中国のメーカーに製造を委託する、いわゆるファブレスで展開しており、それを輸入して卸売というかたちで自転車専業の小売業者や、当社のダイシャリンという店舗で直売し、お客さまに届けています。

環境・リサイクル事業

間所:環境・リサイクル事業は、シナネンエコワークという会社が展開しています。事業内容は、建設現場の廃材、物流で使う木製のパレットなどの木くずを再生してエネルギー燃料にするとイメージいただければ一番わかりやすいと思います。

パレットなどの廃材を木質チップに加工し、主にバイオマス燃料を使って発電している電力会社に販売しており、年間10万トンを超える木質チップを提供しています。

抗菌事業

間所:抗菌事業はシナネンゼオミックという会社が展開しており、銀を使った無機抗菌剤を製造しています。原材料を調達した後、製造、販売とさまざまな家庭用品のメーカーに卸している川上のビジネスになっています。

スライドにあるように、台所用スポンジや、衣類といったアパレル系の繊維、電車の吊り革、エスカレーターのベルトの部分など、日用品からさまざまな製品にまで抗菌仕様が活用されており、国内では2番目のメーカーとなっています。

システム事業

間所:システム事業では、主力として2つのシステムを提供しています。LPガス基幹業務システムは、検針、配送、保安、販売といったLPガス事業の基幹業務を一気通貫でサポートしています。また、新電力事業者に対して顧客情報の管理システムを提供しており、顧客管理件数は全体で780万件を超えています。

建物維持管理事業

間所:建物維持管理事業として、ビル・商業施設などのメンテナンスを行っています。居住用と非居住用の2つを展開しており、非居住用ではビルあるいは商業施設の警備から省エネ提案、さらには管理人派遣、清掃、メンテナンスまで幅広く対応しています。特に特徴的なのは、病院や斎場の運営業務全般を請け負う業務です。

居住用に関しては、基本的に賃貸マンションあるいは分譲マンションになりますが、賃貸については入居者が出入りする時に必要となる原状回復の工事、あるいは、リフォーム・リノベーション、管理人派遣・清掃・メンテナンスという部分で大きく展開しています。

建物ライフサイクルコストを見ると、保全コスト面では全体の半分以上がメンテナンスに関わるコストになり、運用コスト面では当社の主力事業である光熱費といったエネルギーコストが多くなるため、建物に関する全体コストの4分の3以上を当社から提供できる体制ができるのではと考えています。管理物件数については、関東エリアを中心として約5,400件保有しています。

第二次中期経営計画の概要

間所:当社の今後の中長期的な戦略と、特にみなさまにお伝えしたい事業についてご説明したいと思います。

まずは中長期戦略です。2021年度の3月までは第二次中期経営計画の中間地点、2年目のポジションとなり、来年は最終年度の位置づけになっています。スライドのとおり、創業100周年に向けたビジョンとして、2023年度から第三次中期経営計画を実施する流れになります。そのため、第二次中計は、第三次中計において大きく飛躍するための基盤整備、挑戦の3年間と位置づけています。

基本方針:定量目標・定性目標

間所:基本方針となる目標は、まず定量目標として資本効率を重視しています。継続的にROE6パーセント以上を大きく生み出す事業構造を確立するという目標を掲げており、その中での定性目標として、資本効率の改善が重要なテーマだと考えています。また、持続的な成長を実現するための基盤整備としてさまざまな投資を実行する期間としています。

続いて、社内では風土改革と言っていますが、社員の考え方・慣習・行動様式の変革も掲げています。

シェアサイクルとは

間所:トピックスとして注目する事業についてご説明します。シェアサイクル事業は、モビリティPLUSという会社が「いつでもどこでも気軽に使える」をテーマに展開しています。全体の流れとしては、まず近くにあるステーションをアプリから検索して予約を行い、ステーションに到着後、アプリ上のバーコードや、登録している交通系ICカードなどにより鍵を開けて使っていただきます。そして使用した後は、目的地に近いステーションで返却していただきます。

貸し出したステーション以外でも、空いていればどこでも返却可能であるため、気軽に使っていただける仕組みになっています。

シェアサイクル市場規模推移・予測

間所:シェアサイクル事業について、富士経済のデータによると、今から8年後の2030年には市場規模が80億円近くまでいき、利用者数も6,000万人台にまでになると予想されています。そのため、現在の約2倍に相当するマーケット規模になると考えています。

メインプレーヤー

間所:シェアサイクル事業は、現在さまざまな会社が事業展開をしています。当社はソフトバンクのグループ会社が運営する「HELLO CYCLING」と提携しており、その1つのブランドとして首都圏を中心に「ダイチャリ」を展開しています。そのほか主力は、もう1社ありますが、国内主要事業者のうち、2社で全体の約8割を占める状況になっています。

坂本:「HELLO CYCLING」のシェアは55パーセントとなりますが、そのうち「ダイチャリ」のシェアはどのくらいになりますか?

間所:「HELLO CYCLING」の中では「ダイチャリ」が圧倒的に1位となっており、半分以上のシェアを持っているため、全体の3割くらいのシェアであると言えます。

坂本:御社のシェアということでよろしいでしょうか?

間所:そのように考えていただければと思います。

バリューチェーン

間所:バリューチェーンについてです。システム提供においては、先ほどお伝えしたように、アプリ上で「HELLO CYCLING」というサービスが動いています。当社のシナネンモビリティPLUSが行っている事業領域は、まず、ステーションと呼ばれる自転車置き場の開拓や、そこへの自転車の投入になります。

いかにステーションを広げていくか、自転車を多く置くかがポイントとなっており、その後、サービス提供を行う流れになります。

電動アシスト自転車であるため、当然何もしないとバッテリーが切れたり、パンクなどの故障が発生したりします。そのため、重要な管理業務として常日頃、アプリ経由でバッテリーの残量チェックなどを行っています。

そのほか、自転車が集中的に無くなっていないか、あるいは集中的に集まっていないかを常にモニタリングし、最適な配置と充電を継続的に行い、お客さまへ最適なサービスを提供することに努めています。

坂本:「HELLO CYCLING」について、北は岩手から、南は沖縄まで展開されていると思いますが、展開地域は御社が決めているのでしょうか? 決める時はどのように候補地を選んでいるのか、そのあたりを教えていただきたいです。

間所:基本的には「ここに展開してください」という指示があるわけではなくて、当社と「HELLO CYCLING」との協議の上で、当社としてメリットがある地域を中心に展開しています。

現時点では関東エリア、特に首都圏を中心に運営ステーションを設置し、そのほかに、一部観光地にも置いています。また、大阪などの人口集中地域が中心になっています。

坂本:用地開拓や自転車の投入も御社グループの事業領域になっていますが、自転車についても、御社のシナネンサイクルの自転車を投入するのでしょうか?

間所:現状は当社のシナネンサイクルの自転車ではなくて、ナショナルブランドの、ヤマハの自転車を主に投入しています。

今後の見込み

間所:今後の見込みですが、業界に追い風がある状況です。2017年に「自転車活用推進法」という法律が施行され、2019年には日本版MaaSの推進が始まっています。ラストワンマイル、ラスト1メートルのモビリティサービスとして、自転車が注目されてきています。

また、SDGsへの関心の高まりもあります。通常の乗り物は石油類や、ガソリン、軽油などを燃料とするのに対し、電気自転車は環境に対応しており、この点でも注目を集めています。直近数年でこの流れが活発化してきているところが、当社が事業展開した1つの理由にもなっています。

当社の規模

 

間所:シナネンモビリティPLUS内の「ダイチャリ」の市場規模については、首都圏を中心に全国2,100ヶ所の運営ステーションがあります。設置自転車数も8,200台で、できるだけ早い段階で1万台まで展開を進めています。

KPI推移

間所:KPIの1つはユーザー数で、もう1つは利用回数です。どのくらいのお客さまに使っていただき、そのお客さまにどれだけ使っていただいているかという2点について、常日頃モニタリングしています。

四半期ごとの実績において、直近の第3四半期のユーザー数は前年比で88パーセント増加しており、お客さまの登録数が倍近く増えています。

利用回数も1年前に比べると92パーセント増加し、倍近くとなっています。詳しく見ていくと、利用率よりも回数が増えている状況で、1人あたりの利用量が上がり、認知度もかなり上がってきていると考えています。

残念ながら現在はまだ赤字段階ですが、来期の黒字化が視野に入っています。

SDGsへの貢献

間所:現在、モビリティ分野での環境への対応を積極的に進めています。バッテリーの充電や、パンク等で故障した自転車のメンテナンスに対応できる拠点「エコベース」を、いくつか設立しました。

「エコベース」で使用する電力は、先ほど電力のところでお伝えした、グループ会社のシナネンが提供している環境配慮型の再生可能エネルギー実質100パーセントの電力となります。

その再生可能エネルギーをバッテリーへの充電に使うことでSDGsへの貢献もできますし、「エコベース」を作ることにより自転車自体のメンテナンスもできるため、ユーザーの利便性も向上します。

再生可能エネルギー電力については、2020年に立ち上げた「あかりの森プロジェクト」に参画し、電気料金の一部を寄付することによって、森を守るような環境保全活動を支援していきます。

DXロードマップ

間所:当社はDXを積極的に推進しており、今後のロードマップを記載しています。スライド左上の第二次中期経営計画の箇所は、先ほど中長期戦略の説明でお伝えしたように2022年度までの基盤整備の期間ですが、DX推進では基盤構築のフェーズにあたります。

この期間は、どちらかと言いますと、守りのDXに近いです。RPAの導入や、クラウド化、リモートワークへの対応、セキュリティの強化といった部分で基盤を強化し、効率化あるいは生産性の向上などを目指していく状況です。

第三次中計以降は攻めのDXにも力を入れ、事業を拡張していきたいと考えています。今データの整備を進めていますが、このデータを活用し、さまざまなかたちで生産性向上を図り、投資原資を捻出して事業拡大を進めていきます。

さらにその先のビジネスモデルを大きく変革していくことで、持続可能な経営スキームと収益源を確保しながら、成長を目指していくロードマップとなっています。

直近の取り組み

間所:2021年度の取り組みをご説明します。1つは、お客さま向けのポイントモールの構築を進めています。将来的には、LPガス事業の約70万軒にのぼるBtoC事業のお客さまも含めて、100万人規模の会員数獲得を目指しています。

当社とGMOメディアと中央電力の3社共同で、会員制のポイントモールを開発運用し、2022年度中にはみなさまが利用できるようにしていきたいと考えています。いずれは同業他社や異業種の企業を巻き込んで大きな規模で展開できればと思っています。

DX推進への取り組みのもう1つは、昨年12月に、経済産業省から「DX認定事業者」に選定されたことです。

2022年3月期通期業績予想

間所:今期の予想についてです。先般、不動産売却による特別利益のリリースもしましたが、現時点では予想を据え置いています。理由は、当社のビジネスがLPガスや灯油の需要に大きく依存しており、特に12月から2月の需要が大きく季節性変動もあるためです。

これらの需要が見えない中で予想を大きく修正することが困難なため、現状据え置きの予想としています。増収部分は冒頭でもお伝えしたように、ほとんどが原油価格やプロパン価格の上昇によるものです。

一方で減益部分は、シェアサイクル事業やマイクロ風車関連事業などの新規事業に係る先行投資や、DX推進において基盤整備に向けたIT関連投資が先行するもので、全体として増収減益で予想しています。

株主還元・配当方針

間所:株主還元についてです。基本的には配当性向30パーセント以上を目指した安定配当を計画しています。2022年3月期も、75円の配当金を見込み、現時点の予想では、配当性向は54パーセントです。

当社の配当の特徴は、期末1回の配当であることです。通常は、3月末に75円の配当としています。以上簡単ですが、当社事業全般のご説明をさせていただきました。

質疑応答:シェアサイクルの利用者層について

飯村美樹氏(以下、飯村):シェアサイクル事業に関しての多くの質問がありました。このサービスは訪日外国人の観光などで注目されたイメージが広くありますが、利用者は実際どのような方が多いですか?

間所:利用される場所については、都心部の3区の港区、千代田区、中央区というよりは、その都心部の周辺の、いわゆるドーナツ状のエリアが多くなっており、日常生活での使用頻度が非常に高いです。

通勤や帰宅時での利用が多いのですが、それ以外に病院や買い物に行く際などでの利用も多く、利用者としては主婦の方や学生の方が多くなっています。

飯村:主に観光に使われているというかたちではなかったのですね。

間所:当社の場合、観光利用はほぼなかったため、影響はなかったです。

飯村:そのため、コロナ禍でも利用者がどんどん増えていったのでしょうか?

間所:そのとおりです。特にコロナ禍では、密を避ける意味で、従来、公共交通機関を利用していた方々が当社の自転車を使うというような流れも増えており、そのようなかたちで実績が伸びてきた側面もあります。

質疑応答:ドーナツ状エリアに展開する理由について

坂本:ドーナツ状エリアに展開する理由は、人口が多いことに加えて、ステーションの設置が簡単といった状況があるのでしょうか? 

間所:物理的な要因があります。「HELLO CYCLING」は大手のコンビニエンスストアとも連携しており、コンビニの敷地に置くのですが、都心部の場合、ビルの1階などになり、置きにくいです。

駐車場があったり、敷地に余裕があるようなところでないと設置しにくいため、利用地はドーナツ状になっています。ドーナツ状と言いましても、中野区や新宿区、台東区、世田谷区等にも積極的に置いています。

質疑応答:定量目標「ROE6.0%以上」への取り組みについて

坂本:御社は、今後の成長のために資本効率を向上していこうという方針を打ち出し、「持続的に『ROE6.0%以上』を生み出す事業構造の確立」という定量目標を掲げています。この点について、2021年に実際行ったこと、また成長のための種まきという部分で実施されたことについて、教えてください。

間所:いくつかあります。資本効率の改善というかたちでご説明していますが、1つはブラジルにおけるバイオマス事業の撤退があります。

これは10年以上進めていた事業ですが、新型コロナウイルスの影響もあり、当社が目指す収益性が期待できないという判断で撤退しました。

また、先般発表しましたが、埼玉県川口市のマンションと介護施設の売却を実施したことです。これも資本効率という観点から、当社が目指す収益性が期待できないと判断しました。

一方で、DX推進における改善策として、本業のBtoB事業において、LPWA(Low Power Wide Area)の展開を積極的に進めています。これは、省電力かつ広域対応の通信技術のことで、LPガスのメーターに応用すると、電波で消費量を送信できるという仕組みです。

坂本:電気に置き換えると、スマートメーターのようなものでしょうか?

間所:そのとおりで、いわゆるスマートメーターといわれるものです。それを積極的に設置したことで、効果が2つ得られており、1つは検針する手間が省けます。

もう1つは、ボンベが何キロどれだけ使われたかという正確な消費量が毎日わかるため、ボンベが切れるタイミングで持っていけばよいという判断が可能になり、作業の効率化が図れています。このLPWAへの投資も、今期は積極的に進めました。

坂本:直営の方も代理店の方も両方使えるのでしょうか?

間所:直営から進めており、22万軒対応しています。

坂本:それをまず成長のために実施されたのですね。

間所氏からのご挨拶

間所:当社はエネルギー事業を中心に長年展開してきた老舗企業です。さらに今、さまざまなかたちで環境に配慮したエネルギーへの転換を図っており、それ以外にも新規事業を進めていますので、ぜひ注目していただければと思います。

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