2022年3月12日にログミーFinance主催で行われた、第33回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第5部・ENECHANGE株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ENECHANGE株式会社 代表取締役CEO 城口洋平 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント/ナレーター 飯村美樹 氏

株価推移

城口洋平氏(以下、城口):本日は初めて当社のことを知られた方、また、当社のことを詳しく勉強していただき、最新の情勢が知りたい方もいらっしゃると思います。特にエネルギー業界はウクライナ情勢の影響をかなり受けているため、今の状況を聞きたいという声も届いています。

そのため、まずは動画を視聴いただき、当社の概要について簡単にご説明した上で、時間の大半は最近の情勢を中心としてご説明できればと思っています。

まずは簡単に株価推移について振り返りたいと思います。2020年12月に上場してから現在までの株価推移です。スライドのとおり、昨年の夏から冬にかけて株価が大きく上昇し、最高値で1,100億円くらいにまで上がりました。これは世界において、テスラを筆頭に再生可能エネルギー関連銘柄、脱炭素関連銘柄がグッと上がり、また、バイデン政権、COPなどにより大きく盛り上がることになりました。

そのタイミングで当社の資金調達を実施したこともあり、マーケット全体における利上げ、グロース株の下落などの影響もあり、残念ながらダウントレンドに入り、今日の時点では300億円を切るかたちで大変厳しい株価となっています。

個人株主のみなさまの中には、当社の株を応援していただいたにも関わらず、大変厳しい思いをされている方も多くいらっしゃると思うため、今日は代表である私としても、いかに株価をきっちりと戻していくのか、どのような戦略で戻していくのかに関して、しっかりとご説明したいと思います。それでは動画のご視聴をよろしくお願いします。

エネルギー業界に特化した垂直型SaaS事業

動画の中でご紹介したとおり、当社のプラットフォーム事業と、電気・ガスの切替を実施するサービスについては、2016年の電力自由化から6年目、7年目を迎えるサービスとなり、売上高をしっかりと伸ばしていく局面にあります。

一方で、データ事業は動画の最後にあったとおり、EV充電が注力領域になっており、今まで培ってきたソフトウェアの技術力、デマンドレスポンスによる節電システムなどの技術力を集結させ取り組んでいきます。これは2022年こそEV元年であるとも言われている、日本においての取り組みであるため先行投資局面となっています。

売上高100億円の早期達成にむけて売上高成長を最優先

昨年の期初に「23億円にします」とご説明していましたが、2つの事業により、上場時の売上高16.6億円から76パーセントにまで成長し、昨年30億円という大台を超えました。今年もそこから前倒しで約30パーセント以上伸ばしていき、2027年までには100億円の売上を実現し、営業利益率30パーセントを出していきたいと思います。

現状、その目標に向けて順調に進んでいる一方で、今のウクライナ情勢により、足元において多少いろいろな状況の変化があるため、そのあたりについてご説明します。

日本向け輸入ガス価格は高騰

まずはプラットフォーム事業、電気の切替、ガスの切替に関してご説明します。日本に入ってくる液化天然ガス(LNG)の価格について、ロシアによるウクライナ侵攻以降、史上最高値を日々更新する状況になっています。

電力卸価格は高騰

日本には電気の販売市場がありますが、JEPXもそのような情勢を受けて、昨年の11月くらいからずっと高止まりしていた状況が一段落しました。通常は冬が終わり、だいたい3月になると下がってくるのですが、まったく下がらず、むしろさらに上がる状態となり、電力業界にとっては悪夢のような日々が続いています。

大手電力会社は全社業績下方修正

このような状況により、すべての大手電力会社は昨年末から下方修正を発表しており、10社中6社が赤字となる状況になっています。一方で、ガソリン業界については大変儲かっている状態です。ガソリン価格が上がるとガソリン業界が儲かる仕組みになっているため、逆に上方修正のような状況であり、電力は厳しく、ガソリンはよい方向になるなど明暗が分かれる状況になっています。

法人の新電力の契約数推移

法人の新電力の契約数については、過去初めてと言ってもよいような状況であり、昨年の10月から減少に転じています。これはどのようなことかと言いますと、新電力における電気の原価、いわゆる仕入れ原価が高すぎて事業を継続できなくなり、撤退することになります。もしくは、採算が合わないお客さまの契約を更新せずほとんど打ち切ると、自らお客さまをどんどん逃がしている状態が起こるため、新電力の契約数が減少する状況になっています。

消費者の電気代も高騰

一方で、消費者の電気代は昨年の1月と比べて5、6円ほど上がっており、今後はさらに上がります。家庭平均で年間30パーセントくらいはすでに上がっている状態だと思います。「30パーセントも上がると高いではないか」という声もありますが、実際は本来上がるべき値段の半分くらいしか上がっていない状況であり、その半分は電力会社が吸収しています。

お客さまに対して価格の全額を転嫁することはできないため、電力会社が半分くらい吸収した結果、大幅な赤字になっている状況です。そのような中でも、お客さまの電気料金は30、40パーセント上がっている状態であり、過去にこのようなことはなかったと言ってもよいくらいの状況となっています。少なくとも、電力自由化の2016年以降において、過去一度もなかったような状態が起こっています。

「エネチェンジ」へのアクセス数は大幅増加

当社にとってよい面もあります。電気代が上がると「電気代が高い」「電気会社を変えたい」「電気代が安くなる方法を探したい」となり、「エネチェンジ」へのアクセス数が通常の1.8倍以上にまで伸びています。これは今後さらに伸び、「エネチェンジ」が本当に必要だという状況になっていくため、当社にとってポジティブな影響だと思っています。

ARPUへの悪影響

一方で、ネガティブな影響もあります。それはいわゆるARPUへの影響です。例えばスライドを見ていただくと、電気の切替において、ソフトバンクでんきに切替ると、電気代が6,000円くらいしか安くなりませんが、それに加えて、キャッシュバックというかたちで、ソフトバンクが18,000円をお客さまに還元すると、合計で24,000円安くなり、「それなら電気を変えよう」という流れになることが今までの状況でした。

ただ、ソフトバンクだけでなく、すべての電力会社が赤字であるため「キャッシュバックとして18,000円も払えません」「18,000円ではなく10,000円にしてください」「10,000円どころか無しでお願いします」というような状態となり、特にウクライナ侵攻以降は雪崩を打って金額を落とさざるを得ない状況になっています。

そのため、今まで「電気代が高いから『エネチェンジ』で変えよう」と「エネチェンジ」に来ていただいても、安くなるプランがなくはないのですが、10,000円も20,000円も30,000円も安くはならない状況です。3,000円や5,000円で「これだと焼け石に水だ」という状態になりつつあるのが、今の電気の状況になります。

一方で、ENEOS、出光興産、コスモ石油など儲かっている事業者からも電気がくるため、儲かっている電力事業者3社ともにすべて当社のお客さまとなります。ENEOS、出光興産、コスモ石油が取りに行く側面はあるため、電力会社は少し厳しくなるかもしれませんが、その代わりにガソリン会社の電力部門と一緒にお客さまを獲得しに行くことで、当社は多少ヘッジすることができる強みはあります。

ウクライナ情勢により、最近の1週間、2週間は、当初想定していたよりも本当に厳しい状況になり、電力会社、電力事業所が追い込まれているため、結果として当社も影響を受け始めているということは、みなさまに正直にご説明します。

「データ事業」EV充電

「この状況をどうするのか」という中でのデータ事業についてお話しします。データ事業について今日はEV充電を中心にご説明しますが、こちらは大変順調となっています。0円でEV充電を設置できるサービスとして「エネチェンジEV充電サービス」を実施していますが、大変多くのニーズがあり実際に使用していただいています。

どのようなところでニーズがあるのかと言いますと、ホテル、旅館、ゴルフ場、スポーツ施設、市役所などの役所も大変多いです。さらに、少しユニークなところでは、キャンプ場、コインランドリー、セレモニーホール、パチンコ屋など、本当に多種多様なお客さまからすでに受注していただいています。

また、都道府県別に見ても、東京、神奈川、大阪といった大都市よりも、むしろ、車社会である名古屋、関東では茨城、群馬、埼玉、山梨などの地域、九州では福岡、大分、佐賀、また東北など、地方都市におけるお客さまの受注が多い状況になっています。

レギュラーガソリン価格の推移

レギュラーガソリン価格は、ウクライナ情勢を受けて逆にEVシフトをさらに加速する状況だと思っており、今後どんどん上がっていくと考えます。今新車を買う人は、よい機会だからガソリン車ではなくEVにしようという声が大変増えていると理解しています。

EVシフトは加速中

毎日、電力業界、エネルギー業界において価格が高いというマイナスで、ネガティブなニュースばかりを聞きますが、一方でEVに関しては、いまだにポジティブなニュースをよく聞くと思います。

ついに日産もガソリン車の開発を中止し、ソニーもホンダと提携し、どんどんEVを出していく流れになっています。これは起業家としても、日本人としても、わくわくします。私も絶対に買いたいと思っていますが、わくわくするようなニュースが、EVでは日々出てくるような状況だと思っています。

国内の新車販売におけるEV・PHV比率の推移

EVの販売状況をご覧ください。1月にはすでに3パーセントを超えています。2月は少し落ちていますが、いずれにしても今年は3パーセントを超える水準になっています。これは、トヨタなどは未発売です。

今年はトヨタなどの車が出てくることが決まっているため、そのあたりが出てくると3パーセントから5パーセント、もしかしたら今年末には10パーセントに近い水準まで見えてくるのではないかと言われるくらいの勢いです。このようにEVの普及はすでに起こっている状況です。

「逆風」の脱炭素。これで終わりなのか?

株価は大変厳しい状況になっており、まさに脱炭素の終焉ではないかと、今年の始めに『日本経済新聞』などで記事が掲載されていました。スライド右側のグラフのとおり、昨年の秋頃、グリーンエネルギー指数が大変上昇し、ナスダックではテスラの株価がぐんと伸びる状況になりました。その後グリーンエネルギー指数がぐんと落ちて、一時はナスダック指数を下回り、脱炭素は駄目なのではないかという話がありました。

一方、足元で言いますと多少回復しており特にアメリカの企業の回復が顕著です。ウクライナ情勢を受け「石油でも、石炭でも、何でもいいから回そう。ロシアへのエネルギー依存をやめるために、掘れるものは全部掘ろう」という状態になっていますが、中期的に見ると、化石燃料に依存することは、ロシアや中東の産油国の事情に左右されるため、危険です。

自給できるエネルギーとしての再生可能エネルギーの重要性が大変顕在化している状況ですので「やはり再生可能エネルギーが必要だ」という見直しが起こっていると認識しています。

残念ながら当社の株価にはそれがまだ全く反映されていない状況だと思っていますが、先行市場であるアメリカの株価水準、グリーン銘柄、特にEV充電銘柄も最近は株価回復が始まっているため、そのような流れに追い付けるように頑張っていきたいと思います。

自給できるエネルギーの重要性

日本においても、自給できるエネルギーの低さが問題になっています。「原子力を動かす、再稼働させる」というのも避けて通れない議論だと考えられますが、それに加えて、再生可能エネルギーを増やしていくことが絶対に必要だと考えています。

ENECHANGEの外部評価

昨年、この状況においてSBIから、当社の目標株価、適正株価は2,200円だというレポートをいただいています。このレポートは、SBIのアカウントをお持ちの方が見られるようになっています。

EV充電に関しては「期待するも、数値としてはほとんど織り込まず」というレポートになっています。私たちはSBIが分析、予想するEV充電の数値を上回る数字を出していきたいと思っているため、2,200円を超えるような株価も十分可能だと考えています。

一方で、昨年の秋にファイナンスとしましたが、その時からベイリー・ギフォードという欧州最大の機関投資家が私たちのこの株価下落の局面でも買い支えていただいています。こうした欧州最大の株主の名前が入ってくることは、今後、国内外の機関投資家をさらに巻き込み、呼び込んでいく上で、大変力強い応援だと思っています。それに応えられるような取り組みをしていきたいと思っています。

主要EV充電事業者との当社比較

私たちが目指している海外のEV充電企業とENECHANGEを比較した時に、私たちの割安感が大変目立つ状況になってきていると思います。株価を戻していくためには、私たちがEV充電の日本ナンバーワンの銘柄で、さらにEV充電のアジアナンバーワンの銘柄であるとポジショニングすることができれば、800億円、1,000億円という数字に必ず戻していける規模感だと思っています。私たちはこの局面において、そこに注力していこうと考えています。

2022年12月期 連結業績予想

業績予想をご説明します。2022年通期予想は売上高40億円、増減率プラス33パーセントと掲げています。一方で、15億円の営業赤字ということもお伝えしています。2月の段階では、増減率をプラス33パーセントと保守的に発表しました。昨年は3回の上方修正を行いましたが、今年も上方修正をしていきたいと思います。

現状は、ウクライナ情勢の影響で大変厳しい状況です。しかしながら、上方修正をしていくつもりでのバッファがあったため、今すぐウクライナ情勢を受けて下方修正しなければならないという状態までは追い込まれていません。

ただし、上方修正が本当にできるかというのは、毎日、状況が変わるため分かりません。現時点では「引き続き、この40億円の目標達成を実現していくことを目指す」とお伝えしたいと思います。

財務健全性

2022年通期の営業赤字は15億円を見込んでいますが、そのうち12億円が電気の切り替え、そして9億円がEV充電への投資です。すでに発表していますが、テレビ広告は取りやめ、12億円をオンライン広告中心とします。こちらに関しても、ウクライナ情勢を見て現在は少し絞っており、私たちも身構えている状態になっています。

一方で、EV充電は、本当に今はどんどん売れるためどんどん行けという状態です。プラットフォーム事業への投資幅を赤字にならない程度に減らし、その分をEV充電に投入するかたちにするよう、期中に多少調整することを考えています。

「守り」と「攻め」のバランス経営

「守り」と「攻め」のバランス経営として、締めくくります。率直に言いますと、電気の切り替えについては、ウクライナ情勢が読めないため不確実性が多いです。ですので、私たちは、ここは「守り」の経営だと思っています。できるだけ赤字にならないようにする、できるだけキャッシュを失わないようにするという意味で、広告宣伝費も絞りながら身構えていきます。

一方で、EVは盛り上がるため、ここを取りにいくために、EV充電で「攻め」にいきます。この2つの「守り」と「攻め」のバランスで経営することで、ENECHANGEは今年も飛躍の1年にできるのではないかと考えています。

質疑応答:EV充電について

坂本慎太郎氏(以下、坂本):EV充電が今回の目新しい話題でした。このEV充電について、1台いくらくらいで設置できるのでしょうか? また、他社製品との性能や価格面での差別化について教えていただきたいです。

城口:EV充電は、ホームページで価格も公開していますが、大きく2つの料金プランがあります。1つは0円で導入できます。初期費用、月額費用ともに一切かかりません。

例えばホテルで言いますと、ENECHANGEがすべての費用を負担し、ホテルの場所にEVスタンドを設置します。その代わり、ホテルのお客さまがご利用いただく時に発生する充電料金をENECHANGEが全部いただくというかたちです。つまり、私たちが充電料金で回収をしていくモデルです。これはアメリカの会社のBlink ChargingやEVgoが行うビジネスモデルを踏襲したものです。

もう1つは、月額9,800円で、EV充電を導入し利用できるというものです。ホテルが月額9,800円をENECHANGEに払ってくだされば、EV充電導入時の初期費用、ハードウェア、ソフトウェア、メンテナンス、お客さまサポートまでのすべてを行います。また、お客さまが利用した充電収入もホテルにほぼ満額いくため、ホテルは9,800円を超えるような充電収入があればむしろ儲かるというモデルです。

いわゆる損益分岐点は、大まかに言いますと、1日2時間のEV充電が行われれば、両方のモデルにおいて超えます。アメリカでは平均4時間から5時間使われているため、2時間というのは決して高い目標ではないと思います。今年はもしかしたら難しいかもしれませんが、来年、再来年には超えてくれるような水準のため、私たちはこの2つのプランを中心に数多く販売しています。

2点目の他社との競合優位性については、現状、日本市場において私たちのモデルは公共普通充電と言いますが、不特定多数の人が利用するホテルやゴルフ場、スポーツ施設、レストランなどに対して販売されるようなモデルを行っている会社はほとんどありません。ですので、私たちは競合企業とぶつかることも全くありません。そのような意味では、私たちが先行したリードがあるということです。

なぜ先行優位性があるのかと言いますと、私たちは約2年間、準備を水面下で行い、昨年11月に提供を開始し、さらに資金調達も併せて行いました。今は大量に資金を投入し、30人の営業態勢を構築して日本中で営業をしています。

EV充電にこれだけのヒト、モノ、カネを投入できている企業が日本にはENECHANGEしかないため、現時点では競合企業がそこまでいないということが私たちの現状優位性になっています。

質疑応答:EV充電の営業について

坂本:会場からの質問です。1点目は「EV充電の営業について、営業の難易度はどの程度で、どのくらいのレベルの営業マンを獲得しているのでしょうか?」というご質問です。 営業の経験年数やスキルのお話だと思います。

2点目は「EV自体の普及について、リチウム不足などもあり難易度が高そうに思うが、城口社長の見解をご教示ください」というご質問です。

城口:1点目に関しては大変面白い質問だと思います。もちろん日本でEV充電の販売に詳しい人は、基本的にはいません。今はEV充電の営業を30名採用し、半分くらいがすでに入社しています。

例えば自動車ディーラーで車の販売、中古車販売、カーリースの営業、駐車場経営の会社での営業など、車に関連する営業を行っていた人の転職が多いです。

年齢的には20代から30代前半で、新しいこと、EV関連の仕事に就きたいという方が多く「EVを扱いたいと自分の会社で提案したが、5年先と言われて、来ました」というように、EVにパッションの高い、車系の会社にいる若い人たちが属性としては多いです。

昨年12月に資金調達してから採用を始めており、まさに今、順次入社している状態です。電気の知識などを教えながら行っているわけですが、早い人では、月に20台くらい売っています。

イメージとしては、経験を積んだ営業マン1人あたり、月に約20台売れると思っています。こちらの営業マンの売り方のノウハウさえ整えば、お客さまのニーズは大変高いのです。「待っていました」「最近、EVに関してニュースで見るから何かしないといけないと思っていたが、どうすればいいのか分かりませんでした。ホームページを見ても、そういうサービスもなく、ENECHANGEさんの営業が来てもらったのが初めてなので、ぜひENECHANGEを検討したい」というようなかたちで進むことが多いです。

アメリカ最大手のChargePointの方も同じことを言っていましたが、導入しない理由があるとしたら、それは競合に負けることではないのです。ENECHANGEが競合と比べられることはまったくありません。断られる理由があるとしたら、「まだいいか」ということです。「来年でいいかな」「まだ、今じゃなくていいかな」というのが僕たちにとっての一番の障害です。

そのような人たちに対して「9,800円というかたちは、今年だけです。0円で全部提供するのも、今年だけです」「来年は状況によります。値上げするかもしれませんので、みなさん、ぜひ今年のうちに導入してください」と、今年のキャンペーンというかたちでの販売推進がうまくいっています。大まかに言いますと、1人あたり、月に約20台売ることを私たちは目指しています。

2点目は、私では回答が難しいところです。各社予想でも、EVの販売はガソリン車を上回ると言われており、最新の足元状況でもEVの販売台数が増えています。よって、さらに売れてくると考えていますが、昨今のウクライナ情勢や、資源価格の高騰や資源の不足など、そうした様子がやや読みにくい状況です。トヨタも生産ができないというようなニュースが一部出ています。

そのため今後どうなるかわからないが、多少遅れる可能性はあるものの、大きなマクロのトレンドとして、EVシフトは今回のガソリン価格高騰を受けて必ず進むと思っています。そのため、個人的にはそれほど心配していません。

質疑応答:ENECHANGEの外部評価について

坂本:「今日の説明の中でもベイリー・ギフォードの大量保有のお話しがありました。他の海外の機関投資家とのミーティングは、足元の件数ベースで増えているのか、または減っているのかを教えてください。また、どのような質問が多いのかも、教えてください。誰がどのような質問をしたかではなく、どのような興味を持っているかを、可能なかぎり教えてください」というご質問です。

城口:機関投資家とのミーティングでいうと、去年1年間の実績として、四半期でおおよそ100件ほど行ってきました。今年の第1四半期は少し減り、80件くらいだと思います。

少し株価が下がり、全体的にグロース銘柄が厳しいため、私たちに対する関心が減ったというのが、原因の1つとしてあると思います。一方で、私たちに対する理解がある程度進み「開示資料を見ているためよい」というかたちで引き続きウォッチしている会社も多いため、それほど大きく減っていません。約100件が80件くらいに減った状態であり、他社と比較して、まだ多い水準を維持できていると思います。

一方で、欧州系の投資家は、やはりベイリー・ギフォードを中心にこの電気の切替に対する関心度が非常に高いです。欧州は、まさに電気の切替が先行事例で確立されたビジネスとしてあり、彼らが直感的に理解しやすいためです。

ベイリー・ギフォードはイギリスの投資家ですが、ENECHANGE社のプラットフォームの事業モデルというのはイギリスを中心とする投資家には大変わかりやすいビジネスモデルになっています。そのため多くのご支援をいただき、ベイリー・ギフォード以外の欧州系の投資家が、すでに買ってくれているという話もいくつか聞いています。

一方、EV充電の話はやはりアメリカの投資家を引き込む上で重要だと思っています。アメリカのいわゆるナスダックへの上場で、EV充電の企業は現時点で7社あります。さらにまだ何社かもアナウンスを行っているという状況も鑑みると、EV充電はアメリカの投資家からの興味が大きいです。

また、どのような会社がどのような質問をしているかという件についてご説明します。今お伝えしたとおり、欧州の人たちは電気の切替が多く、アメリカの人はEVのほうが多い、という状況です。実際、質問の内容やレベル感に関しても、当社の個人投資家向けの説明会における個人投資家からの質問とあまり変わりません。

私たちはできるかぎり開示するために、毎月末に質疑応答を開示するようにしています。「このようなことを機関投資家や個人投資家から質問されています」ということを、フェアディスクロージャーでみなさまに出すというかたちです。

質疑応答:EV充電器設置数の開示予定について

坂本:本日の個人投資家からの質問の7割以上が、EVに関しての質問になっており、もう少しその点を深堀りしたいと思っています。個人投資家から「EV充電器の設置数の月次の開示予定はありますか?」というご質問です。

城口:出していきたいと思っていますが、もう少しお待ちください。イメージとして1000台くらいを超えたら、どこかの段階で出したいと思っています。

やはり営業体制や会社の体制がきちんと確立し、社内に数字がぶれずに出せる実績がたまってきたら、出していきたいと思っています。

お伝えしたとおり、30人の営業社員が1人20台売れるようになれば、月に600台売れます。月600台ずつ売れると投資家に開示する以上、そのペースで本当に売れることが社内できちんと確認できなければなりません。私たちも開示は慎重に考えざるを得ませんので、今はそのあたりに取り組んでいます。

トレーニングも含め、30人の営業体制を確立するのに、おそらく上半期の6月末くらいまでかかると思っています。そのメンバーがしっかりと営業で実績を積むために、さらに3か月から4か月くらいかかります。そのため、個人的には秋から冬くらいにかけては、そのような数字をきちんと出していけると思っているため、少しお待ちください。実行する計画はあります。

質疑応答:EVのプランについて

坂本:EVのプランが2つあるという話について、お聞きします。現状では無料プランと9,800円プランでどちらが多いですか?

城口:率直に言いますと、半々くらいで、無料プランのほうが、少し多いと思います。当然ですが無料プランは、充電料金は無料にできないため、私たちはそこで回収する必要があります。

有料プランについてはむしろ「無料にすればよいのに」と思われるかもしれません。しかし、有料プランのほうがよい会社も比較的多いです。有料プランのお客さまは、例えばホテルやスーパーなどです。「宿泊客に応じて無料で充電を提供したい」もしくは「スーパーで最初の1時間は無料で提供したい」というようなお客さまがいます。

私たちがコストを負担して設置し回収するため、そのような会社には9,800円のプランにしてもらう必要があります。そのプランを無料にされると私たちの事業は成り立たちません。そのような会社には「無料プランは無理です。9,800円のプランにしてください」とお伝えしています。

「あなたの会社は本来は2時間の充電で9,800円を回収できるが、それを1時間無料にするなら平均で3時間の充電が必要である」という話になります。そのため「自分たちのお客さま向けに1時間または2時間無料で提供したい」というサイトオーナーなどに関しては、そのような意味では有料プランしか選択肢がありません。半々から6割4割で無料プラン、場合によっては7割3割など、無料プランの割合のほうが少し多くなります。

質疑応答:補助金について

坂本:また、補助金についてお聞きします。今は打ち切られたか把握していませんが、今後もおそらく補助金はありそうです。自治体によって違うと思うが、仮に補助金がまたかなり多額に出ると、御社のビジネスは人がそろっているため、さらに加速すると思います。やや漠然とした聞き方で申し訳ありませんが、補助金はかなりプラスになりますか?

城口:プラスになると思います。特に一昨年は、バイデン政権が、EVおよびEV充電インフラへの補助金を多く出すと言い、アメリカの会社の株価がめざましく伸びました。やはり補助金が出れば出るほど、実質的に安くなるため、株価も伸びます。

私たちも補助金が目当てではないものの、補助金が今後増額される可能性があるため、そうした状況をしっかりととらえていきたいと思っています。

質疑応答:海外の充電プレイヤーが苦戦した状況について

Bコミ:また海外の充電プレイヤーが苦戦した部分についてお聞きします。どのような状況があり、御社はそれを踏まえてどのようなことに注意してビジネスを展開するのかを教えてください。

城口:苦戦した状況は、数多くあると思います。私たちはChargePointという最大手の元役員をアドバイザーというかたちで採用し、実質的にハーフタイムくらいで私たちの会社で働いてもらっています。

私もほぼ毎週ミーティングしています。何を行っているかというと「日本でこのような課題がありました」「アメリカでもこのようなことありました」のような話を聞きます。そして「私たちもこのような問題あった、このように対処すると、うまくはこんだ」というような話を毎週行っています。

彼らはChargePointで10年間くらいこのビジネスを行っています。そのため、ChargePointが10年間ほどかけて取り組み、いろいろ学んだことや、彼らのPDCAを、すべて私たちは急速に日々教わりながら取り組んでいます。

このあたりは情報戦で、日本の他の企業に対して圧倒的に優位に立っていると思っています。そのため、先ほどお伝えした2つのモデルも、まさにChargePointやその他アメリカのBlink、Voltaなどを参考にしています。

質疑応答:M&Aについて

坂本:M&Aについてお聞きします。話せるかぎりでかまいませんので、どのような企業を買収すれば御社の成長につながるのか、というイメージや戦略などを教えてください。

城口:まず昨年、プラットフォーム事業である、電気の切替の会社を1社を買収しました。私たちは圧倒的ナンバーワンですが、規模が小さい同業者がおそらく、数としては5社から10社ほどあると思っています。それらの会社が今回のウクライナ情勢を受け、大変厳しい状況になっています。

私たちはやはり最大手ですので、公表している57社の電力会社と幅広くお付き合いしています。ある会社がだめになっても別の会社がなんとかできるというように、会社の中でうまくヘッジできています。

一方で、私たちよりも小さい会社になると、提携の会社数も5社から10社くらいの規模です。ウクライナ情勢により、提携の電力会社もすべてだめになり仕事ができません、という同業者も出始めていると認識しています。

したがって、場合によってはそのような会社を私たちがM&Aしてプラットフォームに取り込めば、50何社の電力会社とすみやかに取引できるようになります。そのような意味では彼らの事業も有効活用できます。

昨年は、オーベラスという会社を約3億円で買収しました。このウクライナ情勢を受けて同規模の買収の話は、何件か出てくると思っており、そのようなM&Aに関しては引き続き積極的に行っていきたいと思っています。

一方で、EV充電のほうは買収する先はないと思っています。買収などにお金を使うよりむしろ一生懸命営業マンを採用して、自分たちで設置していくというかたちです。したがって、現状ではそれほど買収は考えていない状況です。

坂本:EV充電は、私の知るかぎりでは、かなり大手の商社などが取り組んでいたイメージがあります。日本のEV充電において、ライバルというとおかしいですが、他に事業を行っている会社を教えてください。

城口:私は商社の事業をそれほど把握しておらず、申し訳ありません。しかし一番大きいのは東京電力様と中部電力様が行っているe-Mobility Powerです。

今おっしゃった商社が行っている事業は、おそらく住友商事のジャパンチャージネットワークです。

住友商事や日産自動車などが行っていた充電のインフラサービスがあり、その2つを何年か前に東京電力様と中部電力様が行っているe-Mobility Powerがすでに買収しています。

すべてを束ねてe-Mobility Powerができ、そこには東京電力様と中部電力様、トヨタ、ホンダ、日産自動車が入っています。メガ連合のようなものがあり、よってそのあたりがすべてe-Mobility Powerに集約されています。

基本的に急速充電に関する事業を行っており、高速道路のサービスエリアに設置していくかたちで、日本のEV充電のインフラを担う会社になっています。

ここは私たちとは競合せず、アメリカのモデルでいうとEVgoという会社が行っている急速充電のビジネスモデルになっています。したがってEV充電という幅広いくくりでいうと、そこの主要プレイヤーではe-Mobility Powerがナンバーワン、私たちはナンバーツーという状況になります。

もう少し詳細なセグメントでご説明します。お客さまが3時間から4時間以上滞在されるような場所での充電設備を、私たちは目的地充電と言っており、このようなホテルなどの充電設備を扱っているのがENECHANGEです。これはアメリカの例でいうとChargePointやBlink、Voltaのような会社が行っているビジネスモデルです。

e-Mobility Powerが行っているのは、FastnedyaやEVgoが行っているようなビジネスモデルです。実際には住み分けしているため、あまり競合はしないというかたちになっています。

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