2017年に始めたいことの第1位は「貯蓄」というアンケート結果
2017年を迎えて早2カ月強が経ちました。年初に今年1年の目標を定めた人も多いでしょう。
その目標といっても様々です。昨年11月にビザ・ワールドワイド・ジャパンが、18歳から34歳までの男女850人を対象に行った「お金の使い方に関する調査」によると、「2017年に始めたいこと」の第1位は「貯蓄」(41%)、2位は「節約」(34%)、3位は「健康管理」(30%)という結果が出ました。
この調査を実施したのがカード会社であること、また対象者が若年層であることなどから、結果は少し割り引く必要があるかもしれません。しかし、1位と2位の結果を見る限り、将来の資産形成に向けて日々苦労している姿が見て取れます。
また、今回のアンケートでは、「貯蓄」と「貯金」が明確に区別されてはいないように思われますが、いずれにしても、“貯えを増やしたい”という強い意志を感じることができます。
ところで、このアンケート結果を見たシニア世代やシルバー世代を中心とする高齢者層は、少なからず違和感を覚えたのではないでしょうか?
実は、少し大袈裟に言うならば、この世代の多くの方々は、普通に会社勤めをしていれば“自然に”貯えが増えていた世代なのです。
「給与天引き」によるコツコツとした資産形成が最善の方法?
様々な意見はあるでしょうが、資産形成は長きにわたってコツコツと貯めていく方法に勝るものはありません。そして、その代表的な手段が「給与天引き」でしょう。毎月の給与や賞与から一定額が自動的に差し引かれる仕組みです。
現在でも、会社の規模にもよりますが、多様な給与天引き財産形成プログラムが用意されています。主なものは、1)従業員持株会への参加、2)財形貯蓄(一般、年金、住宅)、3)社内預金、4)その他(ストックオプション等)です。
このうちストックオプションはまだ新しい制度ですが、高齢者層の方は入社時から給与天引きでこれらの制度を活用することで、20年も経つと相当の資産が形成されていたと考えられます。
しかしながら、バブル崩壊以降続く低金利・デフレ経済を背景に、こうした従業員の資産形成プログラムは大きく縮小されつつあります。いや、既に過去の話になりつつあるのです。特に、1)の従業員持株会を除き、企業貯蓄制度は大幅減少の一途を辿っています。
従業員向けの貯蓄制度を廃止する企業が大幅に増加している
厚生労働省が毎年発表している「就労条件総合調査」では、その細分項目である「資産形成(に関する援助制度)」の調査を5年毎に行っています。
それによると、従業員向けに何らかの貯蓄制度を導入している企業の割合は、平成11年の65.2%→平成16年の57.4%→平成21年の51.2%→平成26年の44.8%と推移しています。単純計算では、この15年間で約3分の1の企業が廃止したということになっているのです(注:平成20年から対象範囲の変更が実施されたため、完全な連続性はない。以下同)。
平成11年以前のデータは公表されていませんが、平成元年には80%を超えていた可能性が高く、また、直近の平成28年は40%前後まで低下していると推測されます。
優遇制度の多い財形貯蓄制度も減少の一途
企業が導入している貯蓄制度で最大比率(約93%)を占めるのが財形貯蓄です。財形貯蓄(一般、年金、住宅)の詳細は省略しますが、非課税制度(元利合計で最大550万円)などの優遇がある一方で、中途引き出しが厳しく制限されています。それだけに、ふと気が付くと想定以上の貯えになるパターンが多いのが特徴です。
かつて、一定規模以上の企業なら普通に導入されていた財形貯蓄制度も、61.8%→54.5%→46.4%→41.4%へ減少しています。
今や「社内預金制度」を導入している企業は稀かもしれない
さらに、バブル経済の頃まで財形貯蓄以上に従業員の資産形成に貢献した「社内預金」も、7.4%→4.6%→4.6%→3.6%に減少しました。
社内預金は、財形貯蓄より引き出し制限は緩いものの、保証最低金利が0.5%以上(注:現在の規定)に定められているなど、並外れた高金利預金として活用されてきました。しかし、今となっては、導入している企業は稀と言っていいのではないでしょうか。
従業員の“自然な”資産形成は難しい時代に
企業がこうした従業員向け貯蓄制度を縮小している最大の理由は、低金利による運用難に加え、事務処理コストの増大によって、深刻な負担増となっているためです。
つまり、現在の若年勤労世代から見れば、給与天引きで資産形成をしたくとも、その給与天引き制度がなくなりつつあるのです。従業員の資産が自然に形成される時代はもう来ないのでしょうか。
LIMO編集部