2022年03月16日に行われた、株式会社ゼロ2022年6月期第2四半期決算および中期計画説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ゼロ 代表取締役社長 北村 竹朗 氏
株式会社ゼロ 代表取締役副社長 柴崎康男 氏
株式会社ゼロ 取締役 小倉信祐 氏
株式会社ゼロ 取締役 髙橋俊博 氏

2022年6月期第2四半期決算および中期計画説明会

北村竹朗氏(以下、北村):みなさま、こんにちは。コロナ禍との戦いも3年目を迎えました。本日の報道によると、来週の21日(月曜日)にまん延防止等重点措置の全面解除になるようです。

今回の説明会は2年ぶりの開催となります。まん延防止等重点措置が継続している中、お集まりいただきありがとうございます。

アナリスト、投資家の方にも多くご出席いただいていますが、本日の説明会は、オンラインで全国に中継しています。

説明会の内容についてですが、上半期と通期の業績、そして中期計画が中心です。特に「ニューノーマル」「グリーン化」「デジタル化」の3点について、「どのように世の中が動いているのか」「物流業界として何が課題なのか」「我々は今どのように取り組んでいるのか」についてお話しし、みなさまとできるだけ多くの意見交換をしたいと考えています。

まずは上半期を振り返ります。先月の短信の開示とともに説明用資料も配布しているため、大切なポイントだけをご説明します

2022年6月期の国内自動車総市場 ①新車販売台数

スライドは、昨年1年間の国内の新車販売を四半期ごとに棒グラフにしてあります。コロナ禍以前と、コロナ禍が始まった時期を加えた3年間を比較しています。2021年の新車販売台数は450万台を下回りましたが、これは東日本大震災の2011年以来のことです。

新車販売台数は前年比96.7パーセントですが、実は上半期と下半期とでは大きく数字が変わります。上半期の新車販売台数は、前年比11.6パーセントと伸びており、コロナ禍からの緩やかな回復基調となっていました。しかし下半期は前年比17パーセント減で、特に10月から12月は大きく落ち込みました。

2022年6月期の国内自動車総市場 ②中古車登録・販売台数

中古車登録・販売台数ですが、2年連続で前年割れになっています。大変ショックだったのは、登録車が1年間で373万台になってしまったことです。これは1978年からの数字で最低の水準です。

主な原因は、新車の販売台数が伸びないため、各販売会社の下取り車が減り、中古車の流通が滞ったことが考えられます。

2022年6月期の業績概要と業績分析 ①業績概要

困難な状況下での我々の業績についてです。すでに短信で開示していますが、売上高は前年比で26億5,600万円の増収です。

主な要因は、昨年7月に中国の陸友物流を連結化したことで売上高が拡大したことと、マレーシア向けの中古車の輸出拡大です。

我々の本業である自動車の陸送が、大きく落ち込んでしまったというのが、売上高の減収要因です。

営業利益は、前年比で12億3,800万円の減益となりました。この約12億円の内訳ですが、コロナ禍における雇用調整助成金がなくなった影響の4億円に、原油高に伴う燃料費の上昇分4億円が加わっています。つまり、比較対象とならないイレギュラーな8億円が含まれているということです。

そのため、残りの約4億円が純粋な減益ということになります。売上高の中身、構成の変化による減益についてはあらためてお伝えします。

2022年6月期の業績概要と業績分析 ②業績分析(売上収益)

今期からセグメントを1つ増やしています。先ほどお伝えしたように陸友物流を連結化したため、海外関連事業を新しいセグメントとして追加しました。

海外関連事業の中には、陸友物流の売上高や営業利益だけでなく、マレーシア向けの中古車の輸出分が入っています。今までは自動車関連事業セグメントに入れていましたが、こちらを海外関連事業に加えました。

また、タイにおけるSUBARU向けのCKDのオペレーションですが、これまでは一般貨物事業セグメントにありました。これを海外関連事業に織り込み、3つの事業を海外関連事業のセグメントに加えています。

ウォーターフォールチャートで見ると、国内の自動車関連事業以外はすべて増収です。国内の同関連事業のうち、輸送に関しては前年比で約11億円、非輸送の整備や入札会で5億円、車両輸送を含めた自動車関連事業で約16億円の減収となっています。

2022年6月期の業績概要と業績分析 ③業績分析(営業利益)

営業利益のウォーターフォールチャートです。陸友物流による約17億円の売上がありましたが、中国の会計年度は1月から12月のため、上半期1月から6月は黒字計上で、連結後の7月から12月は赤字計上です。したがって、約2,000万円の赤字となっています。

燃料関係の4億円は、燃料単価上昇分の2億6,000万円と、海上輸送における燃料サーチャージの上昇分1億4,000万円を合わせた数字です。

また、前述した4億円の雇用調整助成金は、人材事業が3億3,000万円で、残りの約7,000万円は他事業の雇用調整助成金です。スライドのチャートでは、連結の調整の中に組み入れています。したがって、4億円のオペレーション分の減益というのは、車両輸送事業の6億円が効いていると理解いただければと思います。

以上が、上期業績の振り返りとなります。

2022年6月期の業績概要と業績分析 ④軽油価格の推移

軽油の市場価格の推移です。2020年7月から2021年12月までの各月の平均を出しています。前年比で1リッターあたり27円40銭も上昇しています。こちらでは重油の動きを示していませんが、両方合わせて、前年に対して約4億円のインパクトになりました。

2022年6月期の業績予想とその前提

通期の見通しについてです。すでに短信で開示していますが、昨年7月から通期の見通しは変更せず、売上高950億円、営業利益47億5,000万円となっています。

今年の年始に前提について考えたのですが、まずは半導体不足について、減産は「昨年9月から11月が底」で、12月からは徐々に回復していくというのがメーカーの共通認識です。また、新車が回復すると中古の流通も始まります。

オミクロン株については、日本政府が「3回目のワクチンを6ヶ月経った時点で接種」ということを発表したため、収束していくことを前提としました。

燃料費は、高騰していましたが、「そのあたりで止まるだろう」という1月初旬での見通しのため、7月の予測は変えていません。

足元の自動車生産は、1月、2月は低迷したままです。1月の販売台数は、前年比で約12パーセントの減少で、2月は18パーセントの減少となっており、緩やかな回復とはなっていません。

コロナ禍における第6波の陽性反応者は少しずつ下がっているものの、高止まりのような状態です。「6ヶ月が経ったら3回目のワクチン接種を」と発表されましたが、実際にワクチンが届いたのは最近で、昨日、本日の報道では、接種率がようやく30パーセントになったとのことでした。

原油については、ロシアのウクライナ侵攻により、引き続き高騰しています。

今後について、本来、今の時期は繁忙期を迎えているところですが、現状はそうなっていません。今週から約1ヶ月かけて忙しくなっていくだろうと見ていますが、各メーカーが減産しているため、国内には約100万台ものバックオーダーがあると考えています。

生産が回復してくれば、流通が始まるため、リーマンショックや東日本大震災の時のように、市場を刺激しなくても、中古も含めて市場が動き出します。4月から6月にかけての動きが、我々の業績に関係してくるところです。

まん延防止等重点措置が、来週月曜日で全面解除になるということですので、これを受けてマーケットがどのように動くのかということです。原油については、政府の中でようやく「トリガー条項の凍結解除」の話が出ています。これが解除されると、ガソリンではリッターあたり25円10銭、軽油では17円10銭がかからなくなります。

この2つの金額は、暫定税率が存在していた時のものです。道路特定財源として徴収していた税金ですが、今では一般財源に変わっています。

東日本大震災でお金が必要なため、「どのような状態であっても、徴収した税金をそこに使う」という法律を自民党が作りました。「それを解除してほしい」というのが凍結解除の意味です。現在、ようやく議論が始まっており、これが実現すれば半分戻ってきます。

そのため、追い風になるとは思いますが、どうなるかはわかりません。市場の動きを注視する必要があります。

2022年6月期~2024年6月期における中期計画の概要

本日の本題です。「CASE(ケース)」「MaaS(マース)」「100年に一度の自動車産業の大改革」と言われていましたが、その後、コロナ禍を迎えることになりました。これにより大改革がかなりのスピードで起きていると認識しています。

昨年は創立60周年であり、社名を「ゼロ」に変更してから20年という節目でした。その際、もう一度原点に返り、あらゆる品質にこだわるということを中計の基本方針としました。

それには、強い企業体質を実現する「経営の品質」、高い志を持った「人的な品質」、無駄を排除した「業務の品質」、そして我々は公道を職場としていますので、安心と安全とともに車を運ぶ「輸送の品質」が必要で、この4つの品質にこだわることが大切と考えました。

2022年6月期~2024年6月期における外部環境認識

「この中計期間中に、世の中がどのように動いていくのか」についてです。「自動車はどのように動くのだろうか」「物流業界はどうなるのだろうか」「社会情勢はどうなるのだろうか」ということをまとめています。

この中で、「カーボンニュートラル」「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」の3点について、我々が取り組んでいることをお話ししたいと思います。

「ニューノーマル」「グリーン化」「デジタル化」①

ポストコロナの社会に向け、新しい働き方、時間や場所にとらわれない新しいワークスタイルが模索されていますが、乗務員不足や乗務員の高齢化といった陸送業界における潜在的な課題は改善されていません。それによって、乗務職の総労働時間を削減していかなければならない2024年問題があります。

「ニューノーマル」-①物流の2024年問題とは

乗務職の拘束時間の上限は3,516時間と決められていますが、スライドのチャートはゼロのケースを見ているため、全部に当てはまるわけではありません。我々の場合、1年間の所定内の労働日数が250日になっていますので、8時間勤務では、2,000時間が所定内の労働時間となります。法律で決まっている1時間の休憩は、年間で250時間です。

つまり3,516時間から2,250時間を差し引いた1,266時間が、理論上の残業時間の上限となります。この残業時間を「月平均80時間、年間960時間にせよ」というのが働き方改革関連法で、2024年4月1日から乗務職に課せられます。所定内の労働時間と休憩時間は変わらないため、拘束時間は3,210時間に減少します。

現在、厚生労働省はこの拘束時間そのものを下げようとしていますが、現状ではまだ決まっていません。では、これで何が起きるのかと言いますと、我々の試算では約30万台も運べなくなってしまうのです。

そこに対して、我々はどのように対応していくのかということですが、ゼログループには「運び切る」というDNAがあります。具体的には、乗務員がなるべく多くの車を運べる体制にし、機材の効率を上げることです。この2つにチャレンジしていかなければなりません。

「ニューノーマル」-②ゼロ乗務員の拘束時間内訳

約1,000両ある機材を運転している乗務職の平均拘束時間の内訳を示したグラフです。走行している時間が54.1パーセントで約半分となっています。法定の休憩時間があるため、それを除いた37.5パーセントが走行以外の間接業務を行っている時間帯です。この部分を削減することで、これまでの走行時間を変えずに労働時間を下げることができます。

「ニューノーマル」-③間接時間の削減

日本最大のオークション会場であるUSS東京の航空写真です。オークションでさばかれた後、こちらに置かれている車を我々が運びます。エリアで分かれていますが、乗務員がこの中から車を引き出します。きれいに並んでいますが、例えば、中央にある車を運ぶ場合、前の車を動かして自分の車を出し、さらに動かした車を元に戻すという作業をしなくてはなりません。6台をこの中から出してくるだけで約3時間かかります。ただし、引き出し作業を他の人が行うことで、乗務員の拘束時間を減らすことができます。

同じように我々の物流センターの中でスタンバイ活動、つまり運転手が出向して帰ってくるタイミングに機材のほうへ運ぶ車を並べておけば、労働時間は短縮できます。このようなことにチャレンジしています。

また、スタンバイ活動のために新しく外部から人材を雇い入れなければいけません。当然コストがかかるため、効率化により、コストを削減しようとしています。しかし、追加のコストが発生する場合、お客さまに対して理解を求めて料金を変更することも考えています。

「ニューノーマル」-④機材稼働率の向上

効率化の例です。昼間の道路は渋滞するため、夜間や早朝にスピーディに車を届けるオフタイムデリバリーを推進しています。また、人が残業するのではなくトラックを多く活用する二直体制を組むことを考えています。

ドッキングについてご説明します。例えば、福岡から鹿児島まで荷物を運び、福岡に戻ると法定の拘束時間の上限を超えます。そこで福岡を出発したドライバーが熊本のデポで降り、鹿児島から出発したドライバーが熊本のデポで降ります。乗務員を入れ替えてそのまま帰ることで、労働時間を守ることができます。

ドッキングをさらに二直にすることが、ドッキング・リレー輸送です。例えば、東名高速の上下線の同じサービスエリアやパーキングエリアをドッキングのポイントにすることで、トラック乗務員の入れ替えが可能です。さらに、そこで二直目の人にリレーをすることで、トラックを動かし効率化を図ります。

かなりトライアルが進んでおり、定期路線化を推進しています。このような努力をしつつも、追加のコストを吸収できないか検討をお願いすることも出てきています。

「ニューノーマル」「グリーン化」「デジタル化」②

カーボンニュートラルについては、電気自動車いわゆるEVのキャリアカーでの輸送のあり方や、機材そのものの電動化、グリーン化関連のビジネスへの参入の3点があります。

「グリーン化」-①電動化における各地域の思惑と各社の方針

毎日のように電気自動車についての報道があります。ヨーロッパとアメリカ、中国、日本がどのような動きをしているのか表にまとめました。各地域の思惑と書いてありますが、これは我々が想定しているものです。

まず中国についてご説明します。中国は自動車を国策としたいのですが、エンジン開発で日本、アメリカ、ドイツに敵わないため電気自動車を開発しています。ここに莫大な政府の資金やインセンティブを付けて世界を席巻しようとする思惑があると思います。

ヨーロッパはもともとディーゼル車が主流ですが、カーボンニュートラルに反するため、グリーン化で電気自動車を推進していると考えられます。

米国では、テスラが非常な勢いで伸びていますが、中国に対抗するため、電気自動車を選択するしかないということが裏側にあると思います。

日本は、非常に中途半端な位置にいます。トヨタ自動車の豊田章男社長が電気自動車の話をしていますが、まだ道半ばの状態です。これには11年前の東日本大震災における原発事故が関係しています。

原発をどうするのかという議論を多くの方が避けています。「その中で何がカーボンニュートラルだ」と思っている方もいると思います。しかし、世の中の動きもあり、日本メーカーも、アメリカやヨーロッパや中国で商売しているため、電気自動車への取り組みを行わなければなりません。

選択肢として水素やハイブリッドもあるため、電気自動車だけでなく「電動車」という言い方をしているのが日本政府ということになります。表には各メーカーの動きを記載していますので、ご覧いただければと思います。

「グリーン化」-②EV車輸送における課題

まだあまり市場には出てきませんが、日産自動車の「アリア」という栃木工場製の自動車があります。スライドの写真は積込みのテストをしたものです。キャリアカーにはスペースがありますので、本来であればまだ自動車を乗せられますが、車両が重いため3台しか乗せられません。

スライドには主なメーカーのブランドの重量を記載してありますが、ドイツのメーカーはおおよそ2トン半を超えます。「アリア」は約2トン、「bZ4X」も2トンを超えると言われています。

従来のエンジン車であれば、キャリアカーに対して5台あるいは6台乗せられるものが、3台、4台しか乗せられなくなります。働き方改革により30万台運べなくなるとお伝えしましたが、今後、電気自動車が普及していくともっと運べなくなります。

「グリーン化」-③新型輸送機材の共同開発、導入開始

本日の日刊自動車新聞にも掲載されたお話をご紹介します。浜名ワークスというキャリアカーの後ろの部分を作っている会社とゼロで共同開発した、新しいキャリアカーのトレーラーです。これまでの最大積載量は約8トンでしたが、新しいキャリアカーは10.7トンまで運ぶことができます。

これにより「アリア」であれば4台載せることができます。さらにこの機材については、エンジンを切ってもバッテリーで荷扱いができるため、カーボンニュートラルとまでは言いませんが、電動化に対して取り組んでいる1つの例です。

「グリーン化」-④新興ブランド輸入EV車の一貫輸送

電気自動車は今中国で非常に動きが激しく、いわゆる新興ブランドも多いです。スライド右側の写真は我々の2番目の株主であるSBSホールディングスが導入するEVトラックです。SBSホールディングスが導入するEVトラックの開発は日本ですが、製造は中国です。日本に導入する一般系の商用車は今後多く入ってくると考えられ、佐川急便も行っています。

特徴的なのは、開発は日本で行い生産が中国ということで、量産、量販の期間を短縮化していることです。通常は新しいエンジン車でも新型のモデルを開発するのに約5年かかると言われていますが、それを3年くらいのスパンで行うのが現在の中国の動きです。

新興ブランドは日本側にインフラがありませんが、ゼロの北九州にはゼログループのインフラがほとんどあります。中国から近いため、仮に上海や大連から北九州に車が輸送されればここですべてを賄うことができます。日本全国に運ぶことができるため、一貫物流を視野に入れていきたいと思います。

「グリーン化」-⑤バイオマス発電所向け燃料荷役の状況

毛色の違った話をご紹介します。九州にある苅田港運という港湾荷役会社ですが、今までの主力製品は九州電力向けの石炭でした。現在は、いわゆる木くずによって電気を作るバイオマスの2つのプラントが稼働しています。

1つは住友林業がバックにある苅田バイオマスで、もう1つが関西電力がバックにあるバイオパワーが稼働しています。さらにもう1社もプロジェクトが動き始めています。スライドの写真のように、木くずを船から積み上げて蓄えています。

「ニューノーマル」「グリーン化」「デジタル化」③

物流業界の中では、陸送業界のデジタル化が最も遅れていると言われています。未だに受注をFAXで受けるようなありえない話が今でも起きています。

外部のデジタル化にどのように対応していくか、また、乗務員の負荷を下げるためにどのようなデジタル化を行うか、輸送の効率化を図るためにどのようにデジタル化するかの3点についてご説明します。

「デジタル化」ー①陸送業界周辺のデジタル化動向

外部のデジタル化についてです。我々のキャリアカーは必ず公道を走る時に特殊車両通行許可申請が必要でした。今は認可にかかる期間は1ヶ月から1ヶ月半くらいですが、それまでは約3倍の時間がかかりました。

そこで、簡単に申請を行う制度が整い、認可の期間が短縮されました。全国の地図をデジタル化し、Webで登録します。ただし、これには条件があり、機材の所在がわかるETC2.0や、どの程度重量を搭載しているかわかる資料を置く必要があります。

また、高速道路のETCの専用化が行われました。首都高速の例ですが、すでに3月から5ケ所でETCの専用化が始まっています。そして4月からは34ケ所、さらにNEXCO東日本やNEXCO中日本のETCの専用化も進んでいます。

高速道路のインターチェンジでは、みなさまご承知のように紫の看板にETCとあり、緑の看板が一般レーンとなっています。新しい看板はサポートという白の看板になっています。現在、首都高速は年間1,100万台の車が通過しており、そのうちの7パーセントが一般レーンを通っています。

一般レーンを通る車の約40万台が陸送業界の車です。なぜならば、仮ナンバーの付いた車はETCを通ることができません。各メーカーが作ったトラックは完成品ではありません。シャーシが付いていない状態で架装メーカーに行きダンプカーになったり、アルミのバンになったりします。そこで初めて登録がかかりETCのレーンで通過できます。

我々は工場から自走して港や架装メーカーまで運びますが、その時は仮ナンバーを付けて走るため、ETC専用ゲートに入れません。

中古のリースアップされたものはETCの機械が装着されています。しかし、我々の運行約款ではお客さまが装着しているものに手を触れないことになっています。カーナビやETCなどの機械を使わないということです。お客さまに「これを使わせてください」とお願いしないと使えません。

この40万台がETCレーンを通れないため、通過時の支払いについて、仮に乗務員に負荷がかかることがあれば、2024年の働き方改革関連法の施行にあたって逆行する話になります。今後、首都高速やNEXCOと協議する必要があります。

「デジタル化」ー②ゼロにおけるデジタル化の進捗状況

社内の話を例にご紹介します。半分以上中古車を運んでいるため、いろいろな傷のチェックやお客さまの要望のチェック項目があります。

乗務員からすると「このお客さまに対してはこうしなければいけない」「このお客さまはこれもしなければいけない」と非常に煩雑です。これを最終的に一本化して、機械化する取り組みが始まっています。

先ほどのZモデルの中ですでに取り付けていますが、高さのセンサーを付けています。特車申請で自重計や、搭載しているものの重量がわかるものを載せる必要があるとお話しましたが、ここに1つの例として自重計をご紹介します。

自重計の実用化についてはトライ&エラーは終わっていますが、世の中にはイギリス製のものしかありません。イギリス製は高価なため、補助金などが付かない限りは実用は無理だと思っています。また、我々の効率的なオペレーションの例ということで、自走に対して動態管理をするシステム開発を進めています。

陸送会社図鑑のご紹介

このように、ニューノーマル、グリーン化、デジタル化と多くの課題が山積みですが、現在のSDGsの活動に直結していくと思います。

最後になりますが、陸送業界に対しての理解を深めてもらうために、昨年60周年の記念行事の一環として『陸送会社図鑑』を日経BPとの協力を経て作成しました。

現在書店で販売されていますので、ご興味がある方はぜひお買い求めください。よろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:運送費の改定について

質問者1:今期の売上が1,000億円近くある中で、諸経費の高騰で業績面は非常に厳しい状況だと思います。昨年からの原油高とウクライナ情勢が加わり、化石燃料の高騰が原因だと思います。

そのような中で、企業努力だけではなかなか吸収しきれない面もあると思いますが、足元の収益改善ということで運送費の改定、お客さまとの交渉についてどのようにお考えですか? 

北村:燃料費の増減によって輸送料金を変える方針は基本的にはありません。これは企業の努力によって行うものと認識しています。しかし、現在の軽油単価はかなり危険水域にあるというのは事実です。

なぜ企業努力で行うのかと言いますと、原油が下がった時のことを考えなければいけません。すべての料金は機械的に設定しているため、これを変更することは大変なことになります。そのため、基本的には軽油の動きによって料金を変えることはありません。

しかし海上の運賃については、各船舶会社はそのようなことは考えずにダイレクトに値上げをしていきますので、余計に「困ったものだな」と思っています。そして、先ほどお伝えしたように、今後2024年の問題があります。その時にどうしてもここの部分はご負担いただきたい部分が出てくると思いますので、そのタイミングで考えていきたいと思います。

小倉信祐氏(以下、小倉):今、料金改定についてご質問いただきましたが、料金改定については我々がまず、あらゆる面で自助努力をした上で、お客さまにご負担をお願いするものだと考えています。

ただし、社長がご説明したとおり、輸送環境がかなり変化してきました。この変化をお客さまにどのようにご説明して、そしてお客さまのご理解をいただくかが、直近では必要になってくると思われます。その意味においては、料金改定の検討をスタートしたいと思っています。

今回の料金改定は、単なる料金の変更ではありません。今まで我々は輸送距離や車の大きさといった要素で料金を設定してきていましたが、EV化に伴う「車重」という概念を料金に持っていません。

したがって、今後は車重という概念を入れ、料金の体系自体を見直さなければいけないと考えています。そのあたりを含めて検討を進めていきたいと思っています。ただし、時期は未決定ですので、あらためてご報告したいと思います。

北村:現在、毎日のように報道でいろいろなものの値上げの話が出ています。その時コメントとして必ず出ているのは、「原材料の値上げ」「物流費の上昇」という言葉です。「誰が物流費を上げていますか?」と言いたくなるのですが、決まり文句のように使われるため、よいタイミングだと考えています。

したがって、どのような考え方をするのかが必要だと思っています。また、一般消費材を扱うBtoCの商売と違い、我々は企業との取引になりますので、必ず交渉が必要になってきます。原材料の値上げと物流費の値上げは、一方的なBtoCの値上げとは違いますので、きちんと理解を求めていきたいと思います。

質疑応答:EVのリスクとビジネスチャンスについて

質問者2: EV化について2つお尋ねしたいと思います。1つは課題についてです。今重量の話になりましたが、保険会社的にはEVのリスクとして、例えば「燃えやすい」などいわゆる従来のガソリン車と異なるリスクを感じていますが、御社の立場からEVを運ぶリスクについてどのような見解を持っていますか?

2つめはEVのビジネスチャンスについてです。新興メーカーの一貫物流に関するお話がありましたが、私どもも日々、新興メーカーが日本に入っており、新しいビジネスを立ち上げているように感じています。

例えば、それ以外のバッテリーのリユースの市場など、いわゆる充電関連のインフラの整備などの領域で、ビジネスチャンスを感じていますか? 

北村:まず概要についてお話しすると、車は基本「走る、止まる、曲がる」のですが、稀に車は燃えます。ガソリン車でも燃えます。ガソリン車を運んでいる我々のトレーラーも何回か燃えています。

これは別に商品車が燃えたわけではなく、キャリアカーそのものが燃えています。みなさまは運転時にあまりしていないと思いますが、「引きずりの状態」と言い、サイドブレーキを引きながら運転するとスピードが出ません。ここで摩擦により熱量が起きるという現象が、キャリアカーの後ろのタイヤで起こります。これによって熱を持ち止まった瞬間に一気に火が出て、我々のトレーラーも何度か燃えています。

昨年、バッテリーを作っている会社の社長と意見交換しました。バッテリー車は燃えるかと質問したところ、「燃える」と回答いただきました。どのような時に燃えるのかと言いますと、充電中だそうです。実際に燃えたのか聞いたところ、まだ燃えていないそうですが、燃える覚悟をしているとのことです。

現在、世の中はEVの新車が多く、中古はあまり出ていません。しかし中古が出始めると、輸送中に電欠を起こすと下ろせないという課題がありますので、輸送しながら充電できる仕組みを作ることができないかと考えています。

これはそれほど難しい話ではなく、キャリアカーの回生エネルギーによって充電できればキャリアカーから下ろすことができます。これを先ほどの社長に聞いたところ、非常に引火の可能性が高いという回答でした。やはり燃えることが一番のリスクだと思います。では、安全品質管理をしている柴崎に、コメントを求めたいと思います。

柴崎康男氏(以下、柴崎):先ほどの話にもありましたが、電気自動車は重くなります。今社長がご説明しましたが、重くなるとトレーラー側のブレーキに重さがかかりますので、そちらが燃えるほうがリスクだと思います。そこで、「Zモデル」という対策を打ったトレーラーを作りました。商品車は、充電をしなければ燃えるリスクはそれほどないのではと個人的に思っています。

逆に、電動車は操作方法が非常に難しいのです。今までこちらにあったスタートボタンが反対側にあるなど、操作を間違えて最初のところでミスが起きる事故が実際に起きています。そのような事故は、新車が出る前にきちんと勉強することで防げると思っています。

また、リスクというより、弊社の物流センターにきちんと充電装置を付けるなど、費用がかかるといった話がいくつかあるだけだと思います。

北村:「運べなくなる、重い」と先ほどお話ししましたが、海上コンテナではよく、後ろのタイヤが1本ではなく2本、3本、いわゆる1軸ではなく2軸、3軸になっていることがあります。

軸が多くなれば重量を多く乗せられるのですが、有料道路の料金が1.6倍に跳ね上がります。この費用をお客さまに負担してもらうのは大変なことだと思います。したがって、この重さの対策が、リスクというよりは、どのようにするか考えるべきポイントだと思います。

もう1つのご質問は、バッテリーのリユースを含めたような新規の事業についてでした。グループ戦略本部の髙橋からコメントします。

髙橋俊博氏:新規事業においては、常に新しいビジネスをキャッチするかたちで進めています。現在、リユースに関しての新規の話は進んでない状況です。ただし、新しいことが起こると、当然そこにはビジネスが起こりますが、リスク回避で早々に撤退する可能性もあります。

そのようなリスク投資といった側面もあると思いますので、新しいことはチャンスでもあるのですが、その見極めは慎重にした上で、進めていきたいと思っています。

北村:電気自動車周辺の事業を組み立てるのは難しいものです。今のバッテリーに関して言いますと、各メーカーのバッテリーの保管は非常によいビジネスとは思いますが、おそらくメーカーが自ら行うと思います。

電気自動車の一番の課題は充電時間です。いわゆるバッテリーパックそのものを入れ替えてしまう方法は中国では認められていますが、日本では認められていません。もう少し考えると、個人がバッテリーを2つ持つ方法が考えられます。例えば「リーフ」という車のバッテリーそのものをもう1つ持ち、それをどこかに預けるなどのサービスが発生するかもしれません。

いずれにしても、我々は今バッテリーの勉強をし始めたところです。運ぶ以上は、バッテリー車がどのようなものなのか知る必要があります。先日、「リーフ」を中古で2台ほど購入しました。今、小倉本部長に乗っていただいていますが、私のお願いは一度「電欠してほしい」です。「リーフ」では、どうやら電欠すると、カメマークが出てくるようなのです。カメを見たいのですが、小倉さん、一言お願いします。

小倉:「大通りで電欠しろ」と指示をいただいているのですが、直近で残4パーセントで充電してしまいました。ちなみに新型ではカメが出ないそうです。ただし、実際乗ってみて、非常にスムーズで想像以上に電気自動車は普及するだろうという実感を持ちました。

特に、一戸建てで充電設備を作ると政府の補助金が出ます。このようなことがもし進めば、かなり普及速度が上がるだろうと思います。そうすれば、我々も車を輸送する機会がこれからますます増えていきますので、その準備はきちんとしなければいけないと実際に乗ってみて痛感しました。

質疑応答:将来の見通しについて

質問者3:久しぶりに説明会を開催していただき、楽しみにして参加しましたが、懸案事項が多く大変だと感じました。何か「こんなおもしろい話がある」「こんな楽しみがある」といったお話はないでしょうか?

北村:グリーン化あるいは働き方改革に向けてお話をしました。これは逆の見方をすると、今まで当たり前のようにしてきた仕事を変えるため、これはかなり「おもしろいこと」だと思います。先ほどお話ししたドッキング・リレー輸送の二直体制など、このような働き方改革の法案がなければ考えもしなかったという意味で、これができると相当おもしろいと思います。

言い方が危機感を煽っているとすれば、ご質問のような認識になるのでしょうが、逆の見方をすると、かなりおもしろいビジネスが生まれてくると思います。例えば、この電気自動車もまさしくそうです。360度でいろいろなことが起きるため、さまざまな人がビジネスに入ってきます。今回のソニーとホンダの提携なども、まさしくそうです。ホンダのディーラーでは売らないと思います。

今後、CASEやMaaSがもっと加速した場合、各販売会社はどのようにして売り、お客さまはどのようにして買っていくのでしょうか? それによって我々の運び方も変わりますので、常に市場の動きを見ながら、前へ前へ進んでいくおもしろさがあると私は思っています。

例えば今、路上の荷扱いの問題が非常にクローズアップされています。なぜこれが起こるのかと言いますと、店舗が狭いためです。昔はセールスマンが車をご自宅に届けていましたが、今はお客さまにショールームに来てもらい、そこで受け渡します。

例えばホンダは、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの前の広大な土地に納車ポイントを置きます。お客さまに来ていただいて、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのチケットを渡して、「一日遊んできてください。いつ来ていただいても納車できるように用意しています」という発想で取り組んでいます。これはすばらしい発想です。

そのように、売り方、買い方が変わると、運び方が変わります。つまり店舗に届けなくてよいのです。その広大な土地に持っていけばよいのです。これを各社の壁を越えて行えば、いろいろなことが起きるだろうと思います。

電気自動車では、カーボンニュートラルという話もあります。まだ我々はカーボンニュートラルに向けての数値目標は作っていません。大型トラックがEV、水素、ハイブリッドになるためには、3年から5年かかると言われています。

また、最終的にカーボンニュートラルを陸送業界でするのであれば、空車の区間をいかになくすかということもあります。

そのためには各社、特に元請け会社が協力して無駄な運び方をなくすことが重要です。このようなことを考えると、将来に向かっていろいろなことを考えたくなります。せっかくご質問いただきましたが、「そんな批判的ではない、悲観的ではない」という回答とします。

柴崎:一部メーカーからは、2024年問題で乗務員が不足し運べなくなるなどいろいろな課題に対して、弊社がどのような対策を行おうとしているのかと質問を受けています。

一緒に情報共有しながら、きちんと理論的に説明がつけば、費用の一部を負担していただける方向になってきているのはよいことで、2024年問題があったからこそ、そのような動きになっているのではないかと思います。

北村氏よりご挨拶

北村:現在、車の流通量がなかなか回復してこないという課題、また、ロシアのウクライナ侵攻による原油の高騰という非常に厳しい経営環境にはありますが、ゼログループ従業員一丸となって、安心と安全とともにこの繁忙期、車を運び切ることで進んでまいりますので、引き続きご支援、ご協力を宜しくお願いしたいと思います。本日は誠にありがとうございました。

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