2022年1月29日にログミーFinance主催で行われた、第30回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 特別講演・株式会社FUNDINNO(旧:株式会社日本クラウドキャピタル)の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社FUNDINNO 代表取締役 CEO 柴原祐喜 氏

会社概要

柴原祐喜氏:あらためまして、日本クラウドキャピタルCEOの柴原と申します。本日は、我々の事業のサービス内容について簡単にご説明させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

日本クラウドキャピタルは、2015年11月26日に設立しています。金融商品取引業の登録におよそ1年半の時間を費やし、サービスの開始時期としては2017年から本格始動しています。

主なサービスが3つあり、1つが株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」の提供です。日本で初めて第一種少額電子募集取扱業務という金融商品取引業としての登録を受け、国内第1号業者として運営を開始しました。

その他のサービスとしては、「FUNDOOR」という経営管理ツール、また「FUNDINNO MARKET」という未上場株のセカンダリーマーケットを運営しています。こちらは同じく業登録が必要で、2021年10月に第一種金融商品取引業、いわゆる証券会社としてライセンスの登録を受け、サービスを開始しています。

日本クラウドキャピタルが取組んできた3つの課題

我々がどのような会社かと言いますと、「フェアに挑戦できる未来を創るために」として、特にスタートアップ関連企業を応援したいという思いのもとに、課題を3つ掲げて解決を図っています。

1つ目は日本のリスクマネーの供給量が少ない、2つ目に情報の非対称性があり上場株式市場が信頼されないという点があります。3つ目は未上場株の流動性が乏しいという点で、この3つの課題解決を図っています。

日本と米国のベンチャー企業への投資

背景としては、まず日本のリスクマネーの供給量があります。米国と比べると、ベンチャーへの出資やリスクマネーの供給量に雲泥の差がついています。

ベンチャー投資市場は拡大するものの、調達社数は伸び悩み

また、昨今はベンチャー出資が非常に注目を帯びているものの、企業の成長ステージ別に見ると、ミドルやレイターと言われる比較的IPOに近い広範な企業にお金が集まる傾向があります。シードやアーリーと言われる、不確実性が高く資金ニーズの高い領域には、リスクマネーの供給量が追いついていません。

国内のリスクマネー供給構造

そのような問題を解決するため、まずはリスクマネーの供給構造の見直しに解決策を見出しました。スライドに記載しているのは、経済産業省が出しているリスクマネー供給に関する図で、家計から未上場企業へどのようにお金が流れるのかを表しています。

未上場企業目線で見ると、記載のように、家計からお金が流れてくるためには非常に複雑なルートを取っており、資金調達手段も限定的でした。

家計から未上場企業への直接投資①

このような構造的な問題を解決するため、家計から未上場企業へ直接お金が流れるシンプルな仕組みを作っていこうと取り組みました。その手段の1つとして株式投資型クラウドファンディングを選択し、運用してきました。

見方を変えると、個人の投資家が直接ベンチャー株やスタートアップ関連銘柄を買うことができるという世界を構築しています。これまで個人の投資家にとって、ベンチャー出資は狭き門でしたが、我々がこのベンチャー出資をいわば民主化させていくという思いで、このような構造を作っていきました。

解決策:家計のお金を未上場企業に届けることを可能に

スライドに示しているのは、我々が運用している株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」です。こちらで1つ目の問題の解決を図っています。

家計から未上場企業への直接投資②

2つ目は、未上場株式市場ならではの問題です。上場企業・未上場企業の情報開示を比較すると、大きな差がついています。こうした情報に関する非対称性の問題を、いかに解決していくかが、我々が抱えてきた課題です。

解決策:投資家と企業の情報の非対称性を解消

解決策としては、「FUNDOOR」というツールを用いています。どのようなツールかと言いますと、起業家と株主の情報やコミュニケーションの質を高めることにより、情報の非対称性の問題を解決していくものになります。

クラウド経営管理ツール FUNDOORとは

機能としては、事業計画書を作ることができます。それに対して予実管理ができ、その予実データを簡単に株主に共有できる仕組みになっています。その他の機能としては、オンラインの株主総会機能や、資本政策の作成・株主名簿の管理が実現できるサービスになっています。

未上場株式投資における循環サイクル

未上場株の流動性が乏しいという問題について、我々がサービスをご提供する中で常に意識しているのが、リスクマネーの循環です。

家計や個人の投資家から未上場企業にお金が流れる仕組みを、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」が担っています。「FUNDINNO」は、資金調達した会社が成長していくためのフォローアップです。さらに情報の非対称性の問題を解決し、未上場株式市場の信頼を高める役割を「FUNDOOR」というサービスが担っています。

最後に、投資家にお金を流動させていかなければ、当然リスクマネーの循環が成り立ちません。この分野の解決方法は3つあります。

一般的なものが、EXITと呼ばれるIPOやM&Aの領域です。我々にはプロのプレイヤーも多くいるため、そのプロのプレイヤーとアライアンスを強化することで、EXITの可能性を高める活動をしています。

一方で、1つだけ仕組み化できる分野があります。未上場株の売買市場を我々自身が運営することによって、流動性の実現を高めることです。我々はお金の流動の場を創出し、また一巡、二巡、三巡するにつれて大きくなるリスクマネーの安定性の拡大に努めることを意識しています。

未上場株式投資における循環サイクル完成へ向けて

スライドに示しているのは、「FUNDINNO MARKET」という名前で運営している未上場株の売買市場です。

2021年12月8日サービス提供開始

こちらは2021年12月8日にサービスを開始しています。

「FUNDINNO MARKET」とは

「FUNDINNO MARKET」はどのようなものかと言いますと、株主コミュニティ制度を利用した、ネットで注文できる未上場株のセカンダリーマーケットです。

「FUNDINNO MARKET」初月の実績

2021年12月8日にスタートして、今は第1回目のマッチングが完了した段階です。サービス開始直後は安定した運用を行うため、4銘柄から開始しています。

今回の取引のトピックは、7.8倍の値上がり事例かと思います。投資家が「FUNDINNO」で2018年に株を購入し、2022年の現在「FUNDINNO MARKET」で売却した結果、今回の事例となりました。4銘柄全体での約定金額は600万円ほどになっています。

「FUNDINNO MARKET」取引の特徴

「FUNDINNO MARKET」の特徴は、仕組みが大変シンプルだということです。まずは銘柄ごとに「株主コミュニティ」に個別に参加していただきます。このコミュニティに参加した方同士での相対取引が可能となり、すべての取引がオンライン上で完了するという仕組みになっています。

FUNDINNO MARKET 株主コミュニティの組成と参加

このコミュニティに参加するためには、当然投資家サイドと発行会社サイドの両者に対する一定の審査基準があります。審査に通過した方だけが、このコミュニティに参加ができるという仕組みになっています。

FUDINNO MARKET 取引の流れ 1株主コミュニティ銘柄一覧画面

スライドは実際のコミュニティの参加画面で、投資家ユーザーとしてまだ何もコミュニティに参加していない状態です。一つひとつ各銘柄に参加することも可能ですが、すべて同時に申込みたいという方のために、一括申込みボタンも用意しています。この一括申込みボタンを押していただくと、参加していないコミュニティにも、同時に参加できるという仕組みです。

各種コミュニティに参加し、プロセスを進めていただくと、最後にそのコミュニティ銘柄に関する計算書類や、事業報告等が閲覧できるようになります。注文情報とプラスして、売値と買値を取得できるようになっています。

これらの情報をもとに、株式の売買注文依頼書を作成すると、注文が完了となります。注文完了後はマッチング期間があり、売値と買値がマッチングすると、取引完了になるという仕組みです。

【私募での大型調達】※2022年開始予定※

こうした非上場株のセカンダリーマーケットは、海外でも非常に注目されていますが、日本はまだまだ2周、3周も遅れていると言われています。海外の事例とあわせまして、今後は非上場株のセカンダリーマーケットの可能性を国内でも追求していきたいと考えています。

まず、想定される使い方のイメージについてですが、IPOやM&Aを目指す会社にとってのステップアップ市場としてご活用いただきたいと考えています。従来、マザーズやTOKYO PRO Marketの下でこのような資金調達ができ、かつ非上場株の取引ができる市場というのは限定的なものでした。これから新たな市場、ステップアップ市場としての役割を増していきたいと思っています。

使い方としては、例えばプライマリーマーケットにおける「FUNDINNO」を通して、資金調達していただくとともに、成長ステージが変わるごとに株主に売り出しの場を与えていただくことで、「応援したい」という株主のニーズに応えていける売買市場にできればと考えています。

その他には、ベンチャーキャピタルとも連携し、ファンドの償還期限を迎えてしまった銘柄に対し、一部の売り出しの場を提供するマーケットに成長させたいと考えています。

【持続的な成長をする未上場企業の株式マーケット】

それ以外の使い方として、今回のように第3のEXITの場ができることで、エクイティファイナンスの対象先が増加すると考えています。つまり、エクイティファイナンスが実行される企業は、IPOやM&Aが可能で、明確なEXITプランを有する会社だけに限定されていました。

したがって、日本で最も多いと言われるカテゴリーの中小企業には、なかなかエクイティファイナンスが実行されないという背景がありました。しかし、今回構築したような第3のEXITの場を創出することにより、エクイティファイナンスの可能性を広げていきたいと考えています。

広がるFUNDINNO MARKET 活用企業イメージ

こちらは活用イメージの例を記載しています。1つ目がスライド左上の「IPOやM&Aを目指すベンチャー企業」で、2つ目が右上の「地域経済を支える中小企業」に活用の場を広げていくことです。

例えば社歴が長く、地方で有名な非上場企業は、株式の承継が進んでいくごとに株主数が増え、結果として株主が点在してしまうといった課題がありました。このような会社では株主を整理する必要がありますので、「FUNDINNO MARKET」をぜひ活用していただきたいと考えています。

その他の使い方の活用イメージとしては、地域で活動されている会社を支えるための株主構成を実現していきたいと思っています。これについては北陸鉄道の事例があります。

すでにコミュニティで運営されているのですが、北陸鉄道に関しては沿線に住む方々、もしくはその沿線に通学される方々が株主になっています。株主優待として回数券や定期券の割引などが付いており、沿線で働く方や、通学される方のご両親が購入されます。

当然、規模的には大きくないため、一定の流通が必要ですが、沿線から引っ越しをされる場合は沿線に新たにお住まいになる方や、もしくは学校を卒業された方の親御さんから新たに進学される方の親御さんへ株式を譲ることで、流通性を高めていくという事例が出てきています。

3つ目の活用イメージは左下の「社会的課題解決を目指すソーシャルベンチャー」です。昨今、ESGやSDGsの観点から、ソーシャルベンチャーへの出資が注目されているものの、一般的には低成長や明確なEXITがない会社が多いため、そうした会社にもエクイティファイナンスの可能性を広げていただければと考えています。

資金調達の方法として、課題に共感してくれる株主がいれば、資金調達が成功します。株主目線からはEXITが求められますが、今回のような第3のEXITの場を設けることで、株主が安心してその会社を応援できる環境作りをしていければと思います。

4つ目の事例は、右下の「熱狂的なファンを持つ未上場企業」です。具体的なケースとして、クラブチームを運営されているような会社にぜひとも利用していただきたいと考えています。

例えば、海外におけるサッカーのクラブチームの事例です。地元の方々が株主となり、株主という立場からクラブチームを応援するといった図式が成立しています。我々もこうした第3のEXITの場を活用し、地域創出を含めた貢献に努めていきたいと考えています。

未上場株式の民主化へ

簡単ではございますが、以上が我々のサービス内容になります。みなさまご清聴いただき、誠にありがとうございました。

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