ロボアドバイザー(以下、ロボアド)元年となった2016年。大手金融機関も相次いで参入しており、2017年は本格的な普及が期待されています。

進化を続けるロボアドの最新動向を、先行する米国の動きを交えてまとめてみました。

米国は業界再編による転換期、ロボアドは標準的な金融サービスへ

日本ではロボアド元年と言われた2016年、米国では業界再編がスタートしており、大きな転換期を迎えている模様です。

ロボアドの先駆者と言わるウェルスフロントの創業が2011年12月ですので、米国といえどもその歴史はまだ浅いといえますが、2015年以降、先行していたベンチャー企業のエグジット(会社売却)が相次いでおり、自力でのシェア拡大に見切りをつけて創業者利益の確保や投資資金を回収する動きが始まっています。

一方で、既存の大手金融機関がベンチャー企業の買収などを通じて本格的に参戦してきています。先行したバンガードやチャールズ・シュワブに続き、2016年にはゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、ウェルズ・ファーゴといった米国を代表する金融機関が次々とサービス開始を発表しています。

こうしてみると、現在の米国でのロボアドはスタートアップ企業が提供するニッチなサービスから標準的な金融サービスへの移行期にあると言えそうです。

日本では手数料の高さが普及のネックか

個人金融資産が1,700兆円と言われている日本ですが、ロボアドの市場規模は2016年末でも200億円程度とフィンテックの一つとして知名度こそ上がった観はありますが、実際の利用はまだ進んでいないのが実情です。

ネックの一つとして手数料の高さが挙げられています。米国での手数料は運用残高の0.25%が標準的であり、中には手数料がゼロというサービスもあるのに対し、日本では1.0%程度が主流となっています。

長期に安定的なポートフォリオを組むのであれば、銘柄の入れ替えやリバランス、リロケーションもそれほど煩雑ではなく、手数料はフィー・ベース(運用残高に応じて定率で支払う報酬)よりもコミッション・ベース(商品を売買ごとに支払う手数料)のほうが有利との考え方もあります。

日本では独立系のベンチャー企業と大手証券がほぼ同時にサービスを開始していますが、現在はまだ草創期であり、群雄割拠の状況にあると言えます。

米国での流れを踏まえるとと、今後は金融機関での標準的なサービスとして広がることが見込まれますので、こうした動きを通して既存の手数料がサービスに見合う水準なのかどうかが試されることになりそうです。

人的サービスとの融合

一方、米独立系最大手であるベターメントが追加料金を支払うことでファイナンシャル・プランナー(以下、FP)からの助言サービスを開始するなど、最近の米国ではロボアドと人的サービスは融合される方向にあります。

ロボアドでの運用残高でトップを独走中のバンガードは当初からビデオチャットによる非対面型の有人アドバイスを提供しており、チャールズ・シュワブなど他の金融機関も追随しています。

今後は銀行や証券会社など、既に対面サービスのインフラが整備されている金融機関への普及が見込まれていますが、これら既存の金融機関では対面サービスの補助的な役割としてロボアドが位置付けられています。

進むサービスの総合化

当初はポートフォリオの最適化が主な役割だったロボアドですが、リバランスやリロケーションへと守備範囲を広げ、現在はFPが担うほぼすべての役割を果たすまでに進化しています。

たとえば、住宅ローンやクレジットカード、年金、保険など資産のみならず、負債も考慮に入れて投資家のリスク許容度を測り、ベストな資産運用を導き出すサービスもあります。また、相続も含めた税金対策・節税対策なども取り入れられています。

これまでこうしたサービスはFPに委ねられてきましたので、すわ“ロボアドの普及でFPが失業か”と思われるかもしれませんが、これまでのところそうした動きは限定的であり、むしろ投資家のすそ野が広がったことでFPへの需要が増しているともいわれています。

これは、ロボアドはあくまでツールであることを示唆しています。チェスの世界チャンピオンでも人工知能(AI)には勝てない時代となっていますが、人間とAIが協力するとAIには勝てるといわれています。

つまり、人間がAIを利用できるのであれば、AIを上回る成果が期待できるということです。同様に、ロボアドを利用することでより高い効果が得られるかもしれません。

ロボアドにすべてを任せるのも一つの考え方ではありますが、現状では利用するものであってすべてを任せるには時期尚早な模様です。有効なツールではありますが、上手に利用することでより効果が上がる可能性があります。

まずはNISAやiDeCo(イデコ)でスタート

米国でのロボアドの普及は個人年金での利用が主導してきた経緯がありますので、日本でもNISAやiDeCo(以下、イデコ)でスタートするのはよい考えと言えるでしょう。

すべてに当てはまるわけではありませんが、ロボアドの特徴として少額でも始められること、そして長期で安定的な投資、すなわち年金資産の運用に向いているということが挙げられます。

AIを利用したヘッジファンドが市場平均をアウトパフォームするのに苦戦していることからもうかがえるように、ロボアドを利用したからといって必ずしも儲かるわけではありません。ロボアドの利点は保守的な運用と投資初心者向きという点にあります。

すべてのロボアドがNISAやイデコに対応しているわけではありませんが、たとえば松井証券のロボアドはNISAに対応しており、みずほ銀行はイデコに対応したロボアドを提供しています。

過去のデータを分析し、最適なポートをフォリオを構築するためには、相応の知識と経験が必要であり、何よりも時間がかかります。さらに、リバランスやリロケーションなど、ちょっと面倒なことも継続的に行わなくてはなりません。

こうした煩雑な手続きを一切引き受けてくれるわけですから、これから投資を始めようと考えている投資初心者には、ロボアドの利用は大いに価値があるといえるのではないでしょうか。

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LIMO編集部