年金だけで老後生活は大丈夫?
実際の受給額の様子を眺めてきました。平均や分布の様子を見て、感じ方は人それぞれでしょう。女性の厚生年金の低さに対して、「うちは共働きだから大丈夫」と感じた方もいるかもしれません。
ただし、女性の社会進出が増えたと言っても、男女の給与格差は依然と存在します。国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によれば、平均給与は男性の532万円に対して女性が293万円。徐々に埋まりつつあるとは言え、この差は老後の年金額に響きそうです。
また男女差だけではなく、個人差にも注意が必要です。基礎年金だけの方や、フリーランスとして途中で厚生年金から外れた人などは、男女関係なく受給額が少なくなります。
「老後は悠々自適に過ごしたい」「老後は慎ましく生活するつもり」どちらを想定しているにせよ、年金額によっては老後の備えが必要になるでしょう。
老後のための資産形成を
現在のシニア世代の、年金受給額について見てきました。特に基礎年金しか加入していない方や、厚生年金の加入期間が短い方、年収が低めの方などは、老後の収入が少なくなるかもしれません。
生命保険文化センターの調査によると、老後の夫婦世帯の「最低日常生活費」はひと月22万1000円、ゆとりある暮らしを送る場合は36万1000円が必要とされています。
年金額を「ねんきんネット」などで確認し、想定する老後生活に足りない分を算出してみましょう。その分を自分で備えることになります。
退職までに20~30年の時間的猶予がある場合、資産運用に挑戦してみるのもひとつです。投資というとギャンブルのようなイメージを持たれる方もいますが、今は「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」など、少額からの積立投資を後押しする国の税制優遇制度もあります。
中長期の運用であれば、利息が積み上がるので損失の低減をはかれるでしょう。とはいえ、資産が減るリスクはゼロにできません。余裕資金で行うこと、そして正しい情報を身につけてから行うことが、大原則となります。情報と時間を味方につけて、コツコツと資産形成を始めてみましょう。
参考資料
- 日本年金機構「令和3年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」
- 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
太田 彩子