最高値更新の米株が世界市場を安堵させた1週間

先週(2017年2月6日-2月10日)の世界の株式市場はおおむね上昇しました。主要市場の週間騰落率は現地通貨ベースでTOPIXが+2.1%、米S&P500が+0.8%、独DAXが+0.1%、上海総合が+1.8%でした。

先週の牽引役もトランプ大統領でした。米中電話首脳会談、日米首脳会談を経て、トランプ大統領は経済・外交面で一定の手ごたえを得たと思われます。少なくとも環太平洋地区で互恵的な経済発展を大きく阻害するリスクは後退したようです。そのうえで、米株の重要なドライバーである減税策への期待が高まり、米株は最高値を更新しています。日本株は、好調な決算と円高懸念の後退をうけて主要市場のなかでは最も上昇しました。上海株は、外貨準備の減少や1月の財新サービスPMIの悪化、金融引き締め懸念のくすぶりにもかかわらず、国有企業改革や公共投資への期待からしっかり上昇しています。

アウトルック:米国の政策期待高まる。見え隠れするリスク要因は封じ込められるか

今週(2017年2月13日-2月17日)は、トランプ政権の税制改革期待と好調な決算などを背景に、米中日の株式市場は堅調な推移が期待できそうです。一方、欧州や他の新興国にはリスク要因が見え隠れしています。世界の株式市場のパフォーマンスが二極化していくのかが注目ポイントです。

トランプ大統領の一挙手一投足に目が奪われがちですが、先週の動きのなかで気になるポイントが3つあります。ひとつは欧州リスクの芽です。年初来堅調だった欧州の銀行株が下落しており、欧州株は先週グローバルにみて低調なパフォーマンスでした。今後の欧州主要国の選挙日程も気になります。二つめはメキシコの利上げ、インドの利下げ見送りなど新興国の一部で金融政策の自由度が低下していることです。三つめは金(ゴールド)価格が堅調なことです。先週の相場をドル高、リスクオン相場として捉えるとすると金価格の安定感にはやや違和感を覚えます。

このような環境ですので、米国の1月のマクロ指標(PPI、小売売上高、鉱工業生産、住宅着工)の動向と経済・税制の政策が株式市場の期待に応えるかどうかがまずは重要です。そのうえで、イエレン米FRB議長の議会証言がグローバルなリスク要因を刺激しない穏当な内容にとどまるか注視したいと思います。そうであれば米国における投資採算は従来よりも良くなると考えられ、米国での投資拡大という投資テーマを柱にした相場展開が期待できそうです。

そのうえでトランプ大統領がドイツなどとどう対話をしていくのか、中国がマクロの構造調整と景気対策を持続可能な形で進められるのか、そして中国が対米直接投資を増やしていくのか注目したいと思います。

椎名 則夫