もしトランプ大統領が弾劾されたら

これだけ毎日のようにトランプ大統領に関するニュースが多いと、“もうどうでもいい”とお感じの方もいらっしゃるかと思います。中には、もしトランプ氏がかつてのニクソン大統領のように弾劾されたらどうかと、少し気の早い頭の体操を始めた金融関係者もいます。

それが以下の記事ですが、ここでは仮に弾劾という事態になった場合でも、それは「突発的な事象とならず、長期の議会審議が想定されるため、市場が急落するとは限らない」と指摘されています。

確かに、昨年はブラジルでルセフ大統領が弾劾され辞任に追い込まれましたが、ブラジルの株式市場は、構造改革を期待してむしろ上昇したことを考慮すると、弾劾という事態となってもそれほど悲観的になる必要はないということになります。

もちろん、トランプ政権は誕生してからまだ1か月も経過しておらず、こうした頭の体操を行うのは時期尚早すぎると思いますが、長期的な資産形成を目指す個人投資家にとっては、政治の動きに関する報道に過度に惑わされない姿勢が大切であると考えます。

出所:トランプの暴走でみえてきたサプライズシナリオ(楽天証券)

雰囲気に流されない

トランプ政権に関する話題で少し見逃されがちとなっている欧州の動向についても、目を向けてみましょう。

以下の記事では、英米に続きサプライズが起きるか注目されているフランス大統領選における注目ポイントがわかりやすくまとめられています。

現在の話題の中心は、反EU派である国民戦線のルペン氏が当選するかどうかです。同氏は「ユーロからの離脱、フランスの通貨、新フランス・フラン」を主張しているため、仮に当選すればEU崩壊の懸念が一気に高まり、金融市場も大きな影響を受けるという指摘も目にすることがあります。

ただし、この記事にあるように、仮に現在支持率がトップであるルペン氏が4月23日に行われる第1回投票で勝利したとしても、5月7日に行われる決戦投票では、社会党と共和党が組むことでルペン氏の大統領当選が阻まれる可能性が十分にあることには留意が必要です。

また、仮にルペン氏が大統領選に勝利したとしても、議会にまでその影響が及ばなければユーロ離脱などの政策が直ちに実行されないことも忘れるべきではないでしょう。

いずれにせよ、今年も金融市場は政治に大きく翻弄される可能性が高いものの、雰囲気だけに左右されないことが大切であると考えられます。

出所:フランス大統領選挙、雰囲気に流されない(ピクテ投信投資顧問)

中国の対米輸出の減少リスクは他人事ではない

連日のようにトランプ新政権の政策が話題になっていますが、この記事ではそのポイントが非常にわかりやすく、かつ包括的にまとめられています。

具体的には以下の5点にまとめられていますが、特にここで注目したいのは4番目のポイントです。

  1. 今後は貿易交渉に厳しい姿勢で臨む可能性がある
  2. 財政支出拡大による米ドルの上昇幅は限定的と考えられる
  3. 摩擦を巡り米中に協調姿勢が見られるか
  4. 中国の対米輸出が減少すれば、日本などにも影響が及ぶ可能性がある
  5. トランプ大統領の政策が与える影響は業種によって異なると考えられる

アメリカ商務省により2月7日に発表された米国の貿易統計では、米国の貿易赤字額トップの相手国は中国、そして2番目は前年のドイツを抜いて日本でした。ただし、日本の赤字額は中国に比べるとわずか5分の1にすぎません。

こうした数字を見ると、トランプ大統領は日本の赤字はやや大目に見てくれ、中国叩きに走るのではないかと期待してしまいますが、この記事にあるように、中国の対米輸出減少は他人事ではないことには注意が必要です。なぜなら、中国の輸出製品には、日本から輸入された部品などの「中間財」が使われているからです。

このため、中国の対米輸出が減少すれば、日本などにも影響が及ぶ可能性があることに留意しながら、今後のトランプ政権の貿易通商政策を注視していきたいと思います。

出所:マーケットフォーカス(2017年2月)(アセットマネジメントOne)

 

LIMO編集部