【正解の画像】横三色旗の一段目はオレンジではなく赤。ちなみに国旗の縦横の比率は日本と同じ2:3(WIKIMEDIA COMMONS)

三色旗の元祖といわれるオランダ

 正解は、「一段目の色がちがう」です〈別画像参照〉。

 オランダの国旗は「赤・白・青」の横三色旗です。しかし、400年ほど前には、記事のトップ画像の旗のように、「赤」ではなく「オレンジ色」が三色旗に使われていました。現在の国旗からはなくなっていますが、オレンジ色は、いまでもオランダを表す「ナショナル・カラー」といわれています。

「三色旗」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、フランス国旗の「トリコロール」、つまり「青・白・赤」の縦三色旗ではないでしょうか。しかし、実は三色旗の「元祖」はオランダ国旗といわれています。フランスの三色旗は18世紀末のフランス革命から生まれましたが、オランダの三色旗の歴史は、それより200年以上前の16世紀後半に始まったオランダ独立戦争にまでさかのぼるのです。

 当時、ネーデルラント(現在のオランダやベルギーなどを含む地域)を支配していたのはスペインでした。独立をめざしたこの戦いでは、「オレンジ・白・青」の三色旗が使われましたが、この配色は、戦いを率いたオラニエ公ウィレム(英語読みではオレンジ公ウィリアム)の紋章に描かれた、オレンジ色の房飾りがついた青・白2色の角笛がもとになっています。

なぜ色が赤になったのか?

 1581年には、ネーデルラント連邦共和国がスペインからの独立を宣言し、この「オレンジ・白・青」の横三色旗が国旗となりました。それが記事のトップ画像として入っていた旗で、オレンジ色がオランダを表すシンボルとなったのは、このころからです。

 当時のオランダは海洋国家として大いに発展していましたが、オレンジ色の染料は色あせしやすく、海の上では見分けにくいため、1630年には国旗のオレンジ色が現在のような赤に変えられました(なお、「赤・白・青」の旗自体は、それ以前のスペインとの独立戦争でも使われていました)。

 オランダは、1602年にオランダ東インド会社をつくってアジアに進出し、江戸幕府のもとで鎖国していた日本とも貿易を行いました。オランダ船によって、多くのヨーロッパの文化が、この時代の日本にもたらされ、オランダ商館が置かれた長崎の出島を描いた当時の絵にも、「赤・白・青」のオランダ国旗が確認できます。

 ナポレオン時代にオランダはフランスに併合され、オランダの三色旗は廃止されましたが、ナポレオンの失脚後、1815年にはオラニエ家が王家として迎え入れられ、ネーデルラント連合王国が成立します。それとともに以前の国旗も復活しました。

 オレンジ色は、オランダ人にとって特別な色です。現在でも「国王の日(国王誕生日)」には多くのオランダ人がオラニエ家の色であるオレンジ色を身に着け、街中には国旗とともにオレンジ色の旗が飾られます。

 またナショナル・カラーとしてのオレンジ色は、スポーツの国際大会でも見られます。オレンジ色のユニフォームを着たサッカーのオランダ代表チームは「オラニエ(オレンジ軍団)」の愛称で親しまれ、観客席はオレンジ色のものを身につけたサポーターで彩られます。

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現代のニューヨークに漂うオランダの香り

 オレンジ色を使っていた古い時代のオランダ三色旗のなごりは、実は現代のニューヨークでも見ることができます。

 ニューヨークはもともとオランダ西インド会社によって開発され、1625年にはオランダの首都の名にちなんで「ニューアムステルダム」と命名されました。しかし、その40年後、ニューアムステルダムは南米のスリナムと交換でイギリスに譲渡され、イギリス国王の弟ヨーク公の名を取って「ニューヨーク」と改名されたのです。

 ニューヨーク市の旗は「青・白・オレンジ」の縦三色旗の中央に市章を配したデザインで〈別画像参照〉、市庁舎などの公共施設にいまも掲げられています。

古いオランダ三色旗のなごりが見られるニューヨーク市旗(WIKIMEDIA COMMONS)

 

■〔監修者〕苅安 望(かりやす・のぞみ)
 日本旗章学協会会長。1949年、千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。総合商社に入社し東京本店、ニューヨーク支店、メルボルン支店食品部門勤務を経て、食品会社の取締役国際部長、顧問を歴任し2015年退職。2000年より旗章学協会国際連盟(FIAV)の公認団体である日本旗章学協会会長。北米旗章学協会、英国旗章学協会、オーストラリア旗章学協会、各会員。旗章学協会国際連盟にも投稿論文多数。著書は『世界の国旗と国章大図鑑 五訂版』『こども世界国旗図鑑』(平凡社)、『世界の国旗・国章歴史大図鑑』(山川出版社)など多数。

 

この記事の出典:
苅安望[監修]『国旗のまちがいさがし

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