トランプラリーが続く中、増え始めた強気見通し
米国大統領選におけるトランプ氏の勝利以降、ドル高(円安)・株高が続いています。
この“トランプラリー”が続く中、2017年の株式相場に対する強気派が台頭しており、2017年末には日経平均株価25,000円という予測も出始めました。為替相場の見通しでも、同じく2017年末には130円/ドルという予想もあるようです。
大統領選後、金融市場は事前予測とは全く逆の方向に動いている
しかし、ちょっと待って下さい! 大統領選の開票直前まで、“トランプ氏が勝てば、金融市場は円高・株安の大混乱となる”という見方が圧倒的な主流だったはずです。わずか1か月半前、トランプ新大統領で円安・株高になると予想したら、変人扱いされた雰囲気だったことは確かです。
結局、金融市場で「専門家」と呼ばれる人の多くが予想を外したということです。ただ、予想は100%当たることはありませんし、外れることもあります。いや、外れることの方が多いと言えるかもしれません。それが金融市場だと割り切ることが重要なのでしょう。
トランプ政権では金価格の高騰が事前コンセンサスだった
さて、トランプ氏勝利後に事前予想が大きく外れたのは、為替(金利)や株式だけではありません。金(ゴールド)の価格も、事前予想とは大きく異なる方向に動いています。
思い返すと、大統領選の開票直前まで、トランプ新大統領が誕生した場合、金価格は高騰するというのがコンセンサスだったと記憶しています。実際、一部の外国金融機関は、トランプ政権が誕生すると2017年中に1,850ドル(1トロイオンス当たり、以下同)まで上昇すると予想していました。
大統領選後に大幅な下落基調となった金相場
しかし、トランプ政権誕生が決定したにも関わらず、金価格は大幅下落が続いています。11月初旬に1,300ドル前後だった価格は、現在は1,130ドル前後となっており、1か月半で約▲13%下落したことになります。
2013年5月にバーナンキ前FRB議長が量的金融緩和縮小を表明した際には、その前後に1日で▲9%近く暴落する場面もありました。それに比べれば、現在の下落は確かに大幅下落ですが、“暴落”までは至っていません。それでも、事前の市場予測との乖離(ズレ)があまりに大きいため、戸惑っている投資家も少なくないと推測されます。
なお、円建ての金価格は、円安のために大統領選後でも▲2%程度の下落に止まっています。
ドル高を引き起こしたのはトランプ氏だけではない
しかし、現在の金価格下落は、トランプ新大統領だから下落しているのではなく、ドル高だから下落していると考えるのが自然です。もっと細かく言うと、ドルの先高観が強いからでしょう。
トランプ氏の掲げた政策がドル高を呼んでいることは事実ですが、ドル高を引き起こしているもう1つの要因が米国の利上げです。
FRBによる利上げ実施は、金価格を見る上で忘れてはいけない需要な要素です。金利がつかない資産である金にとって、利上げは最大のマイナス材料です。先日も1年ぶりの利上げが実施され、なおかつ、2017年は3回の利上げ実施見通しが示唆されるなど、金相場にとっては間違いなく逆風です。
昨年末の利上げ実施でも、2016年の金価格は大幅上昇
しかし、逆風だからと言って、いつまでも下落が続くわけではありません。そこが相場の面白い点であり、難しい点でもあるのです。
実際、1年前の2015年12月にも米国で久々の利上げが行われましたが、それを機に金価格は上昇し始めました。英国のEU離脱(ブレグジット)決定後の2016年7月に付けた約1,370ドルは、利上げ実施直前の水準(約1,050ドル)から+30%超の上昇を記録しています。
確かに、大きな政治イベントであるブレグジット直後に高値を付けましたが、現実には年初から大幅な上昇基調となっていました。これは、利上げ実施により悪材料を織り込んだためと考えられます。
FRBの1年ぶりの利上げ実施で金価格底打ちとなるか?
では、今回はどうでしょうか。実は今回も、12月16日の利上げ実施以降、大統領選終了から下げ続けてきた金価格に、若干ではありますが下げ止まりの兆候が見られています。
まだ判断するのは時期尚早かもしれませんが、一本調子の下落トレンドに変化の兆しが出始めているのです。もし、今年2016年のように今後の金価格が上昇するとなれば、それは即ち、ドル安(円高)を意味することになります。
クリスマス休暇の休場が明け、そして、1月のトランプ大統領の就任式を迎え、現在のドル高基調がどこまで続くものなのか注視すべきでしょう。2017年の金価格の動きは、まずはその1点に絞られると考えられます。引き続き、今後の金価格の動向に注目したいと思います。
LIMO編集部