【正解の画像】星の数がちがう。ちなみに国旗の縦横の比率は10:19

実はデザインの変更回数が世界最多の国旗

 正解は、「左上の青色の部分にある星の数がちがう」です〈別画像参照〉。

 アメリカの国旗は、ニュースなどでも特に目にすることが多いと思いますが、答えは合っていましたか? 左上の青地の白い星を数えてみると、正解の国旗には50個あります。一方、記事のトップ画像の国旗は1つ少ない49個。実はこの49星旗は、1959年から60年までたった1年間だけ使われた、「先代」のアメリカ国旗なのです。

 アメリカ国旗は、日本では「星条旗」(英語では「Stars and Stripes」)と呼ばれています。青地の部分の白い五角星は全部で50個あり、赤白の縞(しま)は13本あります。

 この星条旗ですが、実は世界の国旗の中でも「最もデザインの変更回数が多い国旗」だということはご存じでしょうか? アメリカ独立の翌年である1777年に星条旗が誕生して以来、デザイン変更回数は、なんと27回。この星条旗の変化には、建国から現在にいたるアメリカの歴史が余すことなく反映されているのです。

独立当時の13州から「星と縞」が増えていく

 スペインのイサベル女王の援助を受けたクリストファー・コロンブスが、1492年に現在の西インド諸島(バハマやキューバ、ジャマイカなどを含むカリブ海の島々)に到達し、その後、16世紀中ごろまでに、イギリスをはじめとするヨーロッパの国々が、北アメリカの東海岸に植民地を開きました。

 1775年には、イギリスからの独立を目指して独立戦争が起こり、その翌年には東部の13の植民地による独立宣言が行われます。そして1777年、ニューヨーク州など独立宣言に参加した13の州を象徴する13個の星と13本の縞による「初代」の星条旗がつくられ、1788年には合衆国憲法が発効してアメリカ合衆国が誕生するのです。

 その後も北アメリカの東海岸から西へ向かって、進出はさらに続きます。1795年にはケンタッキー州、バーモント州が合衆国に加入し、星条旗のデザインは15の州を表す15個の星と15本の縞になりました。当時の国旗は縞の数が今より2本多かったということになりますね。

15星15本縞から、50星13本縞にいたる歴史

 1818年になると、インディアナ州をはじめとする旧フランス領の5州が合衆国に加入し、星は20個に増えました。同じく縞も20本に……と言いたいところですが、これ以後は、独立当初の参加州に敬意を示して、縞は13本に固定されることが決まり、現在に至ります。

 州が今後も増え続けるであろうことを見越して、デザイン的に縞をこれ以上増やすことは難しい、という判断があったのかもしれません。

 1861年には、奴隷制度をめぐる南部と北部の対立から南北戦争が起き、1863年には、リンカーン大統領が奴隷解放を宣言。そして、1865年、北軍の勝利によって4年間続いた南北戦争が終結します。南部の州も合衆国に参加し、星条旗の星の数は36個となりました。

 その後も合衆国に加入する州は増え続けます。

 1867年にはロシアのロシア・アメリカ会社が所有していたアラスカをアメリカが格安で購入し、1959年にアラスカが州に昇格して、星の数は49に。また、1898年にアメリカに併合されたハワイが1959年、州に昇格し、これによって1960年に「星条旗」の星の数は現在の50となったのです。

この記事の出典元書籍(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)

星条旗は発展し変化し続けるアメリカそのもの

 このように、アメリカは州が増えるたびに、星条旗の星の数を増やしてきました。

 デザイン変更にあたって大切なことは、「星をどのように配置すれば美しく見えるか」ということです。現在の星条旗は50個の星が互いちがいに整列しています。しかし、星条旗の星の並びはこうした「整列」バージョンだけではありません。これまでに、円形、星型、ひし形など、さまざまな星の並び方の星条旗が存在しました。また星の数が少なかったとき、たとえばイリノイ州が加わる前、1819年まで使われた20星旗は、星の大きさも今より大きかったのです〈別画像参照〉。

1818年から1819年まで1年間だけ使われた20星旗

 星条旗は、発展し、変化し続けるアメリカそのものといえます。もしかすると将来、いまとはちがうデザインの星条旗を見ることができるかもしれませんね。

 

■〔監修者〕苅安 望(かりやす・のぞみ)
 日本旗章学協会会長。1949年、千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。総合商社に入社し東京本店、ニューヨーク支店、メルボルン支店食品部門勤務を経て、食品会社の取締役国際部長、顧問を歴任し2015年退職。2000年より旗章学協会国際連盟(FIAV)の公認団体である日本旗章学協会会長。北米旗章学協会、英国旗章学協会、オーストラリア旗章学協会、各会員。旗章学協会国際連盟にも投稿論文多数。著書は『世界の国旗と国章大図鑑 五訂版』『こども世界国旗図鑑』(平凡社)、『世界の国旗・国章歴史大図鑑』(山川出版社)など多数。

 

この記事の出典:
苅安望[監修]『国旗のまちがいさがし

クロスメディア・パブリッシング