女性の「生涯所得格差」~出産退職で2億円の差が出るケースも~

女性は妊娠、出産、育児によって、仕事を辞めてしまうケースが未だに多いのが現実です。

一旦仕事を離れると、再スタートした時に今までのキャリアが活かせず、低賃金で働くことを余儀なくされたり、パートなどの非正規雇用の仕事にしか就けなくなるなど、就業環境の悪化が懸念されます。

ニッセイ基礎研究所の2016年のレポート「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」によると、女性が大学卒業後、同一企業で働き続けた場合の生涯賃金は2億3660万円、退職金(2156万円)を合わせると、生涯所得は2億5816万円になると推計されています。

また、同条件の女性が二人の子を出産・育休を2回利用し、フルタイムで復職した場合の生涯賃金は2億1152万円で、退職金(1856万円)を合わせた生涯所得は2億3008万円と推計され、出産なしで働き続けた場合と比べて生涯所得は1割しか減っていません。

一方で、第1子出産後に退職し、第2子小学校入学時にパートで再就職した場合の生涯賃金は5809万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は6147万円になると推計されています。

出産退職はおよそ2億円のマイナスという見方もできるということです。

出典:ニッセイ基礎研究所「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」

さいごに

育児休業を利用して、フルタイムで復職をした場合は、休業なしで続けた場合と比べて生涯所得が1割程度の減少であるのに対し、出産によって退職した場合は、2億円減少するという調査結果は、女性の働き方において、非常に考えさせられる問題です。仕事と家庭の両立というスローガンは随分と前から叫ばれていましたが、女性の育児休業の取得率が8割台であるのに対し、男性の育児休業の取得率は6.16%(平成30年度)であるなど、まだまだ女性側に大きく負担がかかっているのが実情です。(参照:【図】育児休業取得率の推移)

出典:厚生労働省「育児休業制度について(令和元年)」資料出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」

しかし、男性の育児休業は少ないながらも年々取得率が上がってきているのは希望が持てます。

女性が仕事を続けることは、生涯所得格差が示すように、経済的な自立がはかれるだけでなく、女性のキャリアプランを考える上でも大切なことです。そのためにも育児休業制度を上手に利用してほしいと思います。

参考資料

石倉 博子