トランプ相場で沸く中、多くの自動車株が高値更新に至らない

米国大統領選後に起きた“トランプ相場“で、数多くの主力株が大幅上昇となり、次々に年初来高値を更新しています。一方、そうした活況相場の中で、輸送機器、精密機器、医薬品などでは、未だ高値更新には程遠い銘柄が少なくありません。

特に、為替インパクトの大きい自動車株は、依然として冴えない状況にあります。確かに、トランプ相場での円安進行に伴い、株価は急ピッチで回復していますが、それでも高値更新が覚束ない銘柄ばかりです。改めて、大統領選までの株価下落がいかに厳しかったが分かります。

マツダの2017年3月期業績は大幅減益の可能性大

その中でも、2016年に不振が目立ったのがマツダ(7261)ではないでしょうか。

2016年は2月以降の円高進行の影響を受けて、一部を除き、自動車メーカー各社の業績は大幅に悪化しています。輸出比率の高いマツダも例外ではなく、先の2017年3月上期(4-9月期)業績は、営業利益が対前年同期比▲30%減になるなど苦戦を強いられました。また、2017年3月通期業績も、営業利益が同▲34%減見込みへと下方修正しています。

実際には、11月中旬からの円安進行を考慮すると、この会社予想を上回る可能性は高いと言えましょう。ただ、為替予約とのタイムラグ(時間差)もあるため、上ブレする利益額は思ったほど大きくないと考えられます。

欧州経済の不安定さも反映して株価パフォーマンスが低迷

また、2016年は円高以外にも、国内販売の不振や欧米での販売伸び悩みなど、マイナス材料が少なくない1年でした。特に、英国のEU離脱や難民問題で欧州経済に不透明感が強まったことは、欧州向けの売上比率が高く、欧州市場で一定の強みを持つマツダには、大きな痛手となったはずです。

こうした状況を反映して、株価のパフォーマンスも低迷しています。2015年末と比較すると(12月14日終値、以下同)、株式市場全体(TOPIX)がほぼ横這いまで回復しているのに対して、マツダ株はまだ▲22%下落しています。

マツダ株価(青)とTOPIX(赤)の過去1年間の推移

この下落率は、自動車株の中では三菱自動車の▲40%に次ぐ大きさであり、マツダの次に大きい下落率は日野自動車の▲14%になります。三菱自動車は不祥事による急落影響があったことを勘案すると、マツダの株価低迷が見て取れるのではないでしょうか。

『日本カー・オブ・ザ・イヤー』では最終選考に残れず

さらに、業績や販売台数と直接的な関連性は低いものの、例年高いプレゼンスを誇ってきた“賞レース”でも今一つの結果でした。確かに、3月には「マツダ ロードスター」(海外名:Mazda MX-5)が『ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー』と『ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー』をダブル受賞するなど、存在感を示しました。

しかし、先日の『2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤー』では最終選考の10車に残ることができず、『2017 RJCカー・オブ・ザ・イヤー』でも敗退しました。さらに、過去にマツダの技術力が評価されて受賞した様々なテクノロジー関連の受賞もほとんどなし(注:筆者調べ)となっています。

このように2016年は、マツダ、マツダの株主、マツダのファンなど多くの関係者にとって、なかなか厳しい1年だったと言えるかもしれません。さて、来年2017年はどうでしょうか?

2017年は主力モデルの新型「CX-5」に大きな期待

まず、商品ラインナップでは、グローバル展開する主力車種「CX-5」のフルモデルチェンジが行われます。既に海外のモーターショーでお披露目されていますが、評判は上々のようです。「CX-5」は収益面から見ても非常に重要なモデルであり、販売台数の増加は大きな業績押し上げ要因になると期待されます。

また、この新型「CX-5」は各方面で実施されている“カー・オブ・ザ・イヤー”系の受賞候補にも十分なり得ましょう。

円高リスクは後退するも、欧州経済の安定は必要不可欠

外部要因を見ると、米国の大統領選以降の円安進行により、輸出採算は大きな改善が見込めます。もちろん、再び円高にならないという前提が必要ですが、円高抵抗力は着実に上がってきていると見ていいでしょう。

一番の心配は、やはり、マツダが高いプレゼンスを誇る欧州市場の動向です。先に実施されたイタリアの国民投票などからも分かる通り、欧州の政治・経済はまだ安定していません。

2017年はフランスの大統領選やドイツの総選挙などが行われるため、依然として予断を許しません。欧州経済がさらに不安定となり、通貨のユーロ安(円高)が進むことが一番のリスクです。

トランプ氏が勝利した11月9日以降、マツダの株価は+33%上昇するなど(大統領選直後との比較)、既に回復を織り込み始めていると見ることもできます。現在の株価回復が正しかったのか、あるいは、期待先行で先走り過ぎたのかは、1年後に答えが出てくるでしょう。

 

LIMO編集部