2021年5月13日に行われた、アリアケジャパン株式会社2021年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:アリアケジャパン株式会社 経営管理室 部長 藤田和裕 氏
2021年3月期決算説明会
藤田和裕氏:ただいまご紹介に預かりました、経営管理室の藤田でございます。2021年3月期決算について、説明会資料に基づき、約20分ほどで説明させていただきます。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
ご公表のとおり、当会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大により国内、海外ともに厳しい事業環境に直面いたしました。年度中、国内では2度にわたる緊急事態宣言が発動されました。
海外においても、一部の国でのロックダウンや外出制限等、いまだかつて経験したことがない環境が続き、国や地域によって新型コロナウイルスが業績に与えた影響や回復の度合いもまちまちですが、単体および連結ともに減収減益となりました。なお本題に入る前に、今年の株主総会について1点ご連絡させていただきます。
弊社は、予定どおり6月18日の金曜日に定時株主総会を開催いたしますが、昨年同様新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会場は近隣の施設を借りて行う予定としており、現在最終調整中でございます。株主さまにおかれましては、改めまして近日中にお手元に届く招集通知書をご確認の上、ご理解ご協力をいただけると幸いでございます。
売上高推移(単体・連結)
それでは決算説明会資料に移ります。2ページから5ページの各ページとも、終わった2021年3月期の実績を一番右に置いて、過去4年間の推移を棒グラフでお示ししております。濃い青色が連結で、薄い青色が単体です。まずは、2ページの売上高の推移をご覧ください。
終わった期の実績は一番右のブロックで、右側の濃い青色の連結の売上高は、496億8,400万円で対前年マイナス5.1パーセントです。左側の薄い青色の単体は、385億6,300万円で対前年マイナス6.8パーセントです。
対前年で落ち込んだ単体および中国を、他の拠点で十分にカバーできませんでした。連結の売上高の約8割を占める単体の落ち込みは、対前年マイナス28億円であり、その中でも巣ごもり需要を背景に、加工食品メーカーおよびCBS向けは前年を上回りましたが、外食向けが下回った結果となりました。
営業利益の推移(単体・連結)
次に、3ページの営業利益をご覧ください。同じく一番右のブロックが、終わった期の実績です。連結の営業利益は、100億4,600万円で対前年マイナス14.7パーセント、利益率は20.2パーセントです。一方、単体の営業利益は、74億700万円で対前年マイナス17.7パーセント、営業利益率は19.2パーセントです。これらの利益の対前年マイナスにつきましては、後ほどご説明いたします。
経常利益の推移(単体・連結)
経常利益におきましては、連結は106億7,500万円で対前年マイナス10.4パーセント、利益率は21.5パーセントです。一方、単体は81億1,600万円で対前年マイナス12.1パーセント、利益率は21パーセントです。
親会社株主に帰属する当期純利益の推移(単体・連結)
当期純利益につきましては、連結は72億7,700万円で対前年マイナス13.1パーセントです。単体は55億7,800万円で対前年マイナス15.9パーセントとなりました。以上、売上高から純利益でございます。
【前期比較】 単体業績の概要
次に、単体業績の前期との比較についてご説明いたします。まずは、6ページの単体業績の前年との比較についてです。先ほど申し上げたとおり、単体の売上高は、対前年マイナス28億800万円となりました。新型コロナウイルスの影響を受けた外食向けの減収が大きく、加工食品向けやCBSで充分にカバーできなかったことが、最大の要因です。
四半期ごとで見ますと、各四半期の減収額は減少しており、回復の傾向は見られ、3月単月では昨年のコロナ影響の反動もありますが、3つの販売セクターすべてで対前年を上回りました。次に、利益についてです。営業利益は、74億700万円で対前年マイナス17.7パーセント、15億9,100万円の減益です。
【前期比較】 単体業績の概要〔利益変動要因〕
利益の減少要因につきましては、7ページの階段チャートをご覧ください。営業利益の15億9,100万円の減益の主な要因は、売上の減収による減益がマイナス12億3,400万円、また、原材料比率の高い製品の生産が前年に比べ多かったことによる原材料・コスト増が7億2,500万円です。一方で、労務費や修繕費等、トータルで3億6,800万円のコスト減少の寄与があり、固定費は減少しました。
次に、経常利益の11億1,700万円の減益についてです。利益押し下げ要因といたしましては、ご説明した営業利益の減少15億9,100万円を、為替差益や受取配当金などの増加で一部吸収した結果です。
【計画比較】 単体業績の概要
次に、計画との比較についてです。昨年11月の説明会でもご説明したとおり、通期予想値は国内CBSの、主にカップスーププロジェクトが2021年初頭から全国展開する前提で、下期に変調した意欲的かつチャレンジングな計画としていました。
昨年秋の、新型コロナウイルス拡大の第三波の影響を受けつつ、さらに年初1月8日に発出された2回目の緊急事態宣言による国内経済低調の影響もあり、前提が崩れた結果、単体の売上高は、計画に対し31億3,600万円下回りました。また、営業利益は9億3,300万円下回りました。
【計画比較】 単体業績の概要〔利益変動要因〕
9ページの階段チャートのとおり、計画に対する減収による減益が14億3,300万円、また、原材料費等で9億円の減少要因がありました。一方で、計画時に想定した労務費や修繕費などの固定費が抑えられたことで、14億円がコストセーブできました。さらに、経常利益について、計画に対し5億2,400万円の下回りとなったのは、当初想定より為替差益や受取配当金が弱かったことが影響しております。
売上高(前期比較)
次に、主要子会社の業績について見ていきたいと思います。10ページの売上高と11ページの営業利益は、いずれも前期比較です。ここにお示ししている数字は、アリアケジャパンへの輸出などのグループ会社間取引を除いた連結調整後の数字です。
営業利益(前期比較)
ご存じのとおり、海外は12月決算ですので、対象期間は昨年の1月から12月までの累計です。お示ししている海外地域の数字は、従来と同様に12月末の為替レートを適用した円建てベースの連結調整後の数字です。これに沿ってご説明いたしますが、連結調整前の現地通貨ベースの数字につきましては、別にご用意した決算のポイントをご参照ください。
前期と比べて、ユーロ、人民元、台湾ドルが円安となり、為替中立で見た場合ではネガティブなインパクトを受けます。なお米国については、すでに米国子会社を売却しているため売上高には数字はありませんが、利益のほうで2020年3月期の第1四半期に会計上の一過性の未実現利益1億円の計上があるため、米国の項目が残っております。
地域別の概要
それでは、アジアです。中国、台湾、インドネシアがここに含まれます。アジア合計で減収減益です。
中国は、昨年2月から8月までは外食の落ち込みが大きく、減収減益を余儀なくされましたが、9月以降に外食の回復が加速したことで増収増益に転じたものの、通年では減収減益となりました。売上高は、対前年マイナス3.5億円で、加工食品メーカー向けは好調でありましたが、売上の約6割を外食向けが占めており、3月は対前年50パーセントでボトムとなりましたが、期待以上の回復の結果、通年で対前年91パーセントとなりました。利益については、対前年マイナス1.6億円でした。
台湾は、コロナの影響は総じて軽微でした。通年を通して、台湾国内の売上が対前年割れだったのは3ヶ月で、かつ、それも対前年90パーセント以上の減少で免れ、通年の対前年は107パーセントで増収となり、利益も増益でした。
インドネシアは、稼働率も上がり、日本向けのエビ原料の輸出が堅調に推移いたしました。また、インドネシア国内の販売もコロナ影響がないとは言えないものの、徐々に増えた結果、連結調整前においての黒字化が実現しました。
次に、欧州です。ここにはフランス、ベルギー、オランダが含まれます。3つの国合計で増収増益です。3国合計で見ますと、総売上の約9割が産業向けの加工食品メーカー向けで、巣ごもり需要を背景に、通年を通して増収基調でありました。
特にベルギー、オランダは、産業向けの売上が寄与しました。一方で、フランスは、産業向けの中でもレストランチェーン向けの問屋や、一部直接外食サービス向けに販売しており、ロックダウンや外出禁止令の影響で、この外食セクターは落ち込みました。
欧州の利益については、工場の稼働率も向上した結果、改善してきております。一方で、日本への原材料の供給強化のため、ベルギーおよびフランスから日本への輸出を増やすと同時に、各工場の再整備を継続しております。日本国内の原材料不足を補うために、アリアケジャパンは、戦略的な原料調達力の強化を進めております。
また、欧州事業では、さらなる事業拡大のため、フランス工場のスプレードライヤー設備の導入を進めております。コロナ影響で少し伸びますが、2022年前半の稼働を目指しております。現在の液体のエキス製品に加え、スプレードライヤー設備の完成後は粉体のパウダー製品の拡販も図ってまいります。
以上、連結子会社と単体をあわせた売上高は496.8億円、営業利益は100.5億円と、対前年で減収マイナス26.5億円、減益マイナス17.4億円となりました。
地域別 当期計画
次は、今期2022年3月期の計画についてです。13ページをご覧ください。一番下の行の連結合計に示しているように、増収47億円、増益16億円を見込みます。なお計画レートはユーロは129円、人民元は16.7円、台湾ドルは3.84円、インドネシアルピアは0.0076円としております。
単体の売上高は、30億円増収の415億円とし、コロナ前の2019年度の売上高以上を目指します。営業利益83億円と、利益率20パーセントを目指します。既存顧客への販売強化、新たな商品提案とその投入により、前年比プラス7.8パーセントの成長を見込みます。
子会社合計の売上高は128億円、営業利益は35億円を見込みます。以上により、連結の売上高は543億円で対前年プラス9.3パーセント、営業利益は118億円で対前年プラス17.5パーセントを見込み、連結の営業利益率は21.7パーセントを計画いたします。
設備投資の推移(連結・単体)
設備投資については、14ページをご覧ください。終わった2021年3月期の単体については、主に九州第2工場の設備増強等で12.3億円の設備投資を実施いたしました。一方で、海外子会社につきましては、合計で6億円の設備投資を実施しました。主な内訳として、ベルギーの増設で4.8億円、それ以外は各拠点での設備アップグレード等です。
減価償却費の推移(連結・単体)
減価償却費については、15ページのとおり、終わった2021年3月期の単体については9.1億円、海外子会社については、合計で5.9億円の計上となっております。今期の設備投資の計画については、単体は、主に九州第2工場で、終わった期と同額程度の12億円を、また海外子会社につきましては16.6億円を計画しております。その内訳は、フランスのスプレードライヤー設備で7.7億円、ベルギーで7億円、中国で1.5億円ほどです。
今後の事業計画
次に、今期の計画を含む向こう3年間の中期事業計画をご覧ください。従来からの成長に向けたベクトルは、なんら変更ありません。引き続き、連結売上規模1,000億円をマイルストーンとして掲げている中で、来年度以降は、新型コロナウイルスの完全収束を前提に、3年後には600億円以上を視野に入れ、連結営業利益率は21パーセント以上と、引き続き高いマージンレベルを目指してまいります。
持続的成長を狙える市場に対して、さらなる経営資源の投入を図ってまいります。単体のアリアケジャパンにおいては、コロナ禍による国内市場での嗜好や業態の変化を読み取り、新たな製品開発と市場開拓による、さらなるシェア・アップにより、年間10億円以上の増収を目指してまいります。
次に、アジアです。さらなる拡販が期待できる中国は、巨大なマーケットのもと、地場のCBSはじめ、積極的な販売促進を行ってまいります。台湾は、引き続き外食市場への販売促進と食品加工メーカーへの浸透を図り、その売上強化を図ってまいります。インドネシアは、日本への原料供給とインドネシア国内および近隣諸国への拡販を狙い、周期的にASEAN市場に参入、展開を図ってまいります。
欧州につきましては、戦略的に展開していくスープやパウダー製品の投入により、欧州内での家庭内向けや工業用、業務用の売上増強を加速化するとともに、名実ともにアリアケジャパン向けのコアとなる原料供給基地として、日本へ良質な原料の安定供給を図ってまいります。
事業と社会の持続可能性を追求するビジネスモデル
最後になりますが、18ページと19ページをご覧ください。今後、新型コロナウイルスが収束し、アフターコロナの世界において、企業に求められるのは、持続可能な経営のもと新たな価値観に基づくイノベーションを進めることであると考えます。したがって、社会課題や突発的事象に対して、ビジネスモデルの強みを活かした事業展開で社会に貢献し、また、さらなるイノベーションによる持続的な成長にも挑戦してまいります。
コロナ禍を経験し、さらなる課題やテーマが浮き彫りになってきました。これらの課題に加え、今般の新型コロナウイルスのような世界的に拡大する伝染病や、毎年発生する大規模な自然災害に代表される突発的事象など、人類を取り巻く環境が不確実性を持つ中で、食の安定供給リスクも顕在化しております。
アリアケグループは、畜産系天然調味料のパイオニアとして構築してきたビジネスモデルの強みを発揮し、課題解決やリスクの低減に日々貢献していきます。 その強みの1つとして、まずは高度な生産能力と技術力が挙げられます。最新鋭のコンピュータで制御された工場で、おいしく、健康的で、高品質かつ安全な食品を大量に生産し、その安定供給を実現しています。
2つ目の強みとして、高度な品質や衛生管理能力が挙げられます。数々のコードで国際的な品質・衛生管理認証を取得しており、それらの能力を常に高度化し、食の安全への貢献を増進しています。
3つ目の強みとして、グローバルな生産体制が挙げられます。日本を含む世界大7ヶ国に生産拠点を有し、良質な原料の安定調達により、国内外のニーズに対応した製品の製造で、食のグローバルな安定供給を実現しています。これら3つの強みのシナジーにより、高品質・安全安心な2,500種類の天然調味料を製造し、世界に安定供給することで社会に貢献しています。
また、持続的な事業基盤の構築のため、環境や社会との共存関係の発展にも取り組んでおります。自然の恵みを原料とする食品会社として、原料の仕入れから製品の出荷まで、事業の全行程が環境への配慮から成り立っております。
主力製品であるスープの原料には、畜産のガラを有効活用しております。つまり、事業の起点そのものが天然資源の有効活用であり、循環型社会プロセスの一役を担っております。その他にも、残渣の有効活用、エネルギーの有効活用、温室効果ガス排出削減、廃棄物の削減などにも取り組んでおります。
また、豊かな自然を共有する地域社会や、人材との共生にも注力しております。事業所の近隣社会の振興や、就学支援などによる健全な人材の育成により、社会との共生を発展させることで、持続可能な事業基盤を構築し、結果的にESGやSDGsと深く関わっております。
工場の全電気量を自然エネルギーに置き換え、環境価値向上に取り組んでいます。
九州工場における温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みについて、簡単にご紹介いたします。今年の4月、工場で使用する全電量を再生可能エネルギーに置き換え、環境価値向上に取り組んでおります。二酸化炭素排出量は、2019年度年間で約3万7,000トンで、このうち電力が占める割合は約40パーセントで、その全電力量を再生可能エネルギーに代替するものです。
これにより、2021年4月以降の電力に起因する二酸化炭素排出量はゼロとなり、年間約1万5,000トンの二酸化炭素削減につながります。なお、この活動は、事業用電力を100パーセント再生可能エネルギーで賄う国際的な企業連合RE100の活動にも一致しております。また、九州工場はすでに2014年に、工場屋根設置型として国内最大級の太陽光パネルによる発電を開始しております。
今後も、太陽光発電による生産用電力の確保や、廃棄物からのエネルギー再生やその減容化に取り組み、総合的なクリーン工場を目指し、SDGsへの対応やESG経営に継続的に努めて、持続可能な成長に寄与する事業基盤の強化に努めてまいります。以上、駆け足でございましたが、2021年3月期決算の概要を説明させていただきました。ご清聴ありがとうございます。