2021年6月19日にログミーFinance主催で行われた、第22回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナー 第5部・ミアヘルサ株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ミアヘルサ株式会社 取締役 経営企画本部本部長 青木茂 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
フィスコ マーケットレポーター 高井ひろえ 氏

会社概要①

青木茂氏(以下、青木):ミアヘルサ株式会社経営企画本部の青木でございます。よろしくお願いいたします。当社は現代表の青木勇が1984年に設立し、昨年の2020年3月に東証JASDAQ市場に上場しました。

会社概要②

青木:当社のミッションは「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」です。この実現に向けて、生涯を支える企業として介護、医薬、保育、食品の4事業部による包括ケアを展開しています。少子高齢化社会の課題解決に取り組み、地域社会を明るく元気にする街づくりを通して、成長を図りたいと考えています。

展開エリア

青木:当社が展開しているエリアです。首都圏を中心に1都3県に集中的に展開しています。高齢化社会という市場機会を活かして、首都圏で包括ケアNo.1を目標として成長を図る計画です。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):首都圏を中心にドミナントでかなり展開していると思いますが、今後の成長を考えると他の県に出ていくこともあると思います。こちらのドミナントを守りながら、埼玉や千葉、神奈川のほうにも展開するのか、それとも人口を考えて関西のほうに行かれるのか、戦略を含めて教えてください。

青木:関西も視野に入れていきたいと思っています。ただし、先ほどお伝えしたように、当社は包括ケアを展開するためにどうしても首都圏にNo.1の土台を作りたいと思っていますので、1都3県に集中的に展開したいと考えています。

沿革

青木:当社の沿革ですが、5分ほどのムービーにまとめましたのでご覧ください。

「地域包括ケアシステム」について

青木:動画の中にありました「地域包括ケアシステム」は、厚生労働省の高齢化社会に対応するための方針です。高齢者が安心して生活できる街づくりのことで、住まいを中心に地域の医療や介護、生活支援などの包括的なサービスをいつでも提供できる仕組みです。

当社はこのようなニーズに応え、4事業部が連携することによって地域包括システムを実現できることを最大の強みとしています。

当社の強み 1 地域包括ケアシステムの団地再生モデル

青木:こちらは当社がUR都市機構と協働して、ひばりが丘に地域包括ケアシステムの団地再生モデルとして作りました。今は高齢者が増えてきましたが、昔の団地はエレベータが付いていないため非常に困っていました。そこで外付けでエレベータを付けたり、部屋の中も高齢者が住めるように改築しました。

また、「グループホームを作りましょう」と提案して、当社の薬局を置いたり、クリニックを誘致したり、お年寄りは足が悪くなりますので生活支援ということでコンビニ等を誘致して、包括的なサービスを展開しています。

当社の強み 2 街づくりニーズと事業体制

青木:2つ目のモデルは、大手デベロッパーと開発した案件です。現在は大手デベロッパーが都市開発や街づくりを行う上で、先ほどの厚生労働省の地域包括ケアという考え方をどうしても取り入れなければなりません。地域包括ケアを実現するために必要な医療や介護、保育などを誘致するために、企業と提携することが求められます。

当社は1社で介護も保育も医薬も持っていますので、大手デベロッパーにとっては非常に話しやすく、包括的なことをワンストップで話を進められるので、非常に喜んでいただいています。

市場機会と当社の整合性

青木:当社の特徴です。当社は3事業部あるため、新型コロナウイルスのようなリスクを補完しあえることが1つの特徴です。また、公的保険制度に関連した事業のため、価格競争や貸し倒れもなく、安定している事業です。また、市場機会はまさしく2040年まで続く高齢化社会そのものだと考えています。

3事業が属する公的保険制度は、財政が非常に厳しいのではないかというお話もあります。確かにそのようなことはありますが、その裏付けである社会保障給付費の見通しを見ると、2018年の121兆円から2040年には188兆円と1.5倍に拡大する予想となっています。

このようなことから、当社の3事業は社会保障給付費の拡大とともに成長する機会があるのではないかと考えています。

事業戦略

青木:事業戦略ですが、少子高齢化社会の市場機会を活用して、4事業部の機能連携によるシナジーを差別化策とし、地域包括ケアシステムを推進し、首都圏の人々の生活や生涯を支える企業として信頼のミアヘルサ・ブランドを確立することを方針としています。

業績推移

青木:業績の推移です。コロナ禍にあっても2021年3月期の決算は前年比で増収増益となり、当期利益は過去最高益となりました。

今後3ヶ年はさらなる成長への基盤づくりの期間として、先行投資により売上高の継続伸長と利益率の向上に取り組んでいきたいと考えています。少子化という市場機会もありますので、成長可能であると考えています。

坂本:今後3年間の業績の見通しを示していただきました。後ほどお話があると思いますが、M&Aをどのくらい見込んでいるのでしょうか? イメージがあれば教えてください。

青木:M&Aはこれから積極的に進めていきたいと考えています。ただし、この予算の中にM&Aは組み込んでいません。基本的な3事業部の開発の数字は入っていますが、M&Aは入っていないということです。

医薬事業の特徴①

青木:医薬事業の特徴についてご説明します。当社が展開する調剤薬局は、大規模病院や大学病院の門前薬局、駅前立地における医療モールの薬局です。店頭での処方やオンライン服薬指導、あるいは、薬を自宅にお届けして在宅での服薬指導を行うことが主な仕事になります。

また、当社は高度な医療を自宅で受けられる輸液療法によるターミナルケアのサービスを展開しています。

坂本:薬局の名前が「日生薬局」「ミアヘルサ薬局」で、同業態のように見えるのですが、店名が分かれている理由を教えてください。経緯や戦略的なものがあればお願いします。

青木:ミアヘルサに社名を変更する際に、日生薬局を全部ミアヘルサ薬局に変更しようと検討しましたが、お客さまから「ぜひ日生薬局を残してほしい」ということで、「非常に信頼されていることからブランドとして残そう」ということで現在に至っています。

高井ひろえ氏(以下、高井):なるほど、愛着のある名前なのですね。

医薬事業の特徴②

青木:当社は全体の約60パーセントが門前薬局で、高度医療を支える大学病院や大規模病院の前に立地しています。したがって、癌やHIVといった高度薬学管理に関して豊富な経験があり、高度医療に関する信頼が非常に厚いのが最大の特徴です。その結果、処方箋単価は全国平均の1.5倍の水準にあります。

医療については財政が非常にひっ迫しているとよく言われますが、先ほどお伝えしたとおり、2040年まで高齢者は増え続けるため、これを考えると処方箋が減っていくのは考えづらいです。

高井:そうですね。

青木:そのような傾向だと考えています。

坂本:大病院前の薬局を門前薬局と言いますが、病院の周りにはけっこうな数の薬局があります。他の薬局との差別化があれば教えてください。また、コロナ禍の受診控えなどによる影響は、調剤薬局にあったのかについてもお願いします。

青木:当社の最大の強みは先ほどお伝えしましたが、門前薬局が6割ですから、長い経験によって癌やHIVなどの高度薬学管理についての知識が豊富にあることです。その中で非常に信頼を得ていることが当社の最大の強みです。

また、先ほどもお伝えしましたが、高度医療を自宅で受ける、つまり輸液管理によるターミナルケアが他とは違うサービスです。

当社は介護事業も行っていますから、施設に訪問して服薬サービスを行うことも特徴です。これらが認められて、当社だけではなくいろいろな他の介護事業者からも服薬指導の要請を沢山受けています。

医薬事業の特徴 無菌調剤室

青木:ターミナルケアを支える輸液管理についてです。スライドの写真は当社の無菌室で輸液を生産している現場です。無菌室を持っている薬局は東京都内では1割程度と言われています。当社の2拠点は現在毎日稼働している状況です。

医薬事業の特徴 クリーンルーム

青木:現在新型コロナウイルスが非常に流行しているため、病院から要請を受けて、感染症に罹患している方と通常の患者さまの動線を分けるという意味で、クリーンルームを設けたという事例です。

医薬事業の特徴 かかりつけ薬局機能

青木:当社の薬局もですが、これからは薬を処方するだけの薬局では難しいと考えており、処方箋後の管理や相談が重要な仕事になっていきます。

薬の相談はもちろんですが、食事から介護の相談までできることが非常に重要で、そのような責任や機能を持つことがこれからの薬局には求められていると思います。そのような中で、現在かかりつけ薬剤師としてのリピーター率も非常に高い状況です。

介護事業の特徴

青木:介護事業の特徴です。利用者に「継続的にサービスを提供する体制」と記載していますが、これは簡単なようで非常に難しいところです。どういうことかと言いますと、患者さまの容態は軽度から重度と認知症のように変化していきます。

変化した時にすべてに対応できる体制を作るのは意外に難しくて、当社もドミナントを展開して機能を集約することで対応しています。

継続的な介護サービスの整備ができていないと、介護度が上がって重度になった時に施設を変わらなくてはならなくなり、患者さまに非常に負担がかかりますから、このような体制をしっかり作っていくのが当社の特徴です。

介護事業の特徴 最近の取組み

青木:介護の活動について、いくつか抜粋しながらご説明します。新小岩のサービス付き高齢者住宅に、これまでの看護ケアのノウハウを活かして、新しく「在宅・ホスピスフロア」を設けて訪問看護事業所を開設しました。

また、今認知症の方が非常に増えているため、認知症のための「グループホーム新座」を開設しました。加えて、当社はこれまで事業名を日生介護と呼んでいましたが、ミアヘルサケアに統一しました。

介護事業の特徴 ホスピス

青木:先ほどからホスピスという名前が出ていますが、ホスピスは病院から要請を受けて終末期の患者さまに求められるサービスを提供する施設です。

看護や介護の経験、薬局の緩和ケアのノウハウを連携し、医師とのチームケアを充実することで実現しています。365日24時間ナースが常駐し、患者さまに安心していただけるように緩和ケアやターミナルケアの仕組みを構築しています。

保育事業の特徴

青木:保育の特徴です。最大の特徴は、小規模保育園を含めたすべてが認可保育園ということです。これまで首都圏には待機児童の問題がありました。直近では女性の就業率が向上したため保育の需要が非常に高まり、スライドに記載のグラフのとおり、収益も保育園数も11年連続で増加しています。

保育事業 認可保育園運営の利点

青木:先ほどお伝えした認可保育園の利点についてです。最大の利点は、国が人員配置や設備の厳しい基準を設けていることだと思います。国の厳しい基準に対して、自治体はさらに人員の追加要求を行います。例えば、「国の基準が10人であれば、そこに2人足して12人にして」などの要請があります。

当社はそのような要請に応えることで、保育の質と安全を確保してきました。認可保育園は、一般的に営業活動と言っているような本来は我々が行わないといけない児童の集客や運営の手配などを自治体や行政が全部行ってくれることが最大の特徴で、営業における時間とコストが削減できます。

また、新型コロナウイルスが流行している状況で一番感じたことですが、実は認可保育園は仮に新型コロナウイルスで休園することがあったとしても収益に影響は出ず、基本的に同じ収益になります。

その上、開設時に施設補助金があるため、初期コストを非常に抑えられることも特徴だと思います。少しご説明したほうがよいと思うのは、施設補助金についてです。

坂本:どこに載せるか問題ですよね。

青木:そのとおりです。補助金については会計上、特別利益に載せるべきとなっていますし、私どももそのように載せています。しかし、企業によっては営業外収益に計上していることがあるようです。

坂本:2タイプありますよね。いつもどこを見ればよいのかというのはありますよね。

保育事業の特徴 最近の取組み

青木:保育園の最近の展開状況についてです。認可保育園はもちろん都内を中心に毎年開園していますが、昨年度は初めてM&Aで6園の保育園を子会社化しました。また、今年の4月には公立保育園の指定管理を初めて受けることができました。そうした中で、園名を「ミアヘルサ保育園ひびき」に統一しています。

坂本:2020年7月にM&Aがありましたが、今後、保育以外にも介護などで考えているのでしょうか? 保育事業は価格によると思いますが、M&Aと先ほどの補助金を得て1から設立するのではどちらがよいのか、バランスなどもあると思いますがウェイトをどちらに置いていくのか教えてください。

青木:まず、M&Aは今後も積極的に展開していきたいと考えています。どちらがよいかということですが、自社と言っても2つあります。

1つは、土地あるいは建物を全部自分で建てて開発していくものです。当社の場合は、実は地主に建てていただいて賃借するという、いわゆるアセットライトな取り組みが基本です。正直に言いますと、感覚としては当社が行っているアセットライトな投資のほうが有利だと思います。

ただし、実際は案件によってぜんぜん違います。そのような中で、今後有利な案件がたくさん出ると思いますので、その時は積極的にM&Aを考えていくことになります。M&Aによる拡大を図ることも積極的に考えています。

坂本:先ほど公立保育園の指定管理のお話がありましたが、相当の実績がないとなかなかできないと伺っています。受託できたのは、認可保育園事業の実績が積み上がったからなのか、それとも御社が特別な体制を作ったのかということを教えてください。

また、質問にも出てきますが、保育士の確保が非常に難しい状況で、御社独自の取り組みや工夫している点があったらお願いします。

青木:指定管理というのは、基本的な要件がもちろんあります。これを満たすことは当たり前ですが、それだけではおそらく取れないと考えています。実際に、ほとんどは社会福祉法人が取得しています。

坂本:そうですよね。

青木:私どもが取れたのは、1つは今おっしゃっていただきましたが、都内を中心に34園を展開してきた中で、信頼を得られたのだと思います。信頼の一番のベースは何かを当社で考えてみると、人員の採用だと思います。毎年新園が建ちますが、実は保育士が間に合わないことが他社様では頻繁に起きているようです。

ですから、毎年3園以上着実に開園して保育士を確保してきたことが最大の信頼だと思いますし、コツコツとした地道な活動を見ていただいたのだと思います。

採用について先ほどご質問がありましたが、当社は全国で採用活動をしています。この活動を長く行っているため、それぞれの地方の保育士が関連する企業や学校と非常に厚い信頼があります。

そのような方々に対する信頼を返していくと言いますか、当社に入っていただいているみなさんの信頼に応えることを通して信頼を作ってきました。実は新卒だけでは新園は成り立ちません。

坂本:園長先生が必要ということですね。

青木:そうです。そのような意味では、中途採用についてもエントリーだけで現在2,000名から3,000名ほどある状況で、生意気な言い方をすると、「当社が選ぶ」という状況もあります。

当社はお陰さまで10年経ちますので、当社に新卒入社した社員の中で園長となるような人がどんどん出てきているというのも1つの強みと思っています。

保育事業の特徴 新規園

青木:当社の新園の状況です。園庭も広くて、木目調で、採光も非常にとれている施設です。もちろん冷暖房は完備しています。今日ここでお伝えしたかったのは、この保育園の安全性です。

子どもはどこに行くかわかりませんし、ドアに手を挟まれるなど、いろいろなことが起こります。このようなものについて設計を非常に工夫しており、ドアに挟まれても手が痛くないと言ったら変ですが、挟まれても大丈夫な設計になっています。

床はなんだかフワフワしていて、私が行くと「この床大丈夫か?」と思う床になっています。ところが、子どもが倒れた時や転んだ時に痛くないようになっているのです。このように安全性を確保していることをご覧いただこうと思い、こちらのスライドを用意しました。

中期経営計画 基本方針

青木:中期計画をすでに発表していますが、「首都圏に人々の生涯を支える企業として、信頼のミアヘルサ・ブランドを確立する」という方針に基づき、業績の伸長や企業価値の向上に取り組み、3年後に売上高200億円、経常利益3パーセントを達成する計画としています。

売上構造の方針

青木:売上構造については、現在、医薬が50パーセント強、保育が25パーセント、介護が20パーセントのバランスになっています。全体の拡大を図りながら、成長性の高い分野に集中投資して、構造変革に取り組みたいと考えています。

3つの重点施策

青木:中期計画の重点施策は、新規開拓や開発、良質なM&Aの積極的な投資、組織力の強化の3点としました。今は3事業ありますので、例えば、医薬では門前薬局や医療モール、介護ではホスピスやグループホーム、保育では新園の開拓を当然実施していきます。

さらに、大手デベロッパーと地域包括ケアの展開を図りたいということが最大のテーマです。また、良質なM&Aを積極的に展開するのはもちろんですが、組織力の強化に向けてサービス品質の向上を図ることが必要だと思います。

お客さまに満足いただくことが重要ですから、それに向けて採用も強化し、教育も行っていくことを重点的に取り組んでいきたいと考えています。

医薬事業 目標値と重点施策

青木:医薬事業の重点施策です。今、毎年薬価改定が行われています。

坂本:そうですね。

青木:この薬価改定を超える成長を図らなくてはなりません。いずれにしろ医薬の売上は処方箋枚数と処方箋単価です。

その改善に向けてオンラインでの服薬指導の強化、かかりつけ薬剤師や専門的な薬剤師の強化、あるいは、かかりつけ薬局や地域連携薬局、健康サポート薬局など、国の方針をしっかり受け止めて加点を取っていくことも必要です。また、先ほどお伝えした門前薬局や医療モールの開発も進めていきます。

店舗数はスライドに記載していますが、結果として40店舗を46店舗に増やし、売上は100億円、営業利益率は0.7パーセントの改善を図ることを目標としています。

保育事業 目標値と重点施策

青木:保育事業です。今年初めて公立保育園の指定管理を受けさせていただきました。これは今後も継続的に取り組むテーマだと考えていますので、公立保育園の指定管理についてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

もちろん新園を定期的に安定して開園していくことは当たり前ですし、新園の開園のためには保育士の採用は絶対条件になります。先ほどチラッとご説明しましたが、エントリーは2,000名から3,000名ある状況です。

安心はできませんがしっかりと取り組み、先ほどお伝えしたとおり、来ていただいた方々の教育もしっかり行って、保育の質の向上にも取り組んでいきたいと思います。その結果、保育園は現在の34園から41園という目標を立てています。

来年度の4月に開園する保育園新規開設のための営業活動は、毎年の7月から8月の夏前くらいまでです。まだ期間がありますので、営業をしっかり取り組んでいきたいと思います。結果として、3年後に売上が50億円、営業利益は1パーセント改善する目標です。

坂本:新しく保育園を作る時には、7月までにとりあえず申し込みと言いますか、用意できれば来年4月に間に合うということですので、積み上げがひょっとしたらまだあるかもしれないということですね。

青木:余談ですが、開園には何年も前から積み上げてくるわけですが、建てる期間が6ヶ月ほど必要です。その前に地元の地域のみなさまに説明する期間があり、すんなりと「申請してOK」という場合もありますが、進める期間が非常にたくさん取られることもあります。

坂本:たまに反対運動を行っているところもありますね。

青木:そうです。

坂本:最近あまり聞かないですが、一時期はけっこうありましたよね。

介護事業 目標値と重点施策

青木:スライドに記載しているホスピスを中心に、ターミナルケアを強力に展開していきたいと考えています。これから認知症患者がどんどん増えて、5人に1人が認知症になると言われています。介護におけるグループホームや、重症患者をしっかりとサポートできる仕組み、施設を展開していきたいと思っています。

また、現在の施設の稼働率をしっかりと向上させた上で、改善型介護の質の向上に取り組みたいというのが1つあります。

当社は介護事業を始めた時から改善型介護に取り組んできましたが、実は介護度が「3から2になる」「4から3になる」などの改善を図ると、当社の収入が減ってしまいます。

坂本:そうなのですよね。よく言われる話ですよね。

高井:なるほど。

青木:スタートした頃は一生懸命やりながらも悩んできた期間があります。ただし、最近は国も、「そのような改善についてしっかりした介護報酬を払っていこうじゃないか」という動きに変わってきています。

当社もこれまでの実績を踏まえてさらに改善を図り、職員にも普及していく活動を今年のテーマとしています。

坂本:介護事業ですが、決算を見てもけっこう厳しいとは思っています。新規事業のホスピスは、どちらかと言いますと利益率が高いセグメントなのでしょうか?

青木:確かにこれまで一生懸命がんばってきたのですが、介護は利益に対する貢献が若干少なかったというのは事実かと思います。

要因としては、1つは単独出店が多くあったことです。この単独出店というのはなかなか利益につながりません。

もう1つは、サービス付き高齢者向け住宅をどんどん出店しましたが、当初のスタート時になかなか稼働率が上がりませんでした。この2点が収益に貢献しなかった原因です。

これらが改善されて、今はドミナントで集約型の事業をどんどん展開していますし、稼働率もどんどん上がっています。先ほどおっしゃっていたホスピスやグループホームは利益率が高いですから、これらを展開していくことで貢献していく中心の事業になると思っています。

資本政策と株主還元方針

青木:資本政策は、「成長投資や安定経営に向けた自己資本の充実を図り、安定的な配当を継続していく」という方針です。昨年度の配当は25円でしたが、今年度以降は3ヶ年で30円以上の配当を予想しています。

組織体制変更の概要と目的

青木:組織体制の変更についてご説明します。今年の10月に持株会社化、つまりホールディング化するという計画があります。

現在ミアヘルサに株をお持ちの方々から「ホールディング化するとどうなるのか」というお問い合わせをいただきます。みなさまには、1対1で株式が移転するということでご安心いただきたいと思います。

また、今年の2021年1月に当社の子会社である東昇商事を吸収合併することもご報告します。

SDGsに関連する当社の取組みと目標

青木:SDGsについては、スライドに記載の6つの目標を挙げています。事業活動を通して社会の課題解決に貢献し、永続的に必要とされる企業となるように、これらのSDGsの活動を通して努めていきたいと考えています。

ミアヘルサが描く未来

青木:当社のビジョンを未来に向けて描きました。「地域包括ケアシステムを推進し、健康・安心・絆のライフラインを構築する」というビジョンを実現し、街全体に広がっていく状況を描いたものです。当社の4事業がこの中心となっています。

当社の名前は「もっと健康に」という意味ですが、これをテーマとして、将来安心して暮らせる街づくりに取り組んでいきたいと考えています。ご説明は以上です。ありがとうございました。

質疑応答:保育園・保育所の供給過多について

高井:会場からの質問を取り上げていきたいと思います。保育事業についてです。「同業他社の上場企業の資料を見ていると、近年かなりのペースで保育園、保育所が開設されている印象があるのですが、そろそろ供給過多が見えてきているということはないのでしょうか?」という質問です。

青木:詳しい方はご存知だと思いますが、まず首都圏と地方でまったく状況が違うということをご理解いただきたいと思います。何が違うかと言いますと、需要です。

例えば、地方では保育士は余っていますが、待機児童はいません。このような状況の中でも出店だけはできますが、地方でどんどん出店して数を合わせるという状況は終わりになるのではないかと思います。

坂本:最初の年は補助金が出るかもしれませんが、利用率は高まらないですよね?

青木:実際に他の企業のデータを見ましたが、都心にどんどん出店できているかと言いますと、できていない状況です。東京の場合は需要がありますが、保育士の確保ができないことが最大のテーマです。このあたりが出店における課題だと思います。

坂本:そうですよね。物件を建てても、何かのテナントみたいなかたちにはできないと思いますが、規制も一時期よりは緩和された部分もあるかと思います。確かに保育士の問題は大きいですね。

青木:そうですね。最大です。保育士がいなければ園は建ちませんから。

高井:そうですよね。

質疑応答:保育士の稼働について

坂本:御社は首都圏を中心に展開していますが、保育士はもう首都圏の稼働だけで賄っているのですか? 

青木:当社は北海道から沖縄まで全国で採用活動をし保育士を確保してきました。今お話がありましたが、地方を中心に保育士をなんとか東京に呼んで、東京の待機児童をなくそうということで、国も地方自治体も活動してきました。

質疑応答:介護の人材の供給について

坂本:介護の人材は足りているのですか?

青木:当社は今、施設を中心にしたサービスを展開していますから、施設についてはパートなどで賄える部分と、施設をしっかり管理する部分で人材を分ける必要があり、専門学校のスペシャリストを雇っています。

最近は介護に志のある人を雇うことを進めていて、その人を中心にパートに協力していただいて施設を運営していくという体系が着実にできてきました。

質疑応答:地域包括ケアシステムの団地再生案件について

坂本:地域包括ケアシステムによる団地再生ですが、まだできそうな場所はけっこうあるのでしょうか?

青木:あまり言えないのですが、「ここやりましょう」ということで、何件かお問い合わせいただいています。実はURの団地はかなり古いところが多いです。

坂本:そうですよね。古いところがけっこうあって、高島平のあたりは外国人が半分くらい住んでいるところがあるみたいですね。

青木:そうなのです。ですので、たくさんの案件があります。地域包括ケアという国の方針は高齢者のための方針ですよね?

当社はURさまに「高齢化地域社会の高齢者施設のサービスはよいのですが、それだけで本当によいのですか?」「高齢者だけが集まる施設を作るのですか?」当社は保育園もありますから、「保育園を誘致して、若い人も一緒に住める街づくりに取り組みませんか?」という提案しています。

この話はURさまに非常に気に入っていただいて、「ぜひ一緒にやろう」ということで、これから展開する計画としています。

坂本:確かにエレベーターを付けるのはすごいなと思いました。

高井:本当ですよね。

坂本:これはネックですよね。

青木:我々はエレベーターは当たり前だと思っていましたが、実は付いていないところがたくさんあるということを伺って、「そうしたものに取り組みましょう」ということでお手伝いさせていただきました。

質疑応答:指定管理に採用されるハードルについて

高井:公立保育園の指定管理に採用されるハードルはどのくらい高いのでしょうか?

坂本:こちらはすでにお伺いしましたが、補足があればお願いします。

青木:例えば、基準としては「園長先生が何年以上の経験がある」など、いくつかのハードルがあります。ただし、先ほどもお伝えしましたが、一番は「この会社に任せて大丈夫か」ということだと思います。

高井:信頼性ということですね。

青木:株式会社が保育に参入したのは10年ほど前ですよね? 株式会社もだんだん増えてきて2割ちょっとくらいになりましたが、おそらく現在も8割は社会福祉法人が保育園を運営しているわけです。

社会福祉法人は長い歴史がありますから、出そうと思ったら自分のところの保育士は確保できますが、新しく同じくらいの人を確保して開園することがおそらくできなかったと思います。

「じゃあ、民間にやらせましょう」ということですが、人員の問題は非常に大きなテーマだと思います。

質疑応答:新型コロナウイルスによる学校給食への影響について

坂本:学校給食について聞いていませんでしたが、コロナ禍で止まったり、休校の影響などあったのでしょうか?

青木:昨年度の4月、5月くらいに休校になり、収入がまったくなかったということです。給食に関しては保障もまったくありませんでした。

坂本:厳しいですね。

青木:その後なんとか給食が始まって、当社の場合は給食自体は年間予算で動いていますから、後半に集中してご利用いただきました。

また、食品事業に関しては、当社は「銀のさら」という宅配寿司を行っています。コロナ禍で宅配サービスを非常にご利用いただき、宅配寿司は前年比で百数十パーセントの売上増となりました。全体としては、なんとか計画以上の数字が出たというのが昨年度の実績です。

坂本:御社は介護や医薬など、いろいろな分野がありますので、そこで補完してコロナ禍でも乗り切れるということで、そこは強みですね。

青木:そうですね。3事業で補完することを当社の特徴としていることはお伝えしたとおりです。

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