OKI(沖電気工業)は、マイクロLEDディスプレー事業で協業を模索している。独自のエピフィルムボンディング(Epi Film Bonding=EFB)技術を用いた複合集積フィルムとマストランスファー技術をディスプレーメーカーや装置・部材メーカーに提供する考えで、マイクロLEDディスプレーの早期事業化を目指す。
LEDプリンター用に量産実績
EFBは、OKIがLEDプリンターのプリントヘッド向けに開発し、2006年に量産化した独自技術。化合物半導体ウエハー上に形成したLED発光層の薄膜(エピ層)だけを剥離して、任意の基板に分子間力で貼り付ける異種材料接合技術だ。これまでプリントヘッドの製造技術として採用し、累計5億個の量産出荷実績を誇るが、膜剥がれなどの不良は起きていない。
集積フィルムで1.5インチを試作
協業に向けて今回、EFB技術で赤緑青(RGB)のLEDチップを同一のフィルム上に集積し、これをバインド層で覆い、フィルム裏面にはコンタクト電極を形成した複合集積フィルムを開発した。これをパートナー企業に供給するとともに、実装のノウハウも一部供与し、パートナーがマイクロLEDディスプレーとして実用化するビジネスモデルで協業を図っていく。
プロセス実証や協業に向けたサンプル提案として、このほど複合集積フィルムを用いて、解像度176×RGB×272画素の画面サイズ1.5インチ(250ppi)マイクロLEDディスプレーを試作した。LEDチップのサイズは10×20μmを採用したが、実験では5μm角を用いることにも成功している。
実装工程も容易
フィルム裏面のコンタクト電極は、分子間力によって電気的接続可能なパッドになっているため、ユーザーは「ドライバーICを形成したシリコンウエハーやTFTを作製したガラス基板といった任意の基板に、常温下で貼り付けるだけで実装が完了する」(開発本部チームマネージャーの谷川兼一氏)。はんだバンプの形成や再配線工程が不要であるため、専用設備を導入する必要がなく、既存の実装機だけで接合できる。
フィルムの厚さは約2μm。6インチウエハーサイズで供給することが可能で、ユーザーはウエハーサイズのまま貼り付けたり、RGBを個片化して実装することもできる。OKIでは、顧客の基板レイアウトに合わせたLEDや電極をデザインし、RGBフルカラーに限らず、単色にも対応する考え。
将来はセンサーなども集積化へ
OKIでは、この技術で1000ppi程度まで対応可能とみており、スマートウオッチやモニターなどに最適と考えている。将来は「センサーチップなどを集積化し、ディスプレーの機能や付加価値を高めることも視野に入れているほか、EFB技術をセンサーやフォトニクスといった用途にも展開していく」(開発本部LED応用開発部長の鈴木貴人氏)方針だ。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏