「申酉(サルトリ)騒ぐ」という投資格言があるように、申年(2016年)に続き、酉年(2017年)も予測が難しい値動きの激しい1年になりそうです。
とはいえ、予想は当たる・外れるだけが重要なのでなく、シナリオに基づいて予測することに意味があります。今回は以下の3つの記事から予測が難しい2017年の相場について考えてみましょう。
OECDは世界成長見通しを上方修正
「来年のことを言えば鬼が笑う」という故事を引き合いに出すまでもなく、これだけ想定外の出来事が続くと、金融機関や公的機関が発表する予想に対しては、「これから先のことをあれこれと言ってみても何も意味がない」と考えてしまいがちです。
とはいえ、新たに出された予測をもとに頭の体操を行うことは決して無駄なことではありません。特に2016年11月28日に発表された経済協力開発機構(OECD)による2017年の世界経済の見通しは、米国大統領選後、IFMなどの主要な国際機関の中で初めて公表された予測ですので注目したいと思います。
詳細の数値については、この記事の中にある図表を参考にしていただければと思いますが、2017年の世界全体の成長率予想を3.3%と、9月時点の予想(3.2%)から上方修正しています。また、今回新たに公表した2018年予想は3.6%で、成長率がさらに高まると見込んでいます。
この背景としてOECDは、トランプ次期政権の財政拡大と減税が米国の成長率を高め、それが世界全体にも波及するためと説明しています。
今回の予想で興味深いことは、各国の財政事情を考慮して予測にメリハリが付けられていることです。そこでは、米国およびドイツが含まれるユーロ圏の2018年の成長率は2017年よりも加速を見込んでいるのに対して、日本や英国は減速が見込まれています。
この記事の筆者が指摘しているように、「やや前のめりの印象」は否めませんが、2017年は金融政策ばかりではなく、財政政策にも目を向ける必要性が高まることを示唆しているという点で、“利用価値のある予測”ではないかと考えられます。
出所:OECD、財政政策を支持する経済予想(ピクテ投信投資顧問)
2017年の日経平均ピークは年央の2万円?
毎年、この時期になると翌年の日経平均株価の水準を予測したレポートが増えてきますが、今年は年末とトランプ大統領の登場というビックイベントが重なったため、経済誌だけではなく週刊誌でもこうした話題が取り上げられています。
ただし、ここでも予想が当たるかどうかではなく、様々なシナリオを見ながら相場の方向性をご自身で掴んでおくことが大切です。
この記事では、円安の進展と業績見通しの好転により日経平均は堅調に上昇する可能性が述べられています。また、レーガノミクス初年度(1981年)と同じ軌跡をたどるのであれば、2017年年央には日経平均は2万円が視野に入り、そこが当面のピークとなる可能性が示唆されています。
ただし、申し上げるまでもなく、市場が期待先行になり過ぎた場合は、米国株は下落、米長期金利は低下、円安は一服となり、日本株は売られるということが一時的には起きる可能性が残ることには留意したいと思います。
過去の米国大統領選挙後の株価パフォーマンスをチェック
上の記事ではレーガン大統領の就任1年目だけが取り上げられていますが、この記事ではニクソン(共和党、1期目大統領選挙1968年)、レーガン(共和党、1980年)、クリントン(民主党、1992年)、オバマ(民主党、2008年)の在任中の米S&P500種の騰落率が1期目と2期目に分けて紹介されています。
株価パフォーマンスで注目されるのはクリントン時代の上昇率の高さです。経済最優先の政策に加えて、前政権が進めた規制緩和の効果が現れたことがその背景です。また、オバマ時代も金融危機を乗り越え、2期目は1期目をさらに上回る上昇率となりそうなことが目を引きます。
なお、米国の大統領の在任期間は1期が4年ですので2期の場合は8年間となります。その間の株価は、就任当初の期待ではなく、その後実際に行われた政策によって形成されたものと言えます。そのため、2017年以降、目先の動きだけではなく実際にトランプ政権が何を行うのかを十分に見極めていくことが大切だと思われます。
LIMO編集部