ミシュランガイドで3つ星にランクされている高尾山。久しぶりに登ってみたところ、平日にも関わらず驚くばかりの登山客・参拝客で賑わっていました。今回のアナリスト散歩は高尾山の混雑について考えてみます。
平日にも関わらず大混雑の高尾山
11月16日(水)、筆者は新宿から京王線で高尾山口まで行き、ケーブルカーの清滝駅の先にあるいくつかの登山道のうち、渓流沿いを登る6号路経由で高尾山の山頂を目指しました。
まず驚いたのは、清滝駅でケーブルカーの改札を待つ長い行列です。比較的高齢者が多く、ピークをやや越えつつある紅葉を楽しみに来た行楽客という様子でした。
次に驚いたのは、高尾山頂上で昼飯を食べ、登りとは異なる1号路を下る途中、信仰の山を代表する薬王院(真言宗)の境内を通過した時です。初詣とまではいかないものの相当な人出で、今日は休日だったか?という錯覚にとらわれます。ここでは相当数の外国人観光客も見かけました。
印象的だったのは、高齢者や学生以外にも勤労者世代と見受けられる方々の姿が多かったことです。
テレビの天気予報では相変わらず週末の天気は云々という語りが多いですが、主にサービス業の人口が増え続けている関係で、それ以外の平日に休みを取る人も以前より増えていると推測されます。休日もかなりフレキシブルになってきたのかもしれません。
高尾山の周辺の山々は杉林が多く広葉樹が少ない関係で、紅葉で特筆すべき観光地とは言えないような気がします。にも拘わらず、平日でもこれだけの人々を引き付ける秘密は何なのか興味がわきます。以下、筆者の独断と偏見でその魅力を考えてみました。
人気の理由を考えてみた
- 何といっても、都心から約1時間という近距離で山登りと参拝が楽しめる手軽さがあります。また、薬王院までは長い上り坂が続き、いい運動になるので昨今の健康志向にもマッチしているのではないでしょうか。
- 山というと女性にとってはトイレの問題がありますが、ミシュランの3つ星を獲得してから山の中腹や山頂でトイレの充実が図られました。山ガールと呼ばれる女性登山客の増加にも対応できていると言えましょう。
- 6月15日から10月15日まで、ケーブルカー終点付近で高尾山ビアマウントがオープンしています。これは2時間制で飲み放題・食べ放題のビアレストランです。標高500メートルから東京の夜景が見下ろせる絶好のロケーションにあるレストランは、カップルやファミリー客を中心に混み合っています。
- 高尾山周辺は昔からとろろ蕎麦が有名ですが、高尾山口駅からケーブルカー乗り場に向かう途中にある「高橋家」は店の趣が古風で、都心の人気ラーメン店並みの行列がありました。
- 京王電鉄も力が入っているようです。高尾山口駅に隣接するように天然温泉「極楽湯」を2015年10月にオープンしました。入浴料は大人1,000円、4歳〜小学生が500円(いずれも通常料金・税込)です。下山した後に汗を温泉で洗い流して、ビールを流し込む。これはまさに極楽かもしれません。
- 余談ですが、高尾山のある八王子に30年間居住する”歌謡界のドン”北島三郎氏が、2014年に「高尾山」という曲を発表しています。
自然と食事と温泉を楽しみ、参拝で心を清める
筆者が高尾山に通うようになって10年以上になりますが、今回はその賑わいに驚かされ、同時に改めて高尾山の素晴らしさを感じました。山登りで汗をかいて景色を楽しみ、薬王院に参拝し、お蕎麦を食べたり温泉に浸かっておしゃべりをしたり。これこそストレス解消と健康維持の秘訣でしょう。
自然が豊かでいろいろな楽しみ方ができ、かつ、ミシュラン3つ星とくれば、高尾山周辺に多大な経済的プラス効果をもたらすと思われます。また、都心から離れていても、工夫次第で稼ぐ力を引き出せる地域が拡大することを願わずにはおられません。
石原 耕一