「退職金がゼロ円」の可能性も

定年退職時に関わらず、退職金はその後のライププランを大きく左右する収入といってよいでしょう。

退職金は勤務年数に応じて高まる傾向が見受けられることから、「とりあえず退職金1000万円を目指して働き続けよう」「定年まで勤め上げれば老後の生活は安泰かも?」などと考えた方もいらっしゃるでしょう。

そこでちょっと注意が必要です。

退職金をあてにできるのは、あくまでも「勤務先に退職給付制度がある」という場合。ご自身のお勤め先は退職金の制度を設けている会社でしょうか。

厚生労働省の「平成30年(2018年)就労条件総合調査 結果の概況」では、退職給付制度がある企業は80.5%と示されています。つまり、残りの2割程度は制度自体を設けていない、ということになります。

ちなみに、退職給付金制度を設けている割合が他業種と比べて低い業界として、
「宿泊業、飲食サービス業(59.7%)」「生活関連サービス業、娯楽業(65.3%)」「サービス業(他に分類されないもの)(68.6%)」などが挙げられています。

また、企業規模が小さいほど、退職金制度のない割合が高い傾向があります。

退職金の制度そのものがなければ、勤続年数がどれだけ長くても、退職金を受け取ることができないわけです。

ご自身の勤続年数だけで早合点することなく、勤務先の退職金制度について早めに確認しておくことがたいせつです。

まとめ

今回ご紹介したデータは、あくまでも「標準者退職金」をベースにした試算の結果です。

転職などにより勤務期間が短い人、思うように昇進できなかった人なども含めて、すべてのケースに当てはまるとは限りません。
冒頭でも触れたように、即戦力を求めて経験者採用に注力する企業は増えています。同時に、働く側にとっても収入アップを目指し、スキルを武器に転職を重ねることは一般的になっています。

「勤続年数」に大きく左右される従来の退職金制度は、企業・働き手双方にとって、メリットが低くなっていくことが考えられそうです。

すでに退職金制度を見直し、その代わりに企業型確定拠出年金を導入する企業も増加中です。

同じ企業で定年まで勤めあげる場合も、転職でキャリアアップを目指す場合も、「退職金」をアテにしすぎないほうがよいかもしれません。

これからの時代は、「自分自身で退職金を作っていく」くらいの気持ちで、老後資金の準備に取り組む必要がありそうですね。

いずれのキャリアプランを選ぶ場合も、若い頃からコツコツと資金形成を続けていくことが、遠い将来の安心に繋がります。

お金のことは親しい友人同士でも話題に出せないものです。

「勤め先に退職金制度がないが、老後資金はどうやって準備すればいいのか」
「無理なくお金を増やすコツが知りたい…」

そんなお悩みをお持ちの方は、お金のプロのアドバイスを受けてみることをおすすめします。

参考資料

平成30年就労条件総合調査」について

調査対象:日本標準産業分類(平成25年10月改定)に基づく16大産業(製造業や情報通信業、金融業など)に該当する産業で、常用労働者30人以上を雇用する民営企業(医療法人、社会福祉法人、各種協同組合等の会社組織以外の法人を含む)となっており、ここからさらに、産業、企業規模別に層化して無作為に抽出した企業が調査対象。

調査客体数:6405 有効回答数:4127 有効回答率:64.4%