ロボアドバイザーよりシステムトレード?
金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックの中でも「ロボアドバイザー(ロボアド)」が有望視されています。ロボアドでは、ユーザー(投資家)が、いくつかの設問に答えると、コンピュータが投資家のリスク許容度に応じて、国内外のインデックス投信や上場投資信託(ETF)を活用した最適な資産配分を提示してくれます。
ただし、ロボアドが提案するのはあくまでも、ポートフォリオの「配分」です。「これから値上がりしそうなファンド」を選んでくれるわけではありません。
「値上がりしそうな銘柄」を探してくれたり、さらにその銘柄の買い付けや売却(決済)までやってくれるものもあります。自動売買(システムトレード)です。プログラムトレードなどと呼ばれることもあります。
システムトレードの対象は、日経225・TOPIXなどの指数(や先物指数)、外国為替証拠金取引(FX)、日本株などです。中でもサービスが充実しているのがFXのシステムトレードです。以下、FXのシステムトレードについて検討してみましょう。
まず、FXのシステムトレードは儲かるのでしょうか。結論から言えば、儲かるプログラム(ストラテジー)もあれば、儲からないものもあります。
バックテスト(過去のデータを使ったシミュレーション)だけでなく、実際に半年間、1年間など、ストラテジーを走らせた結果、年率200%以上ものリターンを獲得しているものもあります。FX業者のサイトでは、好成績をあげたストラテジーのランキングが公開されています。
システムトレードを利用する際の注意ポイント
自動売買というと、「任せておけば放っておいても勝手に儲けてくれる」というイメージがありますが、実際にはいくつかの注意が必要です。
●狭いレンジ相場は、システムトレードは不得意
多くのストラテジーは、損切りラインを近くに、利食いラインを遠くに置いています。相場が動かないと、損切りばかりに引っかかって、いわゆる損切り貧乏になってしまいます。
●短期よりも中長期的な視点で
システムトレードは、勝ったり負けたりを繰り返しながら、トータルで利益を取りにいくのがセオリーです。短期間で成果が出るものではありません。最低でも3カ月、できれば半年~1年ぐらいは様子を見たいところです。
●リスク(ドローダウン)が大きい
前述したように、中長期で利益を取り行くスタイルのため、連敗が続くこともあります。ストラテジーの中には、ドローダウンが50%を超える(=投資金額の半分がなくなる恐れがある)ものもあります。証拠金は余裕を持って備えたいところです。
●ストラテジーの入れ替えが最大の課題
ストラテジーは万能ではありません。市場の変化に応じてリスクやリターンの異なるストラテジーに入れ替える必要があります。
ストラテジーの入れ替えも自動的に行う「フルオート」も登場
ストラテジーの入れ替えの判断は容易ではありません。大きく損をしたストラテジーを外しがちですが、それだといつでも「負けて退場」ということになります。損失が出る前に、あるいは損失が小さいうちに適切なストラテジーに入れ替えることが大切です。
「それができれば世話はないよ」と言われそうですが、最近になって、このストラテジーの入れ替えまで自動的に行うサービスも登場しています。
インヴァスト証券は今年9月、同社のシステムトレードサービス「シストレ24」に、あらかじめ設定したリスクやリターンなどの条件に基づき、複数のストラテジーの稼働や入れ替えを自動的に行える「フルオート」機能を搭載したと発表しました。一度稼働すると、ストラテジーの入れ替えが毎週土曜日に自動的に行われるそうです。
文字通りの「自動売買」が実現するとすれば、大きなトピックと言えるでしょう。現状は、リターンも堅実に出ているようです。今後の結果に注目したいところです。
下原 一晃