特に、国軍との関係が強いとなれば、正に今、市民の反中感情が高まることは十分に考えられる。実際、2月にはヤンゴンにある中国大使館前で市民らが抗議活動を行っている。

中国政府は3月16日、ミャンマーに進出する国有企業に対し、必要最低限の人数を残して退避させるよう指示を出した。また、これに絡み、台湾政府は現地で操業する台湾企業に対して台湾旗を掲げるよう勧告したという。

こういった状況は現地に進出する日系企業にとっても対岸の火事ではない。混乱の長期化は暴力へのハードルを下げるだけでなく、市民の冷静さや判断能力を低下させる恐れがある。

そうなれば、同じ外国権益ということで誤って日本企業の工場などが被害に遭う恐れがあるだけでなく、中国人と同じ東アジア系だということで識別が付かず、誤って日本人が襲われるリスクもあろう。

ちなみに、これは昨今アジア系へのヘイトクライムが増える欧米諸国と同じ類のリスクである。

日系企業の中には、自宅待機だけでなく早期帰国を進めている企業も増えている。短期的には終息する兆しは見えず、さらなる混乱や治安悪化が見込まれる中では、邦人保護・社員の安全を考えれば、早期帰国というのは最も現実的な選択肢だろう。

現時点において、国軍が素直にクーデターの撤回や正当性ある選挙実施に応じるはずはなく、また、欧米による制裁の効果は限定的なものになるだろう。

和田 大樹