2021年2月12日に行われた、Chatwork株式会社2020年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:Chatwork株式会社 代表取締役CEO 山本正喜 氏
Chatwork株式会社 取締役CFO兼コーポレート本部長 井上直樹 氏
2020年12月期決算説明会
山本正喜氏(以下、山本):Chatwork株式会社代表取締役CEOの山本です。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それではさっそく説明を始めます。
今回は2020年12月期本決算の決算説明となります。資料の構成としては、まず会社概要、そして2020年12月期の業績について、最後に、中期経営計画の発表です。
2021年12月期における業績予想のあとに、事業概要、Appendixと資料が続きますが、本説明会では時間の都合上、事業概要は割愛させていただき、会社概要、業績、中期経営計画、業績予想を私から説明させていただき、質疑応答に移りたいと思います。
会社概要
会社概要をご覧ください。Chatwork株式会社は、昨年末、2020年12月末時点で従業員数162名となっています。オフィスとしては、東京、大阪、ベトナム、台湾の4拠点となります。
コーポレートミッション
コーポレートミッションは、「働くをもっと楽しく、 創造的に」と掲げていまして、人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間において、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会の実現を目指しています。
事業セグメント
事業セグメントとしては、大きく2つあります。1つ目が、社名にもなっている主力のビジネスチャットツール「Chatwork」事業で、おおよそ9割占めています。もう1つはセキュリティ事業で、ウイルスセキュリティ対策ソフトウェアの「ESET」の販売代理を行っています。
「Chatwork」事業は以前より展開している事業であり、全社の安定的な収益に貢献しています。
業績ハイライト
2020年12月期通期の業績についてご説明します。まずは業績ハイライトです。通期売上高は24億2,400万円、前期比プラス33.6パーセントとなりました。もっとも重要な「Chatwork」事業の通期売上高は21億3,200万円で、前期比プラス33.2パーセントとなっています。通期の売上総利益は17億6,700万円で、前年同期比プラス56.6パーセントです。通期営業利益は3億2,700万円で、前年同期比プラス321.1パーセントとなっています。
2020年12月期におきましては、新型コロナウイルス感染症の蔓延もありまして、テレワーク需要の増加に伴い、売上高は前期比で大幅に伸長しています。
各利益、売上総利益・営業利益・経常利益はともに前期比で大きく伸長しており、黒字を継続しています。
また、今後の投資計画を踏まえて、第4四半期は繰延税金資産の取り崩しを行っています。その影響で、通期純利益は業績予想を下回っていますが、黒字を継続しています。
KPIについても、課金ID数は45万8,000IDと前年同期比プラス15.6パーセントとなりました。ARPUは価格改定の影響もあり、前年同期比プラス18.1パーセントと、大幅に増加しています。
業績サマリー(通期)
業績サマリーです。各業績の数字はスライドの表をご覧ください。もっとも大事な「Chatwork」事業の売上に関しては、業績予想の100パーセントを達成しています。
業績サマリー(四半期)
四半期の業績です。前年の四半期を比較した業績比でもプラス29.3パーセントと、引き続き大幅に伸長しています。
営業利益、経常利益の各利益は人件費、広告宣伝費が増加しているため、前四半期比で減少していますが、黒字を継続しています。
先ほどお伝えしたとおり、純利益は繰延税金資産の取り崩しの影響でマイナスとなっています。
売上高推移
売上高推移です。SaaSビジネスの堅調な推移、成長が見て取れると思います。
登録ID数・DAU数推移
KPIも登録ID数・DAU数ともに堅調に推移しています。
課金ID数・ARPU推移
課金ID数も順調に伸びていますが、ARPUに関しては後半に価格改定等の寄与がありました。グッと伸びている部分が、価格改定・旧プラン廃止の影響によるところです。
売上総利益・売上総利益率推移
売上総利益・売上総利益率ですが、昨年度からシステム原価を資産計上しているため、売上総利益が上がっています。資産計上していないものについても、グラフとして開示させていただいています。売上総利益・売上総利益率とも順調に改善しています。
営業利益推移
営業利益の推移です。昨年度の第1四半期、第2四半期とも大きく利益が出ましたが、第3四半期、第4四半期は積極的な投資を行ったため人件費・広告宣伝費が増加しました。利益としては減っていますが、積極的な投資を実現しています。
費用構成推移
費用構成の内訳となっています。ご覧のとおり、人件費・広告宣伝費が増えています。
従業員数推移
従業員数の推移です。昨年度は人員が大きく増加しました。期初から比べると55名ほどの純増となっており、過去の歴史上においても大きく人員が増えた年となりました。その内訳としては、エンジニア・カスタマーサクセス・インサイドセールスといった人員が中心となっており、プロダクトの価値をより向上させる、売上成長を加速させる人員の採用を強化しています。
中長期方針
続きまして、中期経営計画を発表します。まず、中長期の方針のお話をします。当期を含めた2021年から2024年を「シェア拡大期」と捉えており、そこでシェアを拡大し、「中小企業No.1ビジネスチャット」のポジションを確立したいと考えています。
その後、2025年以降で中小企業市場における圧倒的なシェアを背景に、あらゆるビジネスの起点となる「ビジネス版スーパーアプリ」としてプラットフォーム化を進めていきます。
2021年から2024年は、中期のシェア獲得における最重要フェーズと捉えています。そのため、投資スピードを最大限に加速し、「Chatwork」事業でCAGR40パーセントの高成長を目指していきます。
2021〜24年を最重要フェーズとする背景
2021年から2024年を最重要フェーズと捉える背景について、ご説明します。ご存知のとおり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が日本では大きなトレンドとしてあります。そこに加え、昨年からの新型コロナウイルスの影響でテレワークが一気に普及しました。
「ニューノーマル」と呼ばれる働き方の根本的な変化が起きたと言われており、新型コロナウイルスが収束したとしても、このようなオンラインでの配信や、ビジネスチャットのようなテレワークのコミュニケーションが当たり前になってくると考えています。
一方、現在のビジネスチャットの普及率は、我々の調査では12.5パーセント(※1)ほどにとどまっており、まだまだマイノリティです。ただ今後の3年間において、普及の壁であるキャズムと言われるポイントを超える可能性が高いと考えています。
キャズムは、人口のおおよそ16パーセントを超えると、イノベーションが進んでくる転換点と言われており、3年でこれを超えるだろうと予想しています。そのため、拡大が一気に加速していく非常に重要なフェーズと捉えています。
またビジネスチャットは解約率が非常に低く、他ツールへの乗り換えコストが高いという特徴があり、普及が進んでいない80パーセント近くのお客さまの最初のビジネスチャットに選ばれることが、今後のシェア獲得のために非常に重要なポイントとなります。その観点からも2021年から2024年を最重要フェーズ、投資を最大限に加速するフェーズと置いています。
※1:Chatwork株式会社依頼による第三者機関調べ、n=30,000
中期経営計画
中期経営計画ですが、主力の「Chatwork」事業におきまして、2021年から2024年でCAGR40パーセント以上と、高い売上成長を実現したいと考えています。2024年度時点では「Chatwork」事業とセキュリティ事業含めた全社の売上で、100億円を目指していきます。
また、「中小企業向けNo.1 ビジネスチャット」の定量的な目標としては、2024年度時点で、中小企業市場においてビジネスチャットが50パーセント普及すると予測しています。そのうちの40パーセントのシェアを獲得し、ナンバーワンを目指していきたいです。
中期目標に向けた戦略
2024年に、「中小企業向けNo.1 ビジネスチャット」というビジョンの実現のため、中心となる3つの戦略を中期で進めていきます。1つ目は、「Product-Led Growth戦略」です。こちらは、プロダクト自身が事業成長を加速する高効率な戦略で、これを推進していきます。
2つ目は、「Horizontal × Vertical戦略」です。業界理解を深めていくことで、顧客課題をお客さまとともに解決するコミュニケーションプロセスを構築していきます。
3つ目は、「DXソリューション戦略」です。チャットをプラットフォームとしたDXソリューションのビジネスを展開していきます。これらについて詳しくご説明していきます。
Product-Led Growthとは
1つ目の「Product-Led Growth戦略」について、Product-Led Growthというと聞き慣れない方も多いかと思いますが、こちらは米国で注目されているSaaSの成長戦略の1つです。
プロダクトを通して顧客獲得を行っていく成長戦略で、旧来型のマーケティングやセールスのチームが営業も行って獲得していく戦略を、Sales-Led Growthと呼び、区別しています。
このようなProduct-Led GrowthをPLGと略しますが、PLGの代表例にZoomやShopifyなどがあり、非PLG企業と比べて、労働集約ではない事業成長が可能となることから、高い成長率を実現しています。
PLGの戦略は、総利用のユーザー数が多いことや、口コミで広がっていくサービスといったところが重要となります。当社サービスは、ネットワーク効果によって広がっていく特性を持っているため、PLGの成長戦略の推進が非常にフィットしていると考えています。
PLG戦略 = 2つの成長エンジンを1つに
実際に、PLGの戦略はどのようなものかご説明すると、これまでの決算説明では、我々は2つの成長エンジンを持っているとお伝えしてきましたが、その2つの成長エンジンを1つにします。
まずはオンラインで獲得し、自然に増えていくというフリーミアムモデルです。こちらはインターネットで検索してもらい、無料の会員になっていただくかたちのものです。そこから活用が進んでいくうちに制限がかかり有料化するところを、セールスの手を介さず、ユーザー自身で有料化まで進んでいくオーガニックな成長を実現するモデルとなっています。
こちらに加えて、マーケティングのチームが、資料請求や問い合わせより見込み客を獲得し、そこに対してセールスがクロージングをかけて有料化していくセールスモデルを立ち上げてきました。
この2つを持っていることが、2つの成長エンジンとご説明をしていきました。この2つを1つに統合するところが、今回の「Product-Led Growth戦略」となっています。
従来、資料請求や問い合わせで獲得していたマーケティングのチームが、今度はフリーユーザーの獲得を目標にします。自然流入や紹介といった、これまでからのオーガニックなフリーユーザーの獲得に加えて、さらにマーケティングチームの広告宣伝費をかけた獲得が乗ることにより、さらに大きなフリーユーザーの獲得が進むわけです。
獲得したフリーユーザーに対して、これまではChatworkを初めて利用するお客さまにセールスをしていたセールスのチームが、初期の活用支援、オンボーディングの支援といった活動を行います。そして、活用してから有料化していく、そのプロセスをセールスのチームがカスタマーサクセス部門のように担当していくものとなっています。
また、プロダクトとしてもアクティブ化を推進していくための、たくさんのプロダクト機能のアップデートも進めていきます。従来のこの2つの独立していたモデルの構造を1つにまとめるのがProduct-Led Growthのモデルであり、戦略となります。
PLG戦略での成長イメージ
この戦略により、どういった成長が実現できるかといいますと、今まで、フリーミアムのモデルは自然流入で勝手に伸びていくものだったのですが、ここに広告宣伝費を投入することにより、ユーザー数の拡大が実現できます。
また、セールスのプロセスが、ユーザーを獲得してからユーザーの活用促進をするという、カスタマーサクセス部門に近いものへと転換します。
それによって、従来はお客さまの状況がセールス前はわからなかったところが、実際にユーザーになっていただくことにより、どのように「Chatwork」をお使いいただいているか、我々がデータとして持つことができます。
高度なデータ分析を行い、システムによって有料化しやすいお客さまのピックアップや、「このような提案が効きやすいのでは?」といったところも含めた高効率なカスタマーサクセス、セールスが実現できます。
成長のイメージとしては、スライド下部にグラフで記載していますが、赤い部分が従来のフリーミアムの成長、青い部分がセールスモデルの成長となっています。
従来の延長の成長に加えて、フリーミアムの広告宣伝費の投下した売上は、セールスにおいても、効率的なカスタマーサクセスの実現により引き上げが可能となります。双方グッと上がり、成長速度を上げることができると考えています。
Horizontal SaaS と Vertical SaaS
続きまして、「Horizontal × Vertical戦略」です。こちらに「Horizontal SaaS」と「Vertical SaaS」という言葉があります。「Horizontal SaaS」は業界に関係なく、どんな業界でも使えるSaaSのことで、Horizontalというのは水平という、横に広がっているという意味です。
また、もう1つが建設業界や介護業界といった特定の業界に特化した「Vertical SaaS」となります。こちらは垂直型SaaSという分類です。
「Horizontal SaaS」については、水平に利用できるSaaSのほうがマーケットは広く大きいです。我々も含め上場しているSaaSはたくさんありますが、ただ、汎用的に利用できるがゆえに業界固有の問題解決で工夫したり、カスタマイズして現場に適応することが必要で、高いリテラシーが必要となります。
「Vertivcal SaaS」が今勃興してきていますが、カスタマイズ不要で、すぐに現場で使えるところが特徴です。そのようなものが増えてきているのは、Horizontalなアプローチだけでは届かないお客さまに、Verticalなアプローチ、業界特化型のアプローチが必要となってきている背景があるからだと思います。
「Chatwork」は、代表的な「Horizontal SaaS」の1つです。我々は「Horizontal SaaS」ではありますが、そこにVerticalな要素を加えていくというのがこの戦略のポイントとなっています。
Horizontal x Vertical戦略とは
この背景としては先ほどもお伝えしたとおり、今後の市場はキャズムを超えていきます。キャズムを超えるということは、「マジョリティ市場(大衆市場)」のお客さまがターゲットとなってきます。全体の人口の3分の2を占める一番大きな市場となってきますが、こちらはお客さま自身が現場での実用性を感じて、現場ですぐ使えるのかといったことを重視する市場となっています。
ですので、ビジネスチャットという業界は、かなりHorizontalなプロダクトを土台に、専門のチームによって業界理解を深めて、顧客課題をともに解決する「Vertical SaaS」のように、業界の課題を解決できるようなコミュニケーションプロセスを構築していきたいと考えています。「Horizontal SaaS」の広さと「Vertical SaaS」の深さ、そのようなものをあわせ持つサービス展開を試行していきます。
オペレーションの全体像
実際どう行っていくかというオペレーションの全体像をご説明します。主要な競合ベンダーと比較して、我々には国内に地盤に持つベンダーという特徴があります。その強みを生かして、専門のチームによって業界研究を進めています。
業界ごとにどんな業務を行っていて、どういう課題があって、そこにビジネスチャットをどう使うことで解決していくかというところを型化していきます。
その型化された知見をマーケティング、セールス、カスタマーサクセスへと展開していくことで、これまでだと「ビジネスチャットは便利ですよ」「メールに比べて便利ですよ」「会議の無駄をなくしませんか?」という基本的なアプローチであったところが、「介護の業界のこの課題にこう使うことで解決できます」という、圧倒的に実用性が高い提案が可能になると考えています。
また、その知見をプロダクトの機能強化にも取り入れていきます。業界特化型SaaSはたくさんありますが、それらとAPIの連携を進めて、強化していきます。
DXソリューション戦略とは
3つ目は、「DXソリューション戦略」です。これは、ビジネスチャットのシェア拡大を進めていくところと並行して、DXのソリューションビジネスを展開していきます。
こちらは自社だけで行うのではなく、多様な他社サービスと提携し、そこにビジネスチャットを掛け合わせた独自の新規サービス、「PFサービス」と我々は呼んでいますが、こちらを拡充していきます。
この「PFサービス」によりカスタマーサクセス部門、お客さまのサポートをする部門にDXアドバイザリーサービスを開始して、お客さまの課題解決に向けて提案を進めていきます。
すでに実績のあるPFサービスを大幅に拡大
「PFサービス」というのは、新たに始めるというものではなく、すでに実績があります。「PFサービス」の提供は2016年から展開しており、売上の部分はスライド左下のグラフに記載していますが、順調な成長を続けています。
「PFサービス」の利用は、約半数が無料のフリーユーザーからの申し込みとなっており、課金ユーザーだけではありません。ですので、アカウント課金に依存しない収益構造を生み出すことが可能です。
「Chatwork」の成長とともに、ユーザー数も相当な勢いで増えており、プラットフォーム価値がどんどん向上しています。ここに対して、「PFサービス」の提案をしっかりとすることで、売上成長を拡大していきます。
また、アライアンス、資本提供、M&Aを含めて、ライナップを大幅に拡充していきます。これまでは比較的事業検証という側面が強かったところを大幅に拡充していき、ここでしっかりと売上を作っていくというフェーズに入ってきていると捉えています。このようなものを、DXアドバイザリーサービスを通して提供していきます。
DXアドバイザリーサービスを展開
カスタマーサクセス部門にてDXアドバイザリーのサービスを提供しますが、我々はビジネスチャットという、強力なタッチポイントを持っています。
メールでサービスをご案内してもスパムのように思われてしまい、なかなか見ていただけないという問題がありますが、我々にはチャットというチャネルがあります。チャットですと、すごく見ていただけます。また、見ていただいた後にやりとりが可能になるため、非常に効率的なサービス提供ができます。
このようなものを「PFサービス」以外にも「Zoom」や「Receptionist」とも組ませていただいています。「Chatwork」との連携により便利になるSaaSの代理店販売であったり、M&Aや自社開発のプロダクト、SaaSも今後立ち上げていきますが、そのようなものも含めて、DXアドバイザリーサービスによりお客さまの状況に合わせて最適なDXサービスを選定し、提案できるような体制をつくっていきたいと思っています。以上が、3つの戦略となります。
長期ビジョン
続きまして、長期ビジョンロードマップのご説明です。長期ビジョンは、引き続き「『Chatwork』はビジネス版スーパーアプリへ」というところを目指していきます。スーパーアプリは、先ほどからお伝えしているとおり、プラットフォーム化してあらゆるビジネスの起点となるアプリのことです。
我々がなぜそれを目指せるかと言うと、ビジネスチャットは他のSaaSと比べても、営業、エンジニア、バックオフィス、そのような職種を問わず滞在時間が圧倒的に長いものです。朝から晩まで業務時間中開いているというSaaSは、他にはないです。そのような特徴があるので、プラットフォーム価値が非常に高いと考えています。
プラットフォーム価値の高さと、さまざまなサービスをお客さまに提供できる仕組みを持っていることから、我々がスーパーアプリを実現できる立ち位置にいると考えています。
3つの戦略を遂行することで、ビジネス版スーパーアプリを目指す
先ほどの3つの戦略が、どのようにビジネス版スーパーアプリにつながっていくのかご説明します。
従来は、有料ユーザー数×ARPU、単価で売上が構成されている主要なKPIでしたが、そこのKPIを変えていきます。「ユーザー数×アクティブ指標×ARPU」という式へと転換していきたいと考えています。
無料、有料を問わずユーザ-数を大きくしていくことと、その拡大したユーザー数のアクティブ化を推進していくことにより、アクティブユーザーがたくさんいるプラットフォームの価値が高い状態を作ります。
アクティブユーザーが、たくさんの周辺のサービスなども利用していただくことによりARPUを上げていくかたちです。
各戦略はそれぞれのKPIに対応しています。1つ目の「Product-Led Growth戦略」を進めていくことにより、フリーユーザーがマーケティングの広告宣伝費を投下して拡大していきます。有料ユーザー数も、セールスが後押しすることによって拡大していき、ユーザー数が無料、有料問わず増えていきます。
2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」は、お客さまの提案がより深くなり、アクティブ化が進んでいきます。こちらはDAUであったり、MAUであったり、また、どれくらい「Chatwork」を深く使っていただくかといった活用度を指標にしていきます。
そして、3つ目のDXソリューション戦略では、アカウント課金だけではなくて、周辺事業の収益も、アクティブユーザー数が多ければ多いほど単価も上がり、売上を増やすことができる、そのような状態を作っていきます。
「たくさんのユーザー数」と「アクティブ化が非常に高い状態」、そして「ARPU、単価が高い」、この3つを掛け合わせたものが、プラットフォーム価値が高いサービスになり、その状態がビジネス版スーパーアプリの状態と考えています。この3つの戦略を推進することにより、スーパーアプリの構想が実現できます。
中期戦略ロードマップ
中期戦略のロードマップとなっています。4年にわたる戦略の実行のため大枠ですが、このような流れで進んでいきます。
2021年度、当期に関しては、戦略実行の準備のフェーズが中心になっており、検証や、モデルの統合の準備を進めていく年になります。
そこから統合して準備が進んだところで2022年に実施、遂行していき、2023年、2024年までレバレッジをかけて、そのサイクルを大きくしていきます。
当社ミッションと社会課題への取り組み
そして、究極的に我々が目指すところとしては、コーポレートミッションである「働くをもっと楽しく、創造的に」と、そのような社会をつくっていくことを目指します。
我々が解決したい社会課題としては、多すぎる会議や電話による割り込みといった、非効率なコミュニケーションによる生産性の低下を解決します。また、商談といったビジネスの移動に伴う時間のロスであったり、紙の資料配付による環境負荷を低減できると考えています。
このような我々の事業の価値が、SDGsの主に2つの領域、Goalの8番である「働きがいも経済成長も」と、15番の「陸の豊かさも守ろう」という生態環境の保護と環境の改善に貢献できると考えています。
2021年12月期 業績予想
続きまして、当期の2021年12月期の業績予想です。引き続き「Chatwork」事業の売上高成長を重要の経営目標と置いています。先ほどの中期経営計画で発表したとおり、2021年から2024年をCAGR40パーセントの売上成長をする計画として掲げさせていただいています。
その1年目として、当期は2021年12月期業績予想で、「Chatwork」事業の売上高は前期比でプラス35パーセント以上、全社売上高は前期比でプラス30パーセント以上という目標を掲げています。
前期比、昨年対比は33パーセントでしたので、今期は前期を上回る成長を実現できるよう目指しています。
さらにそこから成長を加速させていくことで、4年でCAGR40パーセントを目指していきます。以上で私の説明を終了します。
質疑応答:今後のテレワーク需要によるビジネスチャットの導入について
質問1:2020年第2四半期に、新型コロナウイルスの影響を大きく受けて加速したテレワーク需要によるビジネスチャットの導入について、その後の推移や今後の見通しなどを教えてください。今期ビジネスチャット導入が大きく進むような追加要因となるものは、どのようなものがあるのでしょうか?
山本:新型コロナウイルスの影響については、ご説明のとおり、テレワーク需要の増加は当社の事業環境としては追い風となり、昨年度、特に4月の緊急事態宣言により、単月でググッと登録ID数が伸びるなど、大きなインパクトがありました。
第3四半期以降もベースアップの状態が続いており、ユーザー数のKPIと売上についても、ベースは上がっている状態が続いています。今年も新型コロナウイルスの波とともにベースアップが続くと考えています。
また、新型コロナウイルスが収束したとしても、根本的な働き方の変化が起きているため、この流れは加速していき、キャズム超えにつながって、マジョリティ市場に行くと考えています。
質疑応答:ARPUのグロースについて
質問2:値上げ影響を除いた場合、ARPUのオーガニックグロースは年率でどれくらいになりますか?
井上直樹氏(以下、井上):ARPUの伸びについては、スライド13ページのグラフにもあるとおり、値上げの影響は今年の第2四半期以降にありますが、第2四半期以降の上がり方を見ていただくとわかるとおり、それ以前の上がり方と大きな変更はないと感じています。この伸びは、今後も続いていくものと考えています。
山本:少し補足すると、戦略でもお伝えしたとおり、今後、アカウント課金に依存しない収益の柱も増えていくため、ARPUはそのような面でも増えてくる可能性が十分あると思います。
質疑応答:成長と利益確保のバランスについて
質問3:投資を優先するため営業赤字も視野に入れていますか? 成長と利益確保のバランスの考え方について教えてください。
山本:こちらに関しては成長フェーズと捉えているため、投資も最大限加速していきたいと思います。そのあたりは機動的に判断しつつ、もちろんROIを考えながらしっかりと投資をしていきます。
質疑応答:採用計画と広告宣伝費について
質問4:採用計画および広告宣伝費の金額について教えてください。
井上:採用については、17ページでお伝えしているとおり、前期は積極的に採用を進めています。
井上:16ページには実際の費用構成費が出ており、このように伸びています。また、投資の最重要フェーズである今期は、引き続き、採用数を増加していきたいと考えています。
質疑応答:戦略の実行性と競合他社について
質問5:中期経営計画の3つの戦略について、御社はこの戦略を実行できる土壌が整っているのでしょうか? 競合他社が同じような戦略をとってくる可能性について教えてください。
山本:こちらに関しては4年かけて実行していくものであり、その準備をしっかり整えた上で立てた戦略です。
山本:昨年度、人員を大量に投下をしていますが、その中でも執行役員CSO兼ビジネス本部長の福田が就任しています。戦略を担当する執行役員が就任し、彼の考えも踏まえて戦略を構築しています。
実行性については、戦略のキーマンという重要なポジションの採用に昨年度は成功し、あとは今期にその体制を構築しながら実行していきます。準備は十分整っていると考えています。
競合他社が同じような戦略を取るかということですが、我々の特徴から、一番実行しやすい戦略だと考えています。
それぞれにご説明します。1つ目の「Product-Led Growth戦略」に関しては、競合に比べてオープンプラットフォームの特徴を持っているため、他者とつながりやすく、口コミで広がりやすい特性があります。競合他社は資本が非常に大きなところがが多いのですが、その特徴により全然負けていないと考えています。
さらにそれを推進していく「Product-Led Growth戦略」は、プロダクトがプロダクトにより広がっていくため、他社のプロダクトと比較しても、相当実行しやすいプロダクトだと考えています。そして、積極的にそこに投資をしていくことにより、大きく成長させることができます。
2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」では、ご説明の中でもお伝えしましたが、国内ベンダーである強みを最大限生かしたいと考えています。
海外のベンダーは資本効率がよく、全体の大きなマーケットに資本を集中せざるを得ないところがありますが、我々は日本の中小企業のマーケットを集中することができるため、Verticalな業界を戦略的に見ることができるといった強みを生かしていきたいと思います。
介護や建設、士業、医療、小売など、このような業界に強いことがこれまでのChatworkの強みでしたが、さらにそれを一歩進めることが顧客とつながる、国産である我々にしかできない戦略だと感じています。
3つ目の「DXソリューション戦略」については、社会とつながりやすい特性と、業界特化で行っていく強みを生かすことにより、我々にしかできないような提案ができます。
これら3つの戦略は、我々がもっとも競争力を発揮できる戦略だと捉えています。
山本氏よりご挨拶
山本:本日はお忙しい中、決算説明にご参加いただきまして、ありがとうございます。本日発表させていただいた中期経営計画、ならびに当期の業績予想を達成するため、全社一丸となって努力していきますので、引き続きご支援のほどお願いします。本日は、本当にありがとうございました。