2021年2月4日に行われた、参天製薬株式会社2021年3月期第3四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:参天製薬株式会社 代表取締役社長兼 CEO 谷内樹生 氏
参天製薬株式会社 常務執行役員 経営管理担当兼 CFO兼 財務・管理本部長 越路和朗 氏
参天製薬株式会社 執行役員 製品開発本部 中国製品開発統括部長 森島健司 氏

基本理念とWORLD VISION

谷内樹生氏:みなさん、こんにちは。谷内です。よろしくお願いいたします。お手元の資料、まず2ページをご覧ください。「基本理念とWORLD VISION」というかたちで書いています。従前から申し上げていますが、こちらは私どもの会社の理念として、また、将来目指す、私たちが実現したい世界として「Happiness with Vision」を掲げています。

Santen 2030

また、こちらに基づきまして、次のページにございますが、「Santen 2030」という長期ビジョンを発表させていただきまして、着実にこちらに向けた取り組み、中長期的な成長を実現するための施策を進展させています。こちらは、また後ほどご紹介させていただければと考えています。

2020年度第3四半期 進捗

それでは、4ページ目をご覧ください。こちらは、第3四半期の進捗ということでまとめています。第3四半期は、全世界的に見てCOVID-19の感染拡大であったり、さまざまなマイナスの影響がございました。そういった中ではございますが、私どもの事業としては大変順調に推移しています。

日本をはじめまして、アジア・中国・ヨーロッパ、それぞれの地域で、現場もがんばっていただいて、また、いろいろ関係者の方々ともパートナーシップを築き上げながら事業を成長させています。大変堅調に、日本・アジアについては数字も動いていますし、同様にヨーロッパ・中国も、COVIDの影響がありながらも順調に推移している状況です。

また、米国につきましては、買収いたしましたEyevanceのPMIも順調に動かしています。当然アメリカでもCOVIDの感染がありますので、移動等については制限がされていますが、そこはリモートで順調にPMIも行っています。業績はまだ非開示ですが、計画どおりの立ち上がりをしていますので、こちらを順調に伸ばしていきたいと考えています。

中国については、次のページでまたお話ししますが、足元の業績の影響はほぼほぼ想定内で、中長期的な成長ポテンシャルは一切ぶれずに、それを実現すべく展開している状況です。数字はご覧いただいたとおりで、ほぼほぼ対前年と同じような売上と利益というかたちで実現できていますので、この勢いで第4四半期、それから来年へと続けていきたいと考えています。

中国事業の短期的影響と方向性

5ページ目をご覧ください。こちらは、前回もみなさま方から大変ご質問を受けましたが、中国事業の状況につきましてご説明いたします。

こちらは下に書いていますが、詳細につきましては明日の夕方に別途、私あるいは中国の関係者も入って、「どういう事業戦略を描いているのか」「今後どういう成長のポテンシャルを考えているのか」、それから「足元の業績はどうなっているのか」について詳細にお話ししたいと思っていますが、今日はあくまで簡単なアップデートをさせていただきたいと思っています。

まずは、前回も出ました「クラビット」については、ほぼほぼ想定どおりに、業績としてはきています。すなわち、三級病院を中心としたところが下がりつつも、それ以外のところでしっかりと売上を伸ばし、あるいは業績、売上のアロケーションをしっかり変えて、市立病院とかリテールのところで数字を伸ばして、3割減くらいの数字で動いている状況です。

それから、昨日、「ヒアレイン」の入札が行われました。「ヒアレイン」は3剤ありまして、一番大きな0.3のマルチドーズが今回対象外で、売上的にいうと少ない、3割くらいを占めている0.1とか「ヒアレインミニ」が対象になります。こちらは「クラビット」と同様、落札はしていませんが、これによる影響は非常に限定的です。というのも、もともと構成比が小さいものであることと、「ヒアレイン」は「クラビット」以上に大病院に依存度が低い製品ですので、業績は今のところ限定的とか軽微とか、そういう状況だとご理解いただければと思います。

今日はこれだけをやるわけにはいきませんので、また明日詳しくご説明したいと思います。また今後も、結果発表の場は、どうしても時間も限られていますので、極力決算の数字とか重要なイベントの共有になるべく時間を使わせていただいて……今回の中国のような戦略コンテクストについては、別の時間でじっくりとお話をするスタイルにしていきたいと思っていますので、ぜひご理解いただければと考えています。

成長戦略:眼科領域における多様化への挑戦

こちらは、1月のJ.P.モルガン等でもお話しした部分ですが、中長期的にどういうかたちで成長しているのかというところと、足元の状況を関連付けながら少しお話しさせてください。

今映っている6ページ目ですが、こちらは「地域」の軸と「技術」の軸と「サービス」の軸、3つ置いています。過去10年間、参天は主に医療用の眼科薬、低分子の眼科薬に軸足を置きながら、「地域」を伸ばし成長してきました。その流れで、今アメリカへの参入もまさにしているところです。

今後はそれをやりながら、「技術」の軸と「付加価値」の軸、あるいは「サービス」の軸を広げていくというところに、次の手を打っているということです。

成長戦略:眼科領域のソリューション拡大

7ページ目ですが、そちらを表したものがこちらです。真ん中の低分子化合物も保険市場、RXのマーケットの事業を基盤事業として、じっくりと成長を実現するところです。例えば、aerie社の製品を工夫をしたりしています。

それをやりながら、成長しながら、そこで稼いだキャッシュで、例えば右にある新規モダリティ、遺伝子治療とか細胞治療を中期的あるいは長期的に大きな事業にすべく、現在開発に向けた投資を行っている状況です。

あるいは、左の、今度はデジタルとかデバイスです。「MicroShunt」であったり、Verilyとのジョイントベンチャーを立ち上げて、あるいは開発を進めている状況です。また上下の軸、サービスにつきましても、保険診療だけじゃなくて自費医療であったり、あるいは健康に関連するところへのアプローチ、例えば眼瞼下垂といったところも広げている、ということで、この次期中計の間で、いろんな仕込みだったり、技術の獲得をしながら成長を中長期的に実現する方向で経営を行っています。

持続的成長にむけた戦略展開

8ページ目ですが、それを据えた中で当面のポイントを整理しています。

1つ目は、「グローバルな成長を牽引する成長ドライバーをしっかりと立てること」です。こちらは、まずはパイプラインの拡充、これは従来から並行して行っていますし、今後も内部のプロジェクト、それから外部のプロジェクトを取り入れていきます。

それから、地域展開です。とくに中国だけではなくて、やはり米国だと私は思っています。とくに次期中計の期間は、今後またお話ししますが、米国が大きなカギを握ると思っています。やはりアメリカの市場が世界の半分以上を占めているところで、参天がそこでこれまで売上が立たれていないと。そういう中で、Eyevanceはまだ小さな一歩ですが、それに続けた製品の投入であったりとか、インオーガニックな成長を実現して、まずはこの先3年から5年くらいで、米国の成長ドライバーをしっかり立てていきたいと思っています。

加えて、その先の成長を担う新規事業の立ち上げを行っていくのが、まずは成長ドライバーの軸です。これは、それぞれ一つひとつ順調に進んでいる状況です。

また、それを支える基盤の強化拡張も手を打っていまして、本日リリースしましたが、グローバル経営体制に向けた経営の進化・グローバル化の進展も着実に行っていきますし、また、とくに中国・アメリカの現地での我々の実行基盤・組織能力の強化、それからそういった成長を支える供給拠点の強化ということで、滋賀であったり蘇州であったりといったところへの設備投資も行って、万全の体制で戦略の展開を実行していくつもりです。

引き続き、こういったかたちで中長期の成長を追求していきたいと考えています。当然、足元の状況もしっかり見ながら、COVIDの状況は続きますが、今回の第3四半期のようにしっかりとした数字を出しながら着実に成長していきたいと考えています。私からは以上です。

2020年度第3四半期業績

越路和朗氏:では、10ページをご覧いただけますでしょうか。今年度第3四半期の累積の業績です。先ほどCEOから説明がありましたとおり、COVID-19の影響はあるものの、堅調に推移をしています。売上・利益ともにほぼ前期と同じ水準を確保した状況です。

ご存じのとおり、今年度通期は売上がマイナス2.7パーセント、コア営業利益はプラス4パーセント、減収増益の業績予想になっていますが、それに対して売上がほぼ横ばいで、コア営業利益は若干の減益ですが、社内の予算計画進捗につきましては、想定よりも速いペースで売上・利益ともに推移している状況です。

下の項目につきましては、四半期利益ベース、一番下ですが、こちらで3.3パーセントの増益となっています。

これは、そのほかの費用、あるいは金融費用、こういったところで想定していた金額が前年に対して少なかったことと、税率が低減している。これは一過性の税効果の影響もありますが、それらがあいまってご覧のような結果となっています。

2020年度第3四半期 売上収益(前年同期比)

次、11ページです。売上のブレイクダウンですが、左端が前年度第3四半期の累積の売上高。そこから右側に各々の内訳を記しています。外国為替レートの影響につきましては、右側から2列目に書いてありますように、今年度についてはさほど大きな影響がありませんでした。詳細は下の内訳をご覧いただければと思います。

2020年度通期業績予想:5月8日開示から変更なし

12ページです。2020年度の通期での業績予想は、期初5月8日の開示から変更はございません。しかしながら、前提条件の変化といたしましては、第2四半期に買収をいたしましたEyevance社の業績が第3四半期・第4四半期と連結対象になっていますので、今年度については、売上貢献はあるものの利益ベースではマイナスとなっていますので、それらをリカバリーしてもなお期初の業績予想・コア営業利益は実現しない。そのように思っています。

足元の状況では、COVID-19の長期化によりまして、とくに我々の想定よりも若干長期化している地域もございますが、そういう不測要因、あるいは毎年のことではございますが、国内での花粉の飛散状況、そういった不確定要素はあれども経費をコントロールすることによりまして、ボトムのコア営業利益につきましては、確保をしたい。そのように考えています。私からの説明は以上です。

STN1011700/DE-117:米国での新薬承認申請受理

森島健司氏:よろしくお願いいたします。まずは、パイプライン表を使った説明の前に、米国でのエイベリス点眼液の開発状況と、中国の臨床開発のトピックを説明させていただきます。

14ページをご覧ください。日本で「エイベリス点眼液」として販売している「STN1011700」は、2020年11月に米国FDAに新薬承認申請を行いました。先日申請が受理され、PDUFAのプロセスに基づき、11月19日の完了を目指して審査が進められています。

申請にあたりましては、4つのフェーズ3試験を含む、合計12の臨床試験データを提出いたしました。米国でのピボタル試験にあたる3つの試験のうち、2つは主要評価項目を達成しています。米国とアジアで実施しました、これらのピボタル試験のデータは来年度上期に情報開示させていただく予定です。

中国での臨床開発トピック

次、15ページをご覧ください。ここでは中国の臨床開発トピックについてご紹介させていただきます。「PRESERFLO MicroShunt」についてでございますが、中国の医療特区に指定されている海南島で未承認医療機器使用プログラムの一環として、「MicroShunt」の手術が行われました。このことが「MicroShunt」の承認に結び付くものではありませんが、今後中国での開発を後押しするものと期待しています。

もう1件は、「Verkazia」です。小児や若年層に多く見られる、重症アレルギー疾患である春季カタルの治療薬として、欧州やアジアではすでに販売しています「Verkazia」、開発番号「STN1007603」ですが、これは中国の臨床上緊急に必要とされる海外新薬リストに追加されました。これは、中国の国家医薬品管理監督局と、国家衛生健康委員会により選定されるものでございまして、選定された場合には承認・上市までの期間短縮が期待されます。実際、「Verkazia」に関しましては、市販後に臨床試験は求められてはいるものの、申請前の中国での臨床試験は免除されることを確認しています。

これらの活動も含めて、今後も中国の開発を力強く進めていくつもりでいます。

研究開発の現状①

次、お願いします。16ページからパイプライン表を用いて、進捗について説明させていただきます。

まず、先ほどもお伝えしましたように、「STN1011700」は11月に米国で申請いたしました。2021年11月19日までに承認されることを期待しています。そのほかにおきましても、アジア各国で申請を進めており、韓国では2月1日に上市しています。

次の、小野薬品より導入し、緑内障治療薬として開発しています「STN1012600」は、12月に米国での追加フェーズ2試験を開始いたしました。まだ計画の詳細を発表できる段階ではございませんが、引き続き日本での臨床試験についても検討を進めています。

次の緑内障用デバイス「MicroShunt」、「STN2000100」は米国での市販前承認申請を完了していまして、FDAとのやりとりを進めています。2021年上期までに承認されることを期待しています。カナダでも10月に申請しており、今年度中の承認を期待しています。

最後に、10月にライセンス契約を締結いたしました「STN1013900」、「Rhopressa」ですが、11月に日本でのフェーズ3試験が開始されています。試験の終了は2023年度の予定です。

研究開発の現状②

次、17ページをご覧ください。小児の筋腫の進行抑制を期待しています「STN1012700」は、2021年度、中国でフェーズ1試験を開始する予定です。日本・アジアで「ジクアス点眼液」として販売しています「STN1008903」につきましては、日本で新しい処方でのP3試験を行っています。1日あたりの点眼回数を減らすことができることを期待していまして、患者さまの負担を大きく軽減できると期待しています。来年度の試験終了を予定しています。

研究開発の現状③

次、18ページをご覧ください。日本・アジア・欧州で、「タプコム」「タプティコム」として販売しています「STN1011101」。これは、中国で患者さんの組み入れが遅れていまして、フェーズ3試験の終了が2022年度から2023年度に遅れる見込みです。

次、眼内レンズ「レンティス コンフォート」の乱視向けレンズ「MD-16」は、11月に上市しています。

すでに導入をお知らせしています眼瞼下垂を対象とした点眼剤「STN1013800」と、網膜色素変性症を対象とした細胞治療薬「STN6000100」は、来年度中の臨床試験開始を目指して、現在計画を策定しているところです。具体的な臨床試験計画が固まり次第、お知らせさせていただきます。パイプラインの進捗は以上です。

依然として、コロナウィルスの状況が臨床試験などに影響する可能性があります。これに伴い、いずれのプロジェクトも計画が遅れるリスクがあることをご承知ください。以上です。

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