「在職老齢年金制度」による年金額の変動

働き続けるシニアの場合、自身の年齢や収入は受給する年金額にも影響します。収入に応じて老齢厚生年金の支給額が下がる「在職老齢年金」が適用されるからです(※支給額が変動するのは老齢厚生年金のみ)。月収入が基準額を超える場合は、老齢厚生年金額の一部または全額が支給停止となります(※月収入=総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計)。基準額は以下の通りです。

基準額

  • 65歳未満で月収入が28万円を超える
  • 65歳以上で月収入が47万円を超える

基準額以下であれば全額支給されますので、年齢と基準額を考慮しながら働き方を検討してみるのも一案です。詳しい計算方法は、日本年金機構の「在職中の年金」をご参照ください。

2022年4月から65歳未満の基準額が変更に!

なお、年金改革法(2020年5月29日成立、6月5日公布)により、2022年4月からは65歳未満の基準額も28万円から47万円に変更されます。65歳未満の方の働ける範囲はさらに広がるでしょう。

正社員での雇用が難しい場合も多い

シニア層の場合、特別な技術や経験が重視される職種でない限り、定年退職後、今まで働いていた会社以外での正社員雇用は難しいのが一般的です。ディップ総合研究所による「55〜64歳定年後の就業意向調査」を見ると、定年後の雇用形態別の割合は、正社員(36.8%)契約社員(26.3%)アルバイト・パート(23.4%)となっており、雇用形態が正社員の60~64歳については、今までの会社に継続して就業している割合が5割強を占めています。多くは契約社員、派遣社員、アルバイト・パートといった正社員以外での有期雇用で働いており、その割合は全体の5割を超えています。

年代が高くなるにつれてシニアの正社員雇用に対する割合は下がるのですが、正社員として働き続けることを希望する方は少なくありません。したがって、求められる雇用形態とマッチしないことも多々あるようです。

まとめ

人生100年時代といわれますが、公的年金に対する人々の不安は増しています。定年後も働き続けたい場合は、「在職老齢年金制度」を理解して理想の働き方を決めていきたいですね。定年後をどう過ごすかは、定年が控えている40~50代のミドル世代も考えておくべき課題です。定年なんてまだまだ先と思わずに、早い段階でイメージしておいてもいいかもしれません。

参考資料

尾藤 ちよ子