人民元、対米ドルで約6年ぶりの安値をつける
人民元相場が対米ドルで下落しています。
本稿執筆時点(2016年10月11日東京時間午後2時)で、1米ドル=6.7126人民元の水準です。国慶節前には6.67台でしたので、約0.5%ドル高になりました。
人民元の対米ドル相場は、2008年の半ばから2010年の半ばまでの間は6.8台で横ばいでしたが(実質的にはリーマンショック後、中央銀行により固定相場的に運用)、2010年6月以降は元高基調になり2013年1月まで一貫して元高が続きました。元の高値は約6.05でしたが2013年2月以降、元安基調に変わりました。
このまま6.8台をつけると2010年6月以来の水準になり、文字通り行って来いの相場推移となります。
米利上げ観測、英ポンド安、人民元SDR採用!?
人民元相場は中央銀行の管理フロート制で決まっており、差し迫った場合を除いてきわめて漸進的に相場が変化していきます。中央銀行の意向を知るには、中期的にどう相場が推移してきたかが重要です。その意味で、6年ぶりの元安水準というのは大変重要です。
では、この元安の背景は何でしょうか。IMFのSDRに採用されたためより柔軟に相場水準を動かしやすくなった、英ポンド安で強くなった人民元を対米ドルで安くして調整を図っている、米国の利上げが近づいた、などの理由が挙げられています。確かにいずれも正しいと思われる解釈ですが、もう少し大きな視点で考えてみてもよいでしょう。
管理された人民元安か?
中国では最近、当局から企業の過剰債務問題への対応が語られています。国有企業を中心に過剰能力と過剰債務を整理し、業界再編と資本市場を利用した財務体質の改善を進めようとしています。この援軍として人民元安を進めるという見方もできそうです。
現在株式市場は平穏であり、また、6年前よりも上海総合指数は高い水準にありますので、このソフトランディングシナリオには信頼感があると言えそうです。
しかし、過熱する不動産市場を沈静化させる方針も出ています。対内投資を呼び込み、不動産から株式市場へうまく資金を誘導して首尾よくエクイティファイナンスをこなせないと、ソフトランディングシナリオが崩れ、資本が離れる事態が起きないとも限りません。
外貨準備の水準は2011年の水準にあり、かつ経常収支黒字国ですので、今のところ問題はありません。しかし、通貨防衛のために外貨準備がじりじりと減少していけば市場の疑心暗鬼が深まります。中国の人民元、株式市場、不動産市場に対して、従来にも増して注意が必要になるでしょう。
LIMO編集部