預貯金だけではお金が増えないということを理解するだけでも十分です。それが、すぐに株式や投資信託になるかどうかは別にして、現実的には選択肢は限られるわけです。もちろん、全体の資産の中で、安全第一で現預金比率を高めにしたいという運用方針であれば全く問題はありません。

筆者も金融資産に占めるリスク資産(株式・投資信託)は3割程度ですから、その部分のリターンが多少増えたとしても、さほど大きな収益になるわけではありません。

ただ、反省点があるとすれば、もう少し積極的にリスク資産に運用していてもよかったかなと思います。なぜなら、リターンを産まない資産を保有していても、使わないお金は結局意味のないお金になってしまうからです。預貯金で残るのはいいのですが、このゼロ金利化で現金を持っていても、あまり役に立っているとは思えないからです。

三菱UFJ信託銀行の調査(2018年12月)にると、相続者の平均相続金額は2,114万円。老後資金が2,000万円不足すると言われている状況下、実際は2,000万円以上の資産を残される方が多いのも現実です。

日本人全体の投資行動から鑑みると、リスクを取らずに預貯金を重視したとしても、結局財産はそれなりに残るということです。逆に考えれば、本当に老後資金に不安があるのであれば、なるべく早い時期から少額でも貯蓄や投資を始めておけば、そこそこの老後資産が築けるということを示唆しています。

過度にリスクを避けることは、資産形成の機会を逃すことでもあります。当たり前の話ですが、この記事を読んでくださった読者の皆さんが資産形成層であるならば、このことをぜひ理解してもらいたいのです。

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)