キュレーターから読者に伝えたいポイント

アメリカの投資格言に、「Sell in May, but remember come back in September」(株は5月に売りなさい、でも9月に再び戻って買うことをお忘れなく)というものがあります。この理由は、例年6月から9月にかけて株価が軟調になる傾向がある一方で、9月には株価がボトムを迎える傾向があるため、とされています。

この格言は米国のものですが、以下の3つの理由から、今年は日本市場についても“come back in September”が当てはまりそうです。

テクニカル面で買い安心感が高まる

9月からが「買い」である第1の理由は、テクニカル分析によります。テクニカル分析は、チャート分析とも言われ、日々の値動きを通して今後の株価や為替の方向性を判断するものです。

これと対照的なのが、ファンダメンタル分析です。ミクロでは個別企業の利益成長見通し等をもとに、株価が割高か割安かを判断する手法です。また、マクロでは「経済の基礎的諸条件」、つまり経済成長率、インフレ率、貿易収支などを分析するものです。

どちらが役に立つのかという議論はさて置き、最近の日本株市場では、テクニカル面で底打ちを示すシグナルが現れてきたことには要注目です。

具体的には、この記事にあるように「日経平均の13週移動平均線と26週移動平均線がゴールデンクロス」を示しています。ゴールデンクロスとは、短い移動平均線(ここでは13週移動平均)が長い移動平均線(同26週平均)を下から上へ抜けるポイントのことで、相場が上昇局面に入る時に出ることが多いとされています。

ゴールデンクロスと反対に、相場が下落局面に入ったことを示すデットクロスは約1年前の2015年9月でしたが、実際、その頃を境に下落トレンドが続いたことを踏まえると、今回のゴールデンクロスの出現も無視することができない動きと見るべきでしょう。

加えて、日経平均先物の「裁定買い残高」が2009年以来の歴史的な低水準にあることにも注目したいと思います。裁定買い残高が多い時は、突発的な悪材料に反応し、日経平均先物に大量の売りが出て日経平均の現物も大きく下落することがありますが、現状ではそのようなリスクが極めて限定的なものになっているからです。

もちろん、相場の安定は日銀のETF買いという官製相場によってもたらされたものであること、米国の大統領選挙という結果次第で市場の攪乱要因となる可能性がある大きなイベントが控えていることなどには、引き続き留意が必要です。そのうえで、テクニカル的には底打ち感が見えてきたことは頭の片隅に入れておきましょう。

出所:日経平均の13・26週移動平均線がゴールデンクロス(楽天証券)

それほど悪くなっていない世界経済見通し

第2の理由は、日本の経済見通しが国際通貨基金(IMF)により上方修正されたことです。IMFが2016年10月4日に発表した2016年と2017年の世界経済見通しでは、世界全体の成長率は前回(7月)時点に対して据え置かれていましたが、日本については欧州や新興国市場とともに上方修正されています。

一方で、米国市場が下方修正されたことは少し気がかかりです。しかし、消費については堅調と見ていることや、設備投資が軟調な背景は年前半の原油価格の低下、大統領選挙による不確実性などで、いずれ払拭される可能性が高い要因であるため、過度な懸念は不要であると考えられます。

出所:IMF世界経済見通し、据え置きの中にあるメッセージ(ピクテ投信投資顧問)

大きな金融政策の発表がない10月は個別株投資を始めるには良いタイミング

第3の理由は、世界の金融政策の方向性がようやく明確なものとなり、また、10月には大きな市場攪乱要因となる金融政策の発表も予定されていないため、決算や新製品の動向などに集中して銘柄選別を行える環境が整ってきためです。

前述の通り、テクニカル面では日経平均に底打ち感が見られることも踏まえ、じっくりと腰を据えて、コツコツと個別銘柄の「買い場探し」をされることをお勧めしたいと思います。

出所:10月相場戦略:企業決算での注目ポイントと気になるイベント(投信1)

 

LIMO編集部