人口減や高齢化社会の進展が予想される日本とは異なり、若い世代の人口が多いなど成長余地が大きく魅力的な投資対象である新興国。皆さんは、途上国や新興国の会社への投資、融資を考えたことがありますか?
多くの読者の皆さんは、途上国や新興国市場への投資は「リスクが高い」「不安」と考えていらっしゃるかもしれません。その気持ちはとてもよく分かります。しかし、途上国や新興国への投資を「不安だ」という直感的な「思い込み」から敬遠してしまっていることで、もしかしたら損をしているかもしれないのです。
新興国への投資をためらう「思い込み」①:Loss Aversion – 損失回避
次の問題を考えてみてください。
今、あなたは次のような「チャレンジ」をすることができます。
- コインを投げて表が出たら15万円もらえます。裏が出たら10万円失います。
さて、あなたはこの「チャレンジ」をやりますか?
多くの方は「やらない」という選択をすると思います。それは、おそらく15万円もらえた時のうれしさより、10万円失った時の悲しさの方が大きいからではないでしょうか。これは「Loss Aversion」(損失回避)と呼ばれる一種の心理的バイアスで、期待値がプラスであってもまずは損失を回避する、という人の心理的傾向のためと考えられています。
途上国や新興国市場への投資をためらいがちなのはこの心理的バイアスの影響が強いのではないでしょうか。
*このチャレンジの「期待値」は15万円×1/2(コインの表が出る確率)+(-10万円)×1/2=2.5万円 つまり、数学的に言うと必ず2.5万円もらえるのと同じ価値をもったチャレンジです。
しかし、この賭けを10回やれるとしたらどうでしょう? もしくは100回やれるとしたらどうでしょう? 「やる」と答える人もでてくるのではないでしょうか。100回中41回以上表を出せれば儲かるからです。コインをたくさん投げれば投げるほど、表と裏の数が近づいていくことは感覚的にお分かりいただけると思います。
*100回中40回表、60回裏でちょうど損得無しになります(15万円×40回+(-10万円)×60回=0円)。よって、41回以上表が出れば得となります。
途上国や新興国市場には、経済成長の真っただ中で、資金需要が豊富にある市場がたくさんあります。少額を多数の新興国市場に分けて投資することで、上のチャレンジを何回も行うのと同じように、リスクを分散し、高いリターンを得られる確率を上げることができるのです。
新興国市場への投資をためらう「思い込み」②:現状維持
それでもなんとなく乗り気がしない、というのも分からないではありません。しかし、新興国市場に投資する機会があるのに、それを無視して国内の低い利回りの運用先に甘んじているのは、相対的に言うと「損をしている」ということになるのです。
次の問題を考えてみてください。
- あなたは今Aという銘柄の株を持っています。さて、次の2つのシナリオを考えてみてください。どちらが嫌でしょうか?
- このままA株を持ち続けて、それが1,000円値下がりした。
- B株が有望だと思ったのでA株を売ってB株を買ったが、そのB株が1,000円値下がりした。A株を持ち続けていれば損はしなかった。
損失の額は双方1,000円で同じですが、多くの人は2の方が嫌なのではないでしょうか? なぜでしょう。それは、人は一般に、現状を維持することによって被る損失に関しては無頓着であるが、何か行動を起こして被る損失に関しては非常に敏感である、という傾向があるからです。
したがって、何か新しいアクションを起こして損をするよりは、現状を維持していよう、という気持ちになってしまいます。現状を維持することによって被る損失が何かアクションを起こして被る損失と同じであったとしても、です。
こうして、今まで国内市場に留まっていた投資家は、新興国市場への投資をためらってしまうものです。しかし、高いリターンを得る機会が新興国市場にあるのに、それに目を向けずに国内の低いリターンの投資先に甘んじていることは、相対的に見て損をしていることに他ならないのです。
先進諸国において成長が鈍化し、途上国や新興国において成長が加速しているのは現状のデータを見ても明らかですし、当然の流れでもあります。これを機に新興国市場への投資を考えてみるのも面白いかもしれません。
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参考文献:Kahneman, D. (2011). Thinking, fast and slow. New York: Farrar, Straus and Giroux.
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