当期純利益予想を▲54%引き下げ
セブン&アイ・ホールディングス(3382)が2017年2月期の親会社に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)の予想を大幅に引き下げました。
2016年9月30日の会社発表によれば、これまで1,720億円と予想していた当期純利益が800億円になるとのことです。予想の修正率は▲54%の減少で、大変大きな見直しです。
前期実績1,609億円と比較しても半減になるという予想の背景を整理してみましょう。
スーパーストア事業と百貨店事業の不振が続く
当社のもうけの屋台骨はコンビニエンスストア事業と金融関連事業(セブン銀行等)です。しかし、グループには創業事業であるスーパーストア事業、買収によって手に入れた百貨店事業などもうけは連結で見て小さいにもかかわらず、ぶれの大きい事業を抱えています。
特にイトーヨーカ堂とそごう・西武は長年低採算に甘んじており、今回も業績予想の下方修正の主な原因になっています。とりわけ、これらの店舗の減損損失や百貨店事業の「のれん」の減損損失が合計606億円にのぼるとされ、業績には痛手になりました。
衣料品に逆風
もう少し踏み込んで考えてみましょう。スーパーストア事業や百貨店事業が近年低採算に陥っている背景には、衣料品の不振が大きいことが挙げられます。言い方をかえると、もうけの出やすい衣料品がしっかり稼ぐことがこの2事業の前提になっていたのですが、その前提が崩れてしまっています。そもそも消費者のたんすにはすでに服が詰まっていて、そうした飽和状態のなかで積極的に選ばれる商品を当社が提供できていなかったのです。
特にイトーヨーカ堂では衣料品の在庫が嵩みがちで推移してきました。おりからの消費の厳しさに加えて、8月から9月にかけて天候が不順で気温も高めに推移し、懸案の事業に強い逆風が吹いたのです。
災い転じて福となすことができるか?
そもそもコンビニエンスストア事業と金融関連事業以外の事業の採算改善は、米ファンドのサード・ポイント社の指摘を待つまでもなく、長年投資家から要求されてきました。今春から当社の指揮をとることになった井阪新社長にとって、一番最初に克服すべき課題だったともいえます。
晩夏・初秋におきた衣料品不振で、「膿だし待ったなし」となったわけですが、見方をかえればこれは逆風ではなく、井阪新社長がコンビニエンス事業を内外でさらに強化していくための追い風になるのかもしれません。
かつての日産ゴーン流V字回復のように、井阪流V字回復を実現できるのでしょうか。強みのコンビニエンス事業でも国内で業界再編が進み競争が激化していきそうですので、低採算事業にこれ以上経営資源を割くことは好ましくないと思います。また今回当期純利益を中心にお話をしましたが、一時的な損益を除いた経常利益の新しい会社予想は前年度比微増益となっていますので、会社全体の基礎体力が著しく悪化しているわけではありません。
強い事業にしっかり集中できる体制に移行できるのか、今週発表の決算発表とそのプレゼンテーションが注目されます。
LIMO編集部