9月に入り売り姿勢を強める海外投資家
日本の株式市場で、海外投資家の売り姿勢が鮮明になってきました。
日本取引所グループが9月26日に発表した2016年9月第2週(9月12日-16日)の投資主体別売買動向によると、現物株式では海外投資家は差引▲4,806億円の売り越しでした。8月第5週の▲642億円の売り越し、9月第1週の▲3,338億円の売り越しに続き、3週連続の現物株売り越しになりました。その金額も週を重ねるごとに大きくなっています。
先物の売買動向を見ると、海外投資家は9月第1週に+2,708億円の買い越しだったものが、9月第2週には▲1,251億円の売り越しに転じました。現物先物を合わせれば9月第2週は海外投資家の売りが一気に嵩んだと言えるでしょう。
信託銀行の買いが沈静化
現物株に話を戻しましょう。9月第2週の主な買い主体は証券会社自己部門(+2,676億円買い越し)、個人(+1,764億円買い越し)、事業法人(+500億円買い越し)などです。
証券会社自己部門は最終投資家ではなく、個人は短期の逆張り投資がメインです。事業法人は自社株買いが多いと見られますが、金額的にはそれほど大きくありません。海外投資家の売りに対して、腰の入った買いが入ったとは言い切れないと筆者は見ています。
8月までは主要な買い主体として存在感を示していた信託銀行の投資スタンスも、9月に変化が出ているようです。9月第2週は▲170億円の売り越しとなりました。2週連続の売り越しです。海外投資家の売りが増え、株価が下げると必ず買い主体として登場してきた信託銀行のスタンスの変化には今後注意が必要です。
実は日銀が海外投資家の売りに買い向かった
一方、気になる日銀の動向ですが、9月9日(金)から15日(木)の5営業日連続で1日当たり+745億円、累計+3,745億円のETFを買い付けています。週次では9月第1週が+1,526億円、第2週が+2,992億円の買い越しです。9月第2週の真の買い主体は日銀だった模様です。
注:日銀のETF買い付けが投資主体別売買動向にどう反映されるのか正確なデータはないのですが、自己部門に反映されていると見るのが自然と思われます。
さわかみ投信が海外株投資を拡大せざるを得ない一因?
話は変わりますが、2016年9月26日の日本経済新聞には、さわかみ投信が「年内にも欧米株へ投資を始める」、「国内で割安株を発掘することが難しくなったため」と報じています。
ここで見たように日銀のETF買いが断続的に続いたり、GPIFがバイ&ホールド型の株式投資を増やしていくと、同投信が標榜する株価急落時のバーゲンハントのチャンスが減っていくのかもしれません。公的資金の買入が増えて投資家の多様性が失われ、市場の価格機能が働かなくなるようなことがないことを筆者は願っています。
LIMO編集部