半導体テスター大手のアドバンテストは、2020年度(21年3月期)通期業績見通しを上方修正した。米中対立でSoCテスターの需要減退を予想していたが、スマートフォン分野を中心にシェア獲得に向けた積極的な事業計画が牽引役となり、事業環境が大きく改善する見通し。

顧客側は追加投資も検討

 20年度通期業績を売上高2750億円(従来予想2600億円)、受注高2600億円(同2400億円)、営業利益525億円(同450億円)に見直した。主力のテスター部門ではメモリー向けの売上高予想は変更ないものの、SoCテスターの予想を従来の1040億円から1170億円に引き上げた。

 第1四半期決算時点で、米中対立の影響からOSATをはじめとする顧客企業のテストキャパシティーが余剰化すると予想。他分野への転用など、余剰キャパの解消には半年~1年程度かかると見込んでいた。しかし、9月半ば以降、スマホの同業他社が21年以降に向けた積極的な事業計画を打ち出したことから、状況が好転。「余剰テストキャパの解消は年内に峠を越える」(吉田芳明社長)見通しで、足元では追加のテスター投資が検討され始めるなど、顧客の動きが一気に活発化しているという。

 足元の受注も好調だ。第2四半期(7~9月)受注高は当初、555億円を見込んでいたが、結果は641億円となり80億円強上ぶれた。上ぶれ分は車載・産機・民生向けで半分程度を占めたほか、ディスプレードライバーIC向けの受注も旺盛だった。

SoCテスター市場の予想引き上げ

 事業環境の改善を受け、20年(暦年)の半導体テスター市場に対する見方も変更。メモリーテスター市場は従来予想(10億ドル)を据え置いたものの、SoCテスター市場は24億ドルから27億ドルに予想を引き上げた。

 ただ、市場シェアについては競合企業との顧客ミックスの関係もあり、20年は減少すると予想。ただ、21年に向けてはシェア上昇に向けた手応えを掴んでいるという。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳